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汚い顔だから婚約破棄したいと言われた令嬢が幸せを掴むまで
第二話 別の女
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婚約者が他の女性と密会している現場を目撃してしまったオーロラは何もできずにただ悶々とする日々を過ごしていた。あれからジェイコブと何度か話す機会はあったのだが密会相手の女性の話をされることはなかった。オーロラからもその話をしなかった。
数日が経ってもオーロラはどこかうわの空な日々を過ごしていた。ある日の魔法実地訓練にて、一人ずつ魔法の披露をすることになった。オーロラはクラスメイトが魔法を披露する姿をぼーっと眺めていた。
「……おい……」
「……聞いているのか……」
「……先生が何度もきみの名前を呼んでいるだろう」
クラスの委員長アレクサンダーがオーロラの肩を掴んだ。オーロラはハッとした。どうやら魔法披露のオーロラの番が来ていたようだ。
「ご、ごめんなさい。考え事をしていて……」
「今は魔法の実地訓練中だ。そんないい加減な態度で怪我でもしたらどうするんだ? 集中出来ないのなら先生に言って見学するべきだ」
アレクサンダーから注意され、オーロラは恥ずかしさと情けなさを感じ泣きたい気持ちになった。なんとか涙を堪え、オーロラは教師と生徒たちに謝った。
魔法実地訓練が終わり、オーロラは風に当たって頭を冷やそうと中庭の方に歩いた。すると、オーロラはまたジェイコブが一人で中庭にいるのを見つけてしまった。
(きっとまたあの女と会うんだ……)
オーロラは茂みに隠れてジェイコブの密会相手を待った。
(あの女がまた来て、密会したとしてもきっと私は何も出来ないよね……。でも確かめなきゃ)
しばらくするとジェイコブに近付く人影が見えた。
(やっぱり!! また密会だったんだ! ……あれ? でもあの女……)
髪の短い小柄な可愛らしい顔をした女性がジェイコブの隣に座った。以前見た女とは明らかに別の女だった。
(別の人……よね? クラスメイトかしら。良かった。またあの女だったら……)
オーロラは安心して身体から力が抜けたのを感じた。
しかし、次の瞬間――
「……えっ!?」
思わず声が出てしまった。
なんとジェイコブはその小柄な女性を抱きしめたのだ。
(どういうこと? 前と同じ場所で別の女と密会してるなんて……。 え、どういうこと? え……)
オーロラは悲しむことも忘れ、ただただ混乱した。婚約者が二股どころか三股をしているなんて……。
ショックのあまり呆然として無表情になっているオーロラに近付いてくる男性がいた。クラス委員のアレクサンダーだ。
「あーよかった、やっと見つけた。さっきはきつく言ってごめん。でも魔法は本当に危険だからきみのためにもと思ったんだ……」
オーロラからの返事はない。彼女はただ一点を見つめている。
「おい、聞いてるのか? 何を見てる?」
アレクサンダーがオーロラの視線の先に抱き合っているカップルを見つけた。
「あーあいつか、片手では済まないほど何人もの女に手を出しているらしい有名人だよ。しかも婚約者がいるらしいんだ。少し顔がいいからって人としてどうかと思うね」
「片手では済まないほど……? 何人も?」
オーロラは呟くように聞き返した。
「あくまでも噂だけどね。綺麗な女性にはすぐ手を出すやつみたいだ。きみも気を付けた方がいい」
固まったかのように無表情のまま呆然とするオーロラの頬を一粒の涙が零れた。すると、そこからは防波堤が決壊したかのように涙が止まらなくなった。
数日が経ってもオーロラはどこかうわの空な日々を過ごしていた。ある日の魔法実地訓練にて、一人ずつ魔法の披露をすることになった。オーロラはクラスメイトが魔法を披露する姿をぼーっと眺めていた。
「……おい……」
「……聞いているのか……」
「……先生が何度もきみの名前を呼んでいるだろう」
クラスの委員長アレクサンダーがオーロラの肩を掴んだ。オーロラはハッとした。どうやら魔法披露のオーロラの番が来ていたようだ。
「ご、ごめんなさい。考え事をしていて……」
「今は魔法の実地訓練中だ。そんないい加減な態度で怪我でもしたらどうするんだ? 集中出来ないのなら先生に言って見学するべきだ」
アレクサンダーから注意され、オーロラは恥ずかしさと情けなさを感じ泣きたい気持ちになった。なんとか涙を堪え、オーロラは教師と生徒たちに謝った。
魔法実地訓練が終わり、オーロラは風に当たって頭を冷やそうと中庭の方に歩いた。すると、オーロラはまたジェイコブが一人で中庭にいるのを見つけてしまった。
(きっとまたあの女と会うんだ……)
オーロラは茂みに隠れてジェイコブの密会相手を待った。
(あの女がまた来て、密会したとしてもきっと私は何も出来ないよね……。でも確かめなきゃ)
しばらくするとジェイコブに近付く人影が見えた。
(やっぱり!! また密会だったんだ! ……あれ? でもあの女……)
髪の短い小柄な可愛らしい顔をした女性がジェイコブの隣に座った。以前見た女とは明らかに別の女だった。
(別の人……よね? クラスメイトかしら。良かった。またあの女だったら……)
オーロラは安心して身体から力が抜けたのを感じた。
しかし、次の瞬間――
「……えっ!?」
思わず声が出てしまった。
なんとジェイコブはその小柄な女性を抱きしめたのだ。
(どういうこと? 前と同じ場所で別の女と密会してるなんて……。 え、どういうこと? え……)
オーロラは悲しむことも忘れ、ただただ混乱した。婚約者が二股どころか三股をしているなんて……。
ショックのあまり呆然として無表情になっているオーロラに近付いてくる男性がいた。クラス委員のアレクサンダーだ。
「あーよかった、やっと見つけた。さっきはきつく言ってごめん。でも魔法は本当に危険だからきみのためにもと思ったんだ……」
オーロラからの返事はない。彼女はただ一点を見つめている。
「おい、聞いてるのか? 何を見てる?」
アレクサンダーがオーロラの視線の先に抱き合っているカップルを見つけた。
「あーあいつか、片手では済まないほど何人もの女に手を出しているらしい有名人だよ。しかも婚約者がいるらしいんだ。少し顔がいいからって人としてどうかと思うね」
「片手では済まないほど……? 何人も?」
オーロラは呟くように聞き返した。
「あくまでも噂だけどね。綺麗な女性にはすぐ手を出すやつみたいだ。きみも気を付けた方がいい」
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