Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 秘匿】

《第4週 火曜日 朝》② (●)(*)

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「なんだよ、どうした?」
振り返って扉を閉じるのを阻もうとしたところで玲が扉を足で蹴って閉じ、おれの手は結構な勢いで挟まれた。幸い骨が折れたりはしなかったが熱い。少し腫れそうだ。無事だった右手で襟首を掴んで玲に詰め寄る。
「痛え!何やってんだ、ぶっ殺すぞ」
玲は寄せた顔をニヤニヤして見つめて、おれの顔を、両耳を塞ぐようにして挟んで引き寄せて口付けた。薄い小さい舌が隙間から割り込むように入り込んで、おれの舌先を擽る。舌を伸ばして絡めるようにして舐るとそれに応える。
外音が入らないせいで、その音が直に脳に響く。否応なく刺激された体が反応し、無意識のうち息が荒くなり熱くなる。襟首を掴んでいた手を離して、玲の肩を掴んで引き剥がそうとするが頑なに離れない。
これ以上はまずいと思った瞬間、玲の手が緩んで唇が離れた。
「ふみ、憶えてな、おれの感触とか匂いとか味とか。欲しかったら絶対生きて戻ってこい、これは命令だよ」
送り迎えのとき、二人きりになると見せていた、決してカタギの人間がしない顔で言った。
「あのな、何回も言うけどおれはオヤジの犬であってお前の犬じゃねえの、お前に命令される筋合いなんか…」
そこまで言ったところで、今度は玲から襟首を掴まれた。
「文鷹、勘違いしてんじゃねえぞ。何回も言うけど、おれに逆らうってことはオヤジに逆らうのと同じだからな。おれの命令はオヤジの命令だと思え」
「またそれかよ…ほんと、オヤジも由美子さんもお前甘やかしやがって…」
呆れて天を仰ぐと、手を離して今度はおれの胸や腹を力のこもってない手でポコポコ叩き始めた。その手を受け止めて握って「こら」と言うと笑った。
「はは、なんとでも言いな。戻ってきたらいっぱいお仕置きしていいからさ…てかさ、戻ってきて、抱き潰して、ヤリ殺してくれよ、オヤジの代わりに」
おれはニヤニヤして言う玲の顔を、きわめて冷静に真顔で見つめて言った。
「できねえよ。おまえ、ほんとはわかってるだろ。おれが、お前のことどう思ってるのか、あのときなんて言ったか」
「さあね、知りたかったら、無事帰ってくるんだな」
もう一度軽く、啄むように口付けてから玲は鍵を解いた。
個室を出て、手洗い場でハンドソープを丁寧に泡立てて二度洗いしている背後から鏡越しに覗き込んで声をかける。
玲は鏡を見ないようにしている。昔からそうだった。
「なあ、おれが来た痕跡はできるだけ消しとけ、ネクタイとパンツ捨てとけよ」
フーディ風のプルオーバーのポケットからハンカチを出して水気を拭いながら「おっけー、でもしばらくそれでシコるわ」とか言うので思わず頭を叩いた。全く、育ちがいいんだか悪いんだか。
「それより、お前、なんか熱くないか」
さっきキスしたとき、おれの耳を塞ぐ掌と、口の中の温度が妙に高く感じた。
「何が?気のせいじゃない?」
軽く流す玲とトイレを出て、マスクとメガネつけて、ジャケットは脱いで腕にかけた。チェックアウトして駅に向かう赤の他人に紛れてノーネクタイで駅に向かう。ゆりかもめは世間の通勤時間にまだ被っているのかそれなりに混み合っている状態だった。
乗車してからやや暫くして、スマートフォンのバイブレーションで着信に気がついて端末を取り出すと、玲からのメッセージだった。
「ふみ、絶対戻ってきて、オヤジの代わりなんかじゃなくていいから、ふみはふみでいいから」
添付された写真は、さっきまで居た玲の泊まる部屋の窓辺から写した景色だった。
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