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その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。
第二話 兄と弟
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レイモンドは弟であるリックを呼び出した。
「リック、僕はキャメロンとの婚約を破棄したから。代わりにお前がキャメロンと婚約することになるだろう」
「え、兄上なぜですか?」
「最高の女性と出会ってしまったからだ。お前にはお似合いかもしれないが、キャメロンのように地味で面白みのない令嬢では僕は駄目なんだ」
「そうですか。兄上は本当に見る目がない……」
リックは小さい声でそうつぶやいた。
「なんだ? すまんが聞こえなかった」
「いいえ、独り言です。あまりにも衝撃だったもので。それで兄上のハートを射止めたのはどなたなのですか?」
「中央広場にある劇場で主演を務めている女性だ。美人で歌も演技も上手く魔法も使える。本当に特別な女性だ」
「その方を存じ上げておりませんでした。今度私も見に行ってまいります」
「あれは僕の女だからお前は変な気をおこすなよ」
「承知しております。私が婚約するのは『地味で面白みのない』キャメロンさんですよ」
「わかっているならそれでいい。ははっ、彼女を見たら驚くぞ」
*****
「兄上、劇を見てまいりました。色々なことに私は本当に驚かされましたよ」
(何より兄上の見る目のなさに驚いたんですけどね)
「そうだろう! 彼女は話してみるともっと素敵なのだ。いつか屋敷に招待するから楽しみにしていろ」
しかし、その日が来ることは永遠になかった。
女優のベラは劇場からもレイモンドの前からも姿を消したのである。
「リック、僕はキャメロンとの婚約を破棄したから。代わりにお前がキャメロンと婚約することになるだろう」
「え、兄上なぜですか?」
「最高の女性と出会ってしまったからだ。お前にはお似合いかもしれないが、キャメロンのように地味で面白みのない令嬢では僕は駄目なんだ」
「そうですか。兄上は本当に見る目がない……」
リックは小さい声でそうつぶやいた。
「なんだ? すまんが聞こえなかった」
「いいえ、独り言です。あまりにも衝撃だったもので。それで兄上のハートを射止めたのはどなたなのですか?」
「中央広場にある劇場で主演を務めている女性だ。美人で歌も演技も上手く魔法も使える。本当に特別な女性だ」
「その方を存じ上げておりませんでした。今度私も見に行ってまいります」
「あれは僕の女だからお前は変な気をおこすなよ」
「承知しております。私が婚約するのは『地味で面白みのない』キャメロンさんですよ」
「わかっているならそれでいい。ははっ、彼女を見たら驚くぞ」
*****
「兄上、劇を見てまいりました。色々なことに私は本当に驚かされましたよ」
(何より兄上の見る目のなさに驚いたんですけどね)
「そうだろう! 彼女は話してみるともっと素敵なのだ。いつか屋敷に招待するから楽しみにしていろ」
しかし、その日が来ることは永遠になかった。
女優のベラは劇場からもレイモンドの前からも姿を消したのである。
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