Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 道連れ】

《第3週 木曜日 深夜》⑥

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「…先輩、おれ、多分やっぱ、心のどっかでちょっと期待してるんですよ。今でこそ無意識で線路飛び込むほど病んではいないし、自分で死ぬほどの勇気もないけど、誰かに不可抗力で殺されるようなこと、怖いけど、ずっと死ねること期待して」
「やめろ、いうな」
おれの頬に、水滴が降ってくる。
「このまま過去に苦しめられたまま生きるしかないし、それは罰だと思ってて、だから」
「もういい、なんも言わんでええ。絶対守ったる、お前のおとんの代わりに。だからもう、なんも言わんでええ」
覆いかぶさるようにしておれを抱き寄せて、頭を何度も撫でながら先輩は泣いている。
「あのね、先輩。終りがあるからこそ頑張れること、耐えられることだっていっぱいある。だから、そういう意味じゃ死も救いなんだ。だって、おれが望んでいた世界なんか、もう何処にもないんだもの。だっていないんだよ。どんなに追い求めたって、頭ではわかってるんです。今更死のうが生きようが、二度と会えない。時間を巻き戻すことなんかできないって」

帰宅後、案の定おれは倒れ込むようにベッドに転がり、そのまま寝落ちしていた。
深夜だから気を遣ってくれているのかもしれないけど、アラーム以外はサイレントにしているから別にいいのに。
今回の件、先生はどう物事を処理するつもりなんだろう。小曽川さんの言う通り、年貢のお納め時と考えているんだろうか。
枕元にスマートフォンを置いてぼんやりと天井を眺めていたが、藤川先生や大石先生、小曽川さんや飯野さんから返信が来ていたことを思い出した。最新の通知は大石先生からのものになっている。
「遅くなってごめん。アキくんのお母さんに会ってみたいという話、いいよ。長谷くんの都合のいい日時言ってくれたらそれに合わせてくれると思うから教えて。あと、おれから長谷くんのことは簡単に説明しておくから。」
大石先生に返信を打つ。
「お疲れさまです。署に戻ると月次でシフト勤務になると思うので、今月中の週末、午後からお会いできるか訊いていただきたいです。今後どうなるか不透明なので早いほうが助かります。」
すぐに返信が返ってきた。
「わかった。また連絡します。明日すぐ確認とるようにはするね。週末はおれは泊まり込みで尚且つ明けも残業が発生すると思うので立ち会うことはできないから、直接施設行ってもらえたほうがいいと思う。でも感染症疑いの患者が増えてるし、高齢者施設は面会禁止になってるかも。その辺りも確認しておくね。」
メッセージの後には、キツネが布団に潜ってるスタンプがついていた。
藤川先生からもメッセージがあったのでそれにも返信はした。一応既読の表示にこそなったが、返信は来ない。今夜は返事はもらえなさそうだ。
おれは諦めてリモコンを手にとって照明を消した。それでも部屋はスマートフォンの画面のバックライトと、液晶表示の目覚まし時計の水色の光で仄かに明るい。
小曽川さんや飯野さんからのメッセージも確認はしたけど、こちらはそれぞれ明日の出勤に関する簡単な連絡だった。返信は朝置きてからでもよさそうなので電源ボタンを押してバックライトを消した。
中途半端に短時間深く眠ってしまったのもあるけど、なんだか今後のことが気になってなかなか寝付けない。それは明日、署に行けばおそらくはハッキリすることではあるんだけど、おれとしては先生と引き離されるのが怖い。
先生は、飯野さんは、今後おれをどうするつもりで居るんだろう。
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