上 下
2 / 18

〈二節〉犬とは

しおりを挟む



そこにいた生き物は見慣れないモノだった。


黒く…おぞましい何か……。

見た目は犬に見えなくもないが、
皮膚ひふただれ…

片目が飛び出し、ぶら下がっている状態


顔がゆがみ、頭の中身が見えている…。








僕「ひッ…!?」




その姿に思わず後ずさる。

さっきは暗くて見えなかったが、まさかこんなのが一緒に歩いていたなんて…

これにリード付けて散歩してたら、それはそれで恐怖だ…。














老人「ずっと着いてくるのです。」








僕「は、はいッ!?  何がデスカ…?」



突然の老人に焦りを隠せず、あたかも見えていないかのように返す。







老人「去年から一緒にいる。ずっと着いてくるのだ。おぞましくて堪らんよ。」



僕「………」








僕は再度、その生き物に目をやる。

そして確信する。



これは犬で間違いない…




獣医師の僕からみて、かなり重症。

今すぐ治療が必要…



でもこの状態で自立している事に違和感しかない。


ぐったりしていても可笑しくないし、なんなら生きている事の方が不思議だ。



僕は息を飲んで見つめる事しか出来ないでいた。







老人「さて、帰るかの」



老人が歩き出すと、その犬が後を追う。

犬は何歩か歩くと「キャンッ」と泣き、それを繰り返す。

あの状態だ。

さぞかし痛むだろう…





見ていられなかった…__

















僕「…あの!  待って下さい!」











ここから僕の人生が良からぬ方向にまわりだす。





_________________
しおりを挟む

処理中です...