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【2020/05 深度と濃度】
《第3週 土曜日 午後》③
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中央の一番手前にある箱を引き出し、蓋を開けてみる。ぎっしりとして重い。中はノートやアルバムが入っている箱だ。何度も出し入れしているのか、蓋が縒れている。
一番上に載っていたアルバムは小さな頃の先生と思われる男の子が単独で写っているものばかりだ。焚き火の前でカップ麺を啜っていたり、動物園のふれあいコーナーで座ってる羊に寄り添って一緒に寝転がってたり、おたまじゃくしが入ったバケツを見ていたり、本当にかわいい。
七五三や入学式の写真などの記念のものもあったが、それ以降ありそうな小学校の何らかの行事に参加しているような写真は少ない。お出かけ先や家の中で撮ったものが圧倒的に多かった。
その下のアルバムを開くとそれはもっとうんと小さな頃のもので、そこにはよちよち歩きの幼い先生と、先生の実のお父さん、お母さんと思われる人が写っていた。当たり前だが、色は多少褪せてはいるものの、調書に貼付されていたものより鮮明だ。
そして、思っていたよりもお母さんは若く、お父さんは年齢が上だ。男の子は母方に似るというが、やはりあれこれ手を加えたにもかかわらず今の顔でもなんとなくお母さんに似ているというか、面影を感じることがわかる。
勿論似ていない要素もあるが、整形で変わってしまってわからなくなったのか、隔世遺伝なのか、お父さん譲りなのかよくわからない。本人が此処にいれば比較してみることは出来るけど、態々起こすのも、勝手に見てしまったからどうかと思う。
親御さんに抱っこされたり支えられている先生は不思議そうにあらぬ方向を向いてたり、なにかに夢中になっててあまりカメラの存在というか、人の目を見ていない感じだ。さっきのアルバムでもそうだった。レンズを指さされても全く見ていない。
更に次のアルバムは小学校の後半なのか、急に大人びた顔になっている。時々はちゃんとこちらを向いて笑っているものもあるが、やはりこちらを向いて目線を向けてくれているものは少ない。
箱の中を更に見ると、次に出てきたのは大量のノートだ。表紙にナンバリングして番号順に詰めてあり、いつからいつまでの記録かも書き添えてある。一番上のものが一番新しい。事件が起きたとみられる小学校6年の途中が最期の日付になっていて、それ以降は空白だ。
最後のページから遡り、読んでいくと概ね調書に載っていた時系列の記録に重なっている。最後の日、遠足前夜。そしてその少し前、お父さんが仕事で出張にでかけ、ついでに話し合いのためお母さんの姉がいる実家を尋ねると連絡があったが、その後足取りがつかめなくなり、そのまま帰ってこないこと、捜査願を出したこと。
そして、その前、春の大型連休でお父さんとでかけた際に起きたこと、先生がお父さんと最期にした会話、お父さんに言った言葉が残されていた。これは調書には記録されていなかったことだ。
その内容におれは動揺をせざるを得なかった。小学校高学年での出来事ではある。先生のお父さんへの憧れとか好意は、それなりに欲望を含んだものになっていたことも頭ではわかっているつもりだった。
しかし、実際にその具体的な内容、遣り取りや起きてしまったことは、性的欲望を大人から向けられ続けてきたおれにとっては、心の準備無しで触れるべきものではなかった。
一番上に載っていたアルバムは小さな頃の先生と思われる男の子が単独で写っているものばかりだ。焚き火の前でカップ麺を啜っていたり、動物園のふれあいコーナーで座ってる羊に寄り添って一緒に寝転がってたり、おたまじゃくしが入ったバケツを見ていたり、本当にかわいい。
七五三や入学式の写真などの記念のものもあったが、それ以降ありそうな小学校の何らかの行事に参加しているような写真は少ない。お出かけ先や家の中で撮ったものが圧倒的に多かった。
その下のアルバムを開くとそれはもっとうんと小さな頃のもので、そこにはよちよち歩きの幼い先生と、先生の実のお父さん、お母さんと思われる人が写っていた。当たり前だが、色は多少褪せてはいるものの、調書に貼付されていたものより鮮明だ。
そして、思っていたよりもお母さんは若く、お父さんは年齢が上だ。男の子は母方に似るというが、やはりあれこれ手を加えたにもかかわらず今の顔でもなんとなくお母さんに似ているというか、面影を感じることがわかる。
勿論似ていない要素もあるが、整形で変わってしまってわからなくなったのか、隔世遺伝なのか、お父さん譲りなのかよくわからない。本人が此処にいれば比較してみることは出来るけど、態々起こすのも、勝手に見てしまったからどうかと思う。
親御さんに抱っこされたり支えられている先生は不思議そうにあらぬ方向を向いてたり、なにかに夢中になっててあまりカメラの存在というか、人の目を見ていない感じだ。さっきのアルバムでもそうだった。レンズを指さされても全く見ていない。
更に次のアルバムは小学校の後半なのか、急に大人びた顔になっている。時々はちゃんとこちらを向いて笑っているものもあるが、やはりこちらを向いて目線を向けてくれているものは少ない。
箱の中を更に見ると、次に出てきたのは大量のノートだ。表紙にナンバリングして番号順に詰めてあり、いつからいつまでの記録かも書き添えてある。一番上のものが一番新しい。事件が起きたとみられる小学校6年の途中が最期の日付になっていて、それ以降は空白だ。
最後のページから遡り、読んでいくと概ね調書に載っていた時系列の記録に重なっている。最後の日、遠足前夜。そしてその少し前、お父さんが仕事で出張にでかけ、ついでに話し合いのためお母さんの姉がいる実家を尋ねると連絡があったが、その後足取りがつかめなくなり、そのまま帰ってこないこと、捜査願を出したこと。
そして、その前、春の大型連休でお父さんとでかけた際に起きたこと、先生がお父さんと最期にした会話、お父さんに言った言葉が残されていた。これは調書には記録されていなかったことだ。
その内容におれは動揺をせざるを得なかった。小学校高学年での出来事ではある。先生のお父さんへの憧れとか好意は、それなりに欲望を含んだものになっていたことも頭ではわかっているつもりだった。
しかし、実際にその具体的な内容、遣り取りや起きてしまったことは、性的欲望を大人から向けられ続けてきたおれにとっては、心の準備無しで触れるべきものではなかった。
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