【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ

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貴族男性と平民の町娘の恋の結末

第四話 貴族の既婚男性と不倫関係にある馬鹿な女の結末

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 あのディナーから半年、私は実家から出ることになり、馬車に揺られていた。

 奥様にバレて断罪されて島流しにあったからではない。

 なんと、彼と一緒に彼の領地に行くための旅の途中なのだ。

 自分でも信じられない!!

 あの時、レストランで「妻と別れることが決まった。待たせてごめん」と言われたあの瞬間を何度も思い出す。彼はそれから奥様とのことを色々と話してくれた。

 奥様がずっとお抱えの商人と不倫していたこと、奥様の不倫を理由に別れ話を切り出しても逆ギレされて進展しなかったこと、それでも奥様を家族として大切に思う気持ちも僅かにあり、放り出せなかったこと。別れ話は根気よく続けていたこと。

 そして、奥様と不倫相手の商人との間に子供が出来てあっさりと離婚することになったこと……。

 すべてを聞いて妙に納得してしまった。

 誘った私が言うのもおかしいが、彼ほど真面目な人間が奥様がいながら長い間不倫をしていることが不思議でしかたがなかった。彼は私に何も話さないことで、変な期待を持たせないようにして私の逃げ道を作っていたのだ。「もう少し待って欲しい」と言った時はお酒が入ってつい本音が出てしまったようだ。

 彼と結婚することが決まり、今までの私たちのことを初めて姉や親友に話した。

 なんでもっと早く話さないんだと叱られてしまった。
 私が断罪されたらと思うと怖くて仕方がないと泣いてくれた。

 何より驚いたことが、みんな口を揃えて彼をクズだと言ったことだった。『結婚生活が破綻しているなら早く言えよ』とか『指輪なんて会う時くらい外せよ』とか『子供が出来なかったら別れなかったのかよ』とか、とにかく言いたい放題だった。

 それなのに彼を姉と親友に紹介したら、たった一日ですっかり彼のことを気に入ってしまった。私は笑うしかなかった。
 何度も羨ましいと言われてなんだかくすぐったい気持ちになった。

 貴族の既婚男性と不倫関係にある馬鹿な女の結末なんて、正直とてもつまらないものだと思う。

 その考えは今でも変わらない。

 それでも私は私の人生を幸せな結末にしてみせる。彼とならそれが出来ると信じている。

 === 完 ===
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