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【2020/05 潜伏】
《第4週 木曜日 早朝》
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わたしはそこに「人はいつか、何らかの形で必ず死にます。でも、人の尊厳を蹂躙するような悪いこともしていないのに、死ななければいけないなんてことないと思います」と付け足した。
藤川くんはそれまで妙にニコニコしていたのをやめて、光のない目で、明確に何処ともいえないところをじっと見ながら、明日早いからそろそろ休んだほうがいいと言った。でも、0時を回って消灯してからもずっと息遣いはいつまで経っても眠っているときのそれにはならなくて、わたしのほうが先に眠ってしまった。
それでも明け方トイレに起きたときには眠っていて、布団に包まって壁際に向かって横臥し、胎児のようとも芋虫っぽいとも見えるかたちに丸まった状態で寝息を立てていた。その寝姿には見覚えがある。
仕事や研究に没頭して泊まり込むと、きまって床に持ち込んでいたキャンプ用のマットを敷いて、密度が高く通常より厚みもある、実家から持ってきた如何にも高級そうな重いタオルケットに包まってこのように眠っていた。そして、そういうときは大抵メンタルの状態が芳しくなかった。
あの頃も傷めつけられたり自ら傷めつけたりで痛々しい見た目をしていて、いつ食べて眠っているのかもわからない見るからに不健康な状態なのに、人に会うと変にニコニコしていて、でも、ひと度仕事に取り掛かると狂気とも呼べるような集中を発揮し、他の人間が到底追いつけないようなペースで処理したり成果を出していた。
逆戻りしてしまったように見えて、眠る前に緒方先生に「藤川くん無事に到着しました。でも体はボロボロだし、メンタルの状態も良くないみたいです」と送った。トイレから戻った際通知が来ていたので確認したら、それに対する緒方先生の返事は「わかってる、だと思った」だった。わかっているからこそ、余計なことに目が向かないように此処に送り込んだのだ。
緒方先生は敢えて東京でのゴタゴタの影響が入ってこない、遠方にある災害救助の現場に敢えてわたしたちをセットで送り込み、経験のある藤川くんには安全面と技術面でわたしのフォローをするように指示をし、わたしにはおそらく良くない状態にある藤川くんを生活面やメンタルのフォローするようにと指示した。
少なくとも現場に入っている間は、藤川くんは本来の病んだ部分を封じて目の前の職務を全うすると思う。わたしの安全の確保や人見知りのフォローもしてくれると思う。でも問題は、此処に戻ってきて、次の朝になるまでの間の時間だ。ちゃんと食事が摂れるか、眠れるか、自分を傷つけるようなことをしないか見守らなくてはならない。あの頃のように。
気がつくともう5時で窓の外はそこそこ青く明るくなっている。7時から朝食、8時は送迎が来て9時には作業開始だ。藤川くんが仕事で残っているときの就寝時間は3時前後、大体1回の睡眠で眠れるのは長くて4~5時間。そこから推測すると朝食が始まるギリギリに起きるだろう。もしかしたら手持ちのお菓子を食べて朝食は食べないかもしれない。全く摂らないかもしれない。
とにかく、藤川くんもシャワー使うだろうから、先にシャワーを使っておいたほうがいいかと思い、再びベッドを離れようとしたとき、2つのベッドの間にあるサイドテーブルの上で何かが光った。光ったのは備え付けのライトスタンドのコンセントを引っこ抜いて、そこで充電してあった藤川くんのスマートフォンだ。覗き込むと、通知画面に長谷くんの名前が表示されていた。
藤川くんはそれまで妙にニコニコしていたのをやめて、光のない目で、明確に何処ともいえないところをじっと見ながら、明日早いからそろそろ休んだほうがいいと言った。でも、0時を回って消灯してからもずっと息遣いはいつまで経っても眠っているときのそれにはならなくて、わたしのほうが先に眠ってしまった。
それでも明け方トイレに起きたときには眠っていて、布団に包まって壁際に向かって横臥し、胎児のようとも芋虫っぽいとも見えるかたちに丸まった状態で寝息を立てていた。その寝姿には見覚えがある。
仕事や研究に没頭して泊まり込むと、きまって床に持ち込んでいたキャンプ用のマットを敷いて、密度が高く通常より厚みもある、実家から持ってきた如何にも高級そうな重いタオルケットに包まってこのように眠っていた。そして、そういうときは大抵メンタルの状態が芳しくなかった。
あの頃も傷めつけられたり自ら傷めつけたりで痛々しい見た目をしていて、いつ食べて眠っているのかもわからない見るからに不健康な状態なのに、人に会うと変にニコニコしていて、でも、ひと度仕事に取り掛かると狂気とも呼べるような集中を発揮し、他の人間が到底追いつけないようなペースで処理したり成果を出していた。
逆戻りしてしまったように見えて、眠る前に緒方先生に「藤川くん無事に到着しました。でも体はボロボロだし、メンタルの状態も良くないみたいです」と送った。トイレから戻った際通知が来ていたので確認したら、それに対する緒方先生の返事は「わかってる、だと思った」だった。わかっているからこそ、余計なことに目が向かないように此処に送り込んだのだ。
緒方先生は敢えて東京でのゴタゴタの影響が入ってこない、遠方にある災害救助の現場に敢えてわたしたちをセットで送り込み、経験のある藤川くんには安全面と技術面でわたしのフォローをするように指示をし、わたしにはおそらく良くない状態にある藤川くんを生活面やメンタルのフォローするようにと指示した。
少なくとも現場に入っている間は、藤川くんは本来の病んだ部分を封じて目の前の職務を全うすると思う。わたしの安全の確保や人見知りのフォローもしてくれると思う。でも問題は、此処に戻ってきて、次の朝になるまでの間の時間だ。ちゃんと食事が摂れるか、眠れるか、自分を傷つけるようなことをしないか見守らなくてはならない。あの頃のように。
気がつくともう5時で窓の外はそこそこ青く明るくなっている。7時から朝食、8時は送迎が来て9時には作業開始だ。藤川くんが仕事で残っているときの就寝時間は3時前後、大体1回の睡眠で眠れるのは長くて4~5時間。そこから推測すると朝食が始まるギリギリに起きるだろう。もしかしたら手持ちのお菓子を食べて朝食は食べないかもしれない。全く摂らないかもしれない。
とにかく、藤川くんもシャワー使うだろうから、先にシャワーを使っておいたほうがいいかと思い、再びベッドを離れようとしたとき、2つのベッドの間にあるサイドテーブルの上で何かが光った。光ったのは備え付けのライトスタンドのコンセントを引っこ抜いて、そこで充電してあった藤川くんのスマートフォンだ。覗き込むと、通知画面に長谷くんの名前が表示されていた。
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