Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 深度と濃度】

《第3週 土曜日 午前》①

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汗をかいたので髪を軽くシャワーで流してトリートメントだけしてからベッドに戻って眠り、次に起きたときには朝10時を回って、リビングには日差しもかなり入って明るくなっていた。
5時間近くまとまって眠ったのは久しぶりかもしれない。いつもだとだいたい3時間すぎると起きてしまうし、眠り自体も浅くてジャーキングが発生して中途覚醒してしまうこともある。
「長谷、昼になっちゃうよ、起きよう」
隣のマットレスに眠っていた長谷を揺すって起こす。長谷は逆光に照らされるおれを見上げて眩しそうに目を開けて、ゆっくりと起き上がった。
「おはようございます…おれ結局あのあと我慢できなくて、先生が上がってくる前に自分の分食べちゃったんですよ…食べたら一気に眠くなって…」
そこまで言うと大欠伸をして顔をこすり、まだ眠そうに座ったままぼんやりしている。
「じゃあ買いに行こうよ、歩いてるうちに目も覚めるでしょ。ちょっと見たいものもあるしハンズまで付き合ってよ。ついでにデパ地下でなんか買ってこよう」
「え、遠くないですか?」
ハンガーにかけていた長谷の服を、ハンガーごと持っていき長谷の傍らに皺にならないようにそっと置く。
「遠くはないでしょ、てか食ってすぐ寝ちゃったんだったらその分動かないと」
「ですねえ…」
ハンガーを持ってカーテンレールにかけて着替え始めた。背が高いとあのくらいは余裕で届くんだな、いいなあ。
「風呂入りながら考えてたんだけどさあ、なんか訊こうと思ってたんだけど思い出せないんだよなあ、年だなあって思ってさ」
「思い出したら言ってくださいね、おれだってありますよそれくらい」
確かに、長谷は多いだろう…てか人の親のとこまで行っておいて訊こうと思ってたこと聞けてないし、大丈夫かなほんとに。
「今日明日のうちに、お前がこっち移ってくる前に書庫整理して机持ってって、ちゃんと書斎って感じにしたいんだよね。だから長谷に手伝ってほしくてさ」
「いいですよ、家具の部屋から部屋単位移動って1人だと難しいですしね」
途中まで着替えると、長谷は鞄に収納していたホルスターやオーガナイザーを出して取り付けて職業柄がわかる装備を身につけ、それからベストとジャケットを着込む。5月も後半で結構陽が出てくると暑いのに大変だ。
「うん、てか、うち本とか紙ものが多いし、結局紙って重たいからさ。漫画の本とかは紙が軽い再生紙が多いからまだマシだけど、専門書とかってだいたい使われてる紙からして重いし」
「それはありますね、薄いけど密度高いツルッとした紙の場合もありますもんね」
そういや、此処に泊まるときの部屋着とか買ってあげたほうがいいのかな。引越してくるまでの間に、また泊まりに来ることもありそうだよな。途中で忘れなかったら、ついでにどっか寄るか。
「長谷はいつ、うちに引越して来んの?」
「あ、部屋の契約が切れるのが8月なんですけど、その前に引っ越しちゃってもいいですか?」
仕事用の鞄から、普段遣いの斜めがけの鞄にスマートフォンや充電用バッテリー、財布やハンカチやティッシュやマスクや消毒液やハンドソープのチューブやらを移し替える。
「いいよ、そっちの部屋のことはどうするかは任せるよ。おれの契約じゃないし」
「わかりました。おれ持ち物少ないんで、適当に送りますからあとで先生の都合のいい日時とここの住所教えて下さい。引越しパックとかすらいらないような量なんですよ」
長谷も充電バッテリーに繋いだスマートフォンをジャケットの内側に仕舞っている。財布はウォレットコードを繋いでから上着と中のベストを捲って、スラックスのウエスト部分、背中側の中央のくぼみのところに押し込んだ。
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