5 / 12
お金持ちになりましたがあなたに援助なんてしませんから! ~婚約パーティー中の失敗で婚約破棄された私は商人として大成功する~
第五話 泣いてください
しおりを挟む
二人は貴族の屋敷を渡り歩いた。評判は上々で、すぐに別の工房にも作成を依頼することになった。
「カミラさん、私の考えが甘かったです。まさかここまで売れるなんて。貴族の令嬢だけではなく、ほとんどの令嬢が侍女の分までまとめて購入するなんて」
「みんな働きたくても働けなかったんですね。わたくしも想像していなかったです」
「大量生産でもっとコストを下げれそうですし、今後は平民や周辺国にも売り出しましょう。試作したと言っていた綿を使った高級版も作りましょう」
「そうですね。本来の目的である失禁用には使ってもらえなさそうですけど」
そういってカミラは笑った。
「カミラさんは前からそこにこだわってらっしゃいましたね」
「そうなんです。今ではもう笑い話なんですけど以前失敗してしまいまして。聞いてくださいますか?」
(やっとこの話が出来る! 絶対誰かにわたしの失禁の話を聞いてるはずなのよね。ザックさん職業柄かなりの情報通だし。行ったお屋敷のいくつかでそこの令嬢がわたしの顔を見て驚いた顔してたし。ザックさん全然触れてこないから逆に気まずかったのよ)
「失敗ですか? もし話すのが嫌でなければお聞かせください」
「では打ち明けますね。実はわたくし以前婚約をしておりました。その婚約を破棄されてしまいまして……」
「婚約破棄ですか? それはおつらかったでしょう」
「ええ、まぁ。その破棄された理由なのですが……わたくし婚約パーティーの場で失禁をしてしまいましたの。色々な不幸が重なった結果です」
「失禁……ですか。それでこの商品を開発されたんですね」
(全然驚いてないし動揺もしていない。やっぱりそうだよね、知ってたよね。恥ずかしい……)
「そうなんです。本当にお恥ずかしい。どうか笑ってください」
カミラは精一杯笑ってみせた。
「カミラさん、もう過去の話でカミラさんにとってただの笑い話というのなら良いのですが、つらかったのなら無理に笑う必要はないと思いますよ。なんだか無理をされているように見えます」
「え……。無理しているように見えますか?」
「すみません! 失礼な言い方でしたね。少しそう感じてしまいました」
(初めて言われた……。でもきっとそうなんだろうな。わたし全然乗り越えていないんだ)
「そう……なのかもしれません。ごめんなさい、この話をする時はいつも笑うようにしていたので、おっしゃる通りわたくし無理をしていたのかもしれません」
カミラは急に湧いて出てきた涙を抑えることができなかった。
ザックは泣きじゃくるカミラの隣に座り、カミラを抱きしめた。
「失礼しますね。これで私には泣き顔は見えません。思う存分泣いてください」
カミラは大人になってから初めて人前で大泣きした。涙が止まるころには空が暗くなっていた。
「カミラさん、私の考えが甘かったです。まさかここまで売れるなんて。貴族の令嬢だけではなく、ほとんどの令嬢が侍女の分までまとめて購入するなんて」
「みんな働きたくても働けなかったんですね。わたくしも想像していなかったです」
「大量生産でもっとコストを下げれそうですし、今後は平民や周辺国にも売り出しましょう。試作したと言っていた綿を使った高級版も作りましょう」
「そうですね。本来の目的である失禁用には使ってもらえなさそうですけど」
そういってカミラは笑った。
「カミラさんは前からそこにこだわってらっしゃいましたね」
「そうなんです。今ではもう笑い話なんですけど以前失敗してしまいまして。聞いてくださいますか?」
(やっとこの話が出来る! 絶対誰かにわたしの失禁の話を聞いてるはずなのよね。ザックさん職業柄かなりの情報通だし。行ったお屋敷のいくつかでそこの令嬢がわたしの顔を見て驚いた顔してたし。ザックさん全然触れてこないから逆に気まずかったのよ)
「失敗ですか? もし話すのが嫌でなければお聞かせください」
「では打ち明けますね。実はわたくし以前婚約をしておりました。その婚約を破棄されてしまいまして……」
「婚約破棄ですか? それはおつらかったでしょう」
「ええ、まぁ。その破棄された理由なのですが……わたくし婚約パーティーの場で失禁をしてしまいましたの。色々な不幸が重なった結果です」
「失禁……ですか。それでこの商品を開発されたんですね」
(全然驚いてないし動揺もしていない。やっぱりそうだよね、知ってたよね。恥ずかしい……)
「そうなんです。本当にお恥ずかしい。どうか笑ってください」
カミラは精一杯笑ってみせた。
「カミラさん、もう過去の話でカミラさんにとってただの笑い話というのなら良いのですが、つらかったのなら無理に笑う必要はないと思いますよ。なんだか無理をされているように見えます」
「え……。無理しているように見えますか?」
「すみません! 失礼な言い方でしたね。少しそう感じてしまいました」
(初めて言われた……。でもきっとそうなんだろうな。わたし全然乗り越えていないんだ)
「そう……なのかもしれません。ごめんなさい、この話をする時はいつも笑うようにしていたので、おっしゃる通りわたくし無理をしていたのかもしれません」
カミラは急に湧いて出てきた涙を抑えることができなかった。
ザックは泣きじゃくるカミラの隣に座り、カミラを抱きしめた。
「失礼しますね。これで私には泣き顔は見えません。思う存分泣いてください」
カミラは大人になってから初めて人前で大泣きした。涙が止まるころには空が暗くなっていた。
6
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
こちらからお断りです
仏白目
恋愛
我が家は借金だらけの子爵家
ある日侯爵家から秘密裏に契約結婚が持ちかけられた、嫡男との結婚 受けて貰えるなら子爵家を支援するが?という話
子爵家には年頃の娘が3人いる 貧乏子爵家に縁を求めてくる者はなく、まだ誰も婚約者はいない、侯爵家はその中の一番若い末娘を求めていた、
両親はその話に飛びついた,これで自分たちの暮らしも楽になる、何も無い子爵家だったが娘がこんな時に役に立ってくれるなんて,と大喜び
送り出され娘はドナドナな気分である
「一体何をされるんだろう・・・」
*作者ご都合主義の世界観でのフィクションです。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。


【完結】このまま婚約破棄してもいいのですよ?
横居花琉
恋愛
有力者の勧めもあり、ウォードと婚約することになったコンスタンス。
しかし婚約しても彼の態度は冷たく、まるで婚約を望んでいなかったかのようだった。
関係改善のために努力しても無駄に終わり、困ったコンスタンスは有力者に相談を持ち掛ける。
その結果、婚約破棄しても構わないと言われた。
どうにもならない関係で未来への希望を失っていたコンスタンスは、再び希望を抱いた。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる