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当然あなたが幼馴染の令嬢と不倫していることは知っています。ですが責めません。わたくしには責める資格がありませんから

第二話 責めない理由

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 カトリーヌはアントーニオのことを愛していなかった。興味さえなかった。

 カトリーヌはアントーニオのもとへ向かうマリアの後ろ姿を見ながら昔のことを思い出していた。

(婚約した当初はドキドキしていたのよね。パーティーで初めて見かけた時にこんな素敵な人がいるのかと驚いたんでしたっけ。十二歳のわたしは若すぎたのね、婚約者というだけで素敵に見えるだなんて)

 カトリーヌはしばらくしてから魔法訓練中の塔へ向かった。
 それは不倫を問い詰めるためではない。

(なぜだか漏れてくる音や声を聞きたくなってしまうのよね。自分でも不思議。別にそれを聞いて興奮するわけでも、嬉しいわけでも、ましてや怒りが湧いてくるわけでもないのに。本当に不思議だけれど、感情の変化がないのに盗み聞きがやめられないのよね……)

 カトリーヌは結婚当初からこの習慣を続けている。


*****


 マリアが塔から帰ってきた。
 空の色の綺麗なドレスに乱れは一切なく、相変わらずその綺麗な令嬢を引き立てていた。

「お疲れ様、マリアさん。とてもスッキリとした顔をしていますわ」

 カトリーヌは笑顔でマリアに話しかけた。

「やはり魔力は定期的に放出しないといけませんからね」

 マリアは来た時にも言っていた言い訳を繰り返していた。
 その顔はとてもスッキリとした、爽やかな表情だった。カトリーヌにはそう見えていた。

 アントーニオは無意識にしていることがある。
 マリアとの行為が行われた日は命より大切な我が子を抱きしめることがないのだ。
 カトリーヌはそのことにかなり前から気付いていた。

(あの人は、子供たちが自分の父親が母親以外の女性を抱いたことを嫌がるとでも思っているのかしら。別に気にしなくてもいいのに)

 カトリーヌはアントーニオのその習慣を無意味なものだと感じていた。

(子供たちに罪悪感を感じたところで、別にあなたの本当の子ではないのに)

 アントーニオはその事実を知らない。

 カトリーヌはその後もアントーニオの不倫を問い詰めることをしなかった。
 なぜならば、自分に不倫している事実を責める資格がないことを誰よりも知っているからである。

 アントーニオはその命が尽きるまで子供たちを自分の命より大切にしていた。

 === 完 ===
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