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【2020/05 葬列】
《第4週 金曜日 夜》⑦
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確かに、大石先生は難敵だと思う。大石先生自体は嫌な人じゃないし、嫌な気持ちはしないけれど、あんな、好きな人のためなら死ねると言い切れる人は怖い。
「多分ハルくんもまだ、アキくんに対する気持ちの落とし所見えてないと思う。アキくんのことは好きだけど一旦破綻しているし、破綻したのに肉体関係は切れないままだし。例の問題が解決しても今度はハルくんが二人の障害になっちゃうかも」
ああ、やっぱり、まだ関係はあるんだ。そりゃ、そうでもなかったらあんな事言わないか。
「…でも、だからって、大石先生が妨害をするような人には思えないんですけど…」
おれが言うと首を左右に振って、右の手も振りながら否定した。
「違うの、色々カタがついて落ち着いて、長谷くんとの関係に安心したらまたアキくんがフラフラし始める気がしてるの」
それ以前、出会ったその日からもうだいぶフラフラはしてたと思う。あの部屋で明らかになんかしてた訳だし。もしかしたらその時の相手が大石先生だったのかもしれないし。
そのことを話した上で「大石先生と関係続けるくらいだったらまだ、我慢できる気が…」と言いかけたところで「本当に、そう思う?」とそれまでと違う低い声で遮られた。
「…え?」
戸惑うおれに、真剣な顔で語りかける。
「今は漠然とした感情だからそう思えるかもしれないけど、《好き》が強固になっていったら、ハルくんと同じ状態に近づくって思うと、怖くない?」
「…!」
おれがもし先生のこと今よりもっと明確に好きになって、先生のためなら死ねると思えるほどになって、そんな状態で同じような状態の大石先生と全面対決なんてなったら…。
「それは…ちょっと回避したいですね…」
「でしょ?だからちょっとそれが心配。心配の先買いしてもしょうがないけど。あ、さっき言ってた例の、忘れないうちに」
そう言うとさっき寝室から持ってきた鞄からスマートフォンを取り出した。
「モノで持ち出すと紛失が怖いから、うちの法人で契約してるオンラインストレージに置いてあるの」
しばらくすると、おれのスマートフォンにURLが記載されたショートメールが届いた。リンクをタップするとパスワード入力画面が表示される。
「あ、これ、パスワード…」
「よっくもっくあっといいふろ」
「…よっくもっく?いいふろ?」
いいふろは先生の誕生日だ、でも、ヨックモックはなんでヨックモックなんだろ。
「綴りは検索したらすぐわかると思う。頭文字ワイとエムは大文字、アットマーク、アルファベットのオーが数字のゼロ、いいふろはアキくんの誕生日」
「誕生日はすぐわかったんですけど、なんでヨックモックなんですか?」
「前に話さなかったっけ、あの子ねえ…缶ごと独り占めしてたのよ…いただいたり買ってきたりするともう大変よ、部屋にささーっと持ち帰って隠しちゃって」
あ、思い出した。缶ごと持ち去って部屋の隅でちょびちょび食べてたとか、大石先生に分け与えるたときもクッキー缶1つまるまる持ってってたとか。あれかあ。
思わず笑ってしまう。お母さんも思い出し笑いして目尻に溢れた涙を指で拭っていた。
「お母さんにとって、よっぽど強烈な思い出だったんですね」
「だって、そんなことする子だと思ってなかったもの」
一緒に暮らしたら、そんな姿を見ることもあるのかな。もう大人…というかいいお歳で流石にもうそんなことはしないか。
「とりあえず、これ家で確認して、飯野さん…父の後輩で今の上司なんですけど、そういう組織の捜査のキャリア長い人なので相談してみます」
「うん、お願いね。明日は仕事?お引越しはいつするの?」
4勤2休で明日が休みだ。しかも休み明けて土日出たら月が変わるから本格的にシフト通りの勤務になる。明日しかタイミングがない。
「多分ハルくんもまだ、アキくんに対する気持ちの落とし所見えてないと思う。アキくんのことは好きだけど一旦破綻しているし、破綻したのに肉体関係は切れないままだし。例の問題が解決しても今度はハルくんが二人の障害になっちゃうかも」
ああ、やっぱり、まだ関係はあるんだ。そりゃ、そうでもなかったらあんな事言わないか。
「…でも、だからって、大石先生が妨害をするような人には思えないんですけど…」
おれが言うと首を左右に振って、右の手も振りながら否定した。
「違うの、色々カタがついて落ち着いて、長谷くんとの関係に安心したらまたアキくんがフラフラし始める気がしてるの」
それ以前、出会ったその日からもうだいぶフラフラはしてたと思う。あの部屋で明らかになんかしてた訳だし。もしかしたらその時の相手が大石先生だったのかもしれないし。
そのことを話した上で「大石先生と関係続けるくらいだったらまだ、我慢できる気が…」と言いかけたところで「本当に、そう思う?」とそれまでと違う低い声で遮られた。
「…え?」
戸惑うおれに、真剣な顔で語りかける。
「今は漠然とした感情だからそう思えるかもしれないけど、《好き》が強固になっていったら、ハルくんと同じ状態に近づくって思うと、怖くない?」
「…!」
おれがもし先生のこと今よりもっと明確に好きになって、先生のためなら死ねると思えるほどになって、そんな状態で同じような状態の大石先生と全面対決なんてなったら…。
「それは…ちょっと回避したいですね…」
「でしょ?だからちょっとそれが心配。心配の先買いしてもしょうがないけど。あ、さっき言ってた例の、忘れないうちに」
そう言うとさっき寝室から持ってきた鞄からスマートフォンを取り出した。
「モノで持ち出すと紛失が怖いから、うちの法人で契約してるオンラインストレージに置いてあるの」
しばらくすると、おれのスマートフォンにURLが記載されたショートメールが届いた。リンクをタップするとパスワード入力画面が表示される。
「あ、これ、パスワード…」
「よっくもっくあっといいふろ」
「…よっくもっく?いいふろ?」
いいふろは先生の誕生日だ、でも、ヨックモックはなんでヨックモックなんだろ。
「綴りは検索したらすぐわかると思う。頭文字ワイとエムは大文字、アットマーク、アルファベットのオーが数字のゼロ、いいふろはアキくんの誕生日」
「誕生日はすぐわかったんですけど、なんでヨックモックなんですか?」
「前に話さなかったっけ、あの子ねえ…缶ごと独り占めしてたのよ…いただいたり買ってきたりするともう大変よ、部屋にささーっと持ち帰って隠しちゃって」
あ、思い出した。缶ごと持ち去って部屋の隅でちょびちょび食べてたとか、大石先生に分け与えるたときもクッキー缶1つまるまる持ってってたとか。あれかあ。
思わず笑ってしまう。お母さんも思い出し笑いして目尻に溢れた涙を指で拭っていた。
「お母さんにとって、よっぽど強烈な思い出だったんですね」
「だって、そんなことする子だと思ってなかったもの」
一緒に暮らしたら、そんな姿を見ることもあるのかな。もう大人…というかいいお歳で流石にもうそんなことはしないか。
「とりあえず、これ家で確認して、飯野さん…父の後輩で今の上司なんですけど、そういう組織の捜査のキャリア長い人なので相談してみます」
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