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【2020/05 凱旋】
《第5週 月曜日 朝》④
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長谷はいったい、どんな気持ちでこの写真を選んだんだろう。どうして飾ろうと思ったんだろう。
おれは機内モードにしたままだった電子機器と充電ケーブルを鞄から出して、机上のマルチタップに繋いだ。機内モードを解除して、搭乗時に見た長谷のメッセージに返信する。
「今帰ってきた。返事しなくてごめん、移動中ずっと寝てたよ」
当然返事は来ない。とりあえず、鞄の中にあった他の機器もすべてマルチタップに繋いで書斎を出る。またリビングに戻り、そのまま通過して寝室に入る。
おれは普段使っていないリビングと寝室の間の5枚ある仕切りを全部引き出して、それに重ねて普段この仕切りの代わりにリビングと寝室の間を仕切っている遮音カーテンを引いた。
着ていた服は全部クリーニングに出すのでそれ用の不織布の大きなバッグにつっこんで、クローゼットから薄手のTシャツと同じ様な生地の踝が出るボトムを出して着て、窓のカーテンも閉めて、ベッドにダイブした。
殆ど日差しも音も入らない部屋で、セミダブルのベッドを2つくっつけたやたら広いベッドで、それぞれのベッドの上にかけられた更に1サイズ大きな掛け物の中を泳ぐように移動する。
おれの居ない間に寝具のカバーなども全部長谷が取り替えてくれているのがわかる。生地にハリ感があって、洗剤のいい匂いがする。巻き込むようにして掛け物を抱きかかえて顔を埋めて深呼吸していると、意識はすぐに遠のいた。
その後一度途中に尿意で目が覚めたが、用便を足したついでにリビングから外を見るとまだ全然明るくて、時刻も15時を回ったくらいで、大して時間が経ってなかったのでまたベッドに潜った。
その次に目が覚めたときには、体の上に何かが載っている重みと暑さで魘されて起きた。
「…長谷…?」
僅かにクミンのような香りが混じったような温かみのある柔らかな香りがして、よくは見えないけどそこにいるのが長谷だと教えてくれる。
暗くて見えない中で寝返りを打って、熱源になっている身体のほうに顔を向けると太い腕が無言でおれを抱き寄せた。その先にある大きな手がおれの後頭部を撫で、柔らかな感触が、熱を帯びた呼気が額や瞼に当たる。
「長谷、起きてる?」
やや間をあけて、囁くように答える声がする。
「起きてますよ」
おれは手を伸ばし、長谷の肩越しに腕を回して抱きついた。暑くて重くて目が覚めたのに、その高い体温と重みが再び眠りを誘ってくる。
「もう少し寝てもいい?」
「いいですよ」
冷えているおれの脚の合間に、温かいものが割り入る。寝かせる気、全然ないじゃないか。
「早々にがっついてんなぁ」
おれが笑うと、長谷も笑った。
「そんなんじゃないんですよお…」
「そんなじゃなかったら何なんだよ、これは」
誂い半分に脚で熱帯びて硬くなっているそこを弄ぶ。
「あ、先生、やめて…だめ…負けちゃう…」
おれの肩に顔を擦り付けてイヤイヤして言ってる。そこで敢えて「負けるって、何に?」とか言ってそういう雰囲気にもっていくこともできるけど、なんか誂いたくなってしまう。
帰るなりおれが寝ているところにそろそろと入ってきて、起きたと思ったら大きな形りして思い切り抱きついて甘えてきて、きっちりおっ勃ててんのにそれを恥ずかしがって、あまりに素直すぎる。
「負けちゃえばいいのに」
「だめです、髪の毛くしゃくしゃにしてあんな無防備にスヤスヤ眠ってるの見たら、休ませてあげなきゃって思って、おれ、我慢してたんですよ…」
耳元で吐息混じりの長谷の声が響く。
上も下もわからないような暗がりの中で、互いの存在だけが身体感覚を通じて確かなものに感じられた。
おれは機内モードにしたままだった電子機器と充電ケーブルを鞄から出して、机上のマルチタップに繋いだ。機内モードを解除して、搭乗時に見た長谷のメッセージに返信する。
「今帰ってきた。返事しなくてごめん、移動中ずっと寝てたよ」
当然返事は来ない。とりあえず、鞄の中にあった他の機器もすべてマルチタップに繋いで書斎を出る。またリビングに戻り、そのまま通過して寝室に入る。
おれは普段使っていないリビングと寝室の間の5枚ある仕切りを全部引き出して、それに重ねて普段この仕切りの代わりにリビングと寝室の間を仕切っている遮音カーテンを引いた。
着ていた服は全部クリーニングに出すのでそれ用の不織布の大きなバッグにつっこんで、クローゼットから薄手のTシャツと同じ様な生地の踝が出るボトムを出して着て、窓のカーテンも閉めて、ベッドにダイブした。
殆ど日差しも音も入らない部屋で、セミダブルのベッドを2つくっつけたやたら広いベッドで、それぞれのベッドの上にかけられた更に1サイズ大きな掛け物の中を泳ぐように移動する。
おれの居ない間に寝具のカバーなども全部長谷が取り替えてくれているのがわかる。生地にハリ感があって、洗剤のいい匂いがする。巻き込むようにして掛け物を抱きかかえて顔を埋めて深呼吸していると、意識はすぐに遠のいた。
その後一度途中に尿意で目が覚めたが、用便を足したついでにリビングから外を見るとまだ全然明るくて、時刻も15時を回ったくらいで、大して時間が経ってなかったのでまたベッドに潜った。
その次に目が覚めたときには、体の上に何かが載っている重みと暑さで魘されて起きた。
「…長谷…?」
僅かにクミンのような香りが混じったような温かみのある柔らかな香りがして、よくは見えないけどそこにいるのが長谷だと教えてくれる。
暗くて見えない中で寝返りを打って、熱源になっている身体のほうに顔を向けると太い腕が無言でおれを抱き寄せた。その先にある大きな手がおれの後頭部を撫で、柔らかな感触が、熱を帯びた呼気が額や瞼に当たる。
「長谷、起きてる?」
やや間をあけて、囁くように答える声がする。
「起きてますよ」
おれは手を伸ばし、長谷の肩越しに腕を回して抱きついた。暑くて重くて目が覚めたのに、その高い体温と重みが再び眠りを誘ってくる。
「もう少し寝てもいい?」
「いいですよ」
冷えているおれの脚の合間に、温かいものが割り入る。寝かせる気、全然ないじゃないか。
「早々にがっついてんなぁ」
おれが笑うと、長谷も笑った。
「そんなんじゃないんですよお…」
「そんなじゃなかったら何なんだよ、これは」
誂い半分に脚で熱帯びて硬くなっているそこを弄ぶ。
「あ、先生、やめて…だめ…負けちゃう…」
おれの肩に顔を擦り付けてイヤイヤして言ってる。そこで敢えて「負けるって、何に?」とか言ってそういう雰囲気にもっていくこともできるけど、なんか誂いたくなってしまう。
帰るなりおれが寝ているところにそろそろと入ってきて、起きたと思ったら大きな形りして思い切り抱きついて甘えてきて、きっちりおっ勃ててんのにそれを恥ずかしがって、あまりに素直すぎる。
「負けちゃえばいいのに」
「だめです、髪の毛くしゃくしゃにしてあんな無防備にスヤスヤ眠ってるの見たら、休ませてあげなきゃって思って、おれ、我慢してたんですよ…」
耳元で吐息混じりの長谷の声が響く。
上も下もわからないような暗がりの中で、互いの存在だけが身体感覚を通じて確かなものに感じられた。
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