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【2020/05 暗転】
《第3週 水曜日 午前》②
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スマートフォンにセットしていたアラームが鳴り、授業終わりのチャイムとともに起き上がって、おれは寝床を片付けた。
先生の部屋で物音がするので行こうとしたところで小曽川さんがおれに声をかけた。
「今日の午後の、ふたりで多摩行って剖検とか解剖実習してる班があったら見学させてもらって、そのまま直帰しろですって。先生午後は監察医務院呼ばれたっぽいです、もう出ますだって」
施錠してフロアを去っていく音が聞こえて、おれは脱力した。小曽川さんも「わぁ~きっついですねこれ…」と割とマジでドン引きしている。
正直、もう今日は本当に何もする気になれそうにない。実習に行ったって足を引っ張るだけになってしまいそうだ。行かずにこのまま早退したい。でもそうなると署にも報告が行くだろうし、それは困る。
「今日も、先週の木曜午後に行ったときと同じ感じですかね」
「だと思うなあ、誰かしら常勤の教員と助教とかがついてそろそろ昨年度の国試通ったやつとかにやらせて若い学年とかゼミ生見学させたりすんじゃないかなあ、時期的に」
必要なものを鞄に詰めて出かける準備を始める小曽川さんに合わせて、おれも準備を進める。
「あの、前回いらっしゃった、先生のお師匠さんって、今日は居ますかね」
「どうかなあ…あ、前回は居なかったけど先生の同期の教員も居るんですよ、長谷くんなんか話聞いてみたいんでしょう、怒らせちゃってるのに懲りないですねえ」
だって、そんな事言われても。おれは先生のこと多分諦めきれないし、まだ先生のこと知りたい。
ちゃんと話し合いたい。
このままなかった事にされて、実習が終わったらそれきりなんて嫌だ。友だちになるのすらもう無理かもしれないけど、自分勝手な願望あのは承知しているけど、知り合い程度でもいいからおれを認識していてほしい。
利用されたまままた終わったなんて思わされるのが辛い。そんなのおれが個人的に背負ってるトラウマで、先生にしたら知ったこっちゃないことだろうけど。
「おれ、今日、業語、先生とサシでやっぱり話がしたいです」
「うーん、どうしてもって言うなら止めないけど、おれはよしたほうがいいと思うなあ」
小曽川さんは学校の敷地を出てJRの駅に向かう途中、グズグズしているおれを宥め、励ますように言った。
「あの状態じゃ、先生もクールダウンしたいんじゃないですかねえ、明日になったらちょっとは落ち着いて話聞いてくれるんじゃないんですか?前向きに捉えましょうよ」
秋葉原までで出て、都営新宿線で京王線に直通する便に乗る。乗り換えもないのでおれは再び考えを止めるため寝かせてもらった。最寄り駅から狛江行きのバスの路線に沿って歩くと多摩キャンパスだ。
「結局おれたちお昼食べてないですね、長谷くん大丈夫です?」
「はい、まあ、多分」
今は食事する気力なんかないし、勿論実習に集中できる気もしない。寝逃げするか、早退して帰るか、先生にどうにか会いに行くかしたい。でもここで何か先生のことを知れるかも、と思って耐えるしかない。
小曽川さんに連れられて教務に今日の解剖室の予約状況や使用者情報を見てもらうと、お師匠さんはいらっしゃった。小曽川さんが言っていた先生と同期の教員の方もいる。
「よかったですね、終わったらお話聞かせてもらえるかもですよ?直帰って言われてるからおれらはあとの時間なんか自由ですし」
ほんの少しだけ気持ちを持ち直して、小曽川さんと準備室に向かった。
しかし、そこはこないだとは様相が一変していた。只でさえ感染症のリスクを負う業務で入室の準備が手間取るのに、が新型感染症の対応で更に厳重さを増していた。
先生の部屋で物音がするので行こうとしたところで小曽川さんがおれに声をかけた。
「今日の午後の、ふたりで多摩行って剖検とか解剖実習してる班があったら見学させてもらって、そのまま直帰しろですって。先生午後は監察医務院呼ばれたっぽいです、もう出ますだって」
施錠してフロアを去っていく音が聞こえて、おれは脱力した。小曽川さんも「わぁ~きっついですねこれ…」と割とマジでドン引きしている。
正直、もう今日は本当に何もする気になれそうにない。実習に行ったって足を引っ張るだけになってしまいそうだ。行かずにこのまま早退したい。でもそうなると署にも報告が行くだろうし、それは困る。
「今日も、先週の木曜午後に行ったときと同じ感じですかね」
「だと思うなあ、誰かしら常勤の教員と助教とかがついてそろそろ昨年度の国試通ったやつとかにやらせて若い学年とかゼミ生見学させたりすんじゃないかなあ、時期的に」
必要なものを鞄に詰めて出かける準備を始める小曽川さんに合わせて、おれも準備を進める。
「あの、前回いらっしゃった、先生のお師匠さんって、今日は居ますかね」
「どうかなあ…あ、前回は居なかったけど先生の同期の教員も居るんですよ、長谷くんなんか話聞いてみたいんでしょう、怒らせちゃってるのに懲りないですねえ」
だって、そんな事言われても。おれは先生のこと多分諦めきれないし、まだ先生のこと知りたい。
ちゃんと話し合いたい。
このままなかった事にされて、実習が終わったらそれきりなんて嫌だ。友だちになるのすらもう無理かもしれないけど、自分勝手な願望あのは承知しているけど、知り合い程度でもいいからおれを認識していてほしい。
利用されたまままた終わったなんて思わされるのが辛い。そんなのおれが個人的に背負ってるトラウマで、先生にしたら知ったこっちゃないことだろうけど。
「おれ、今日、業語、先生とサシでやっぱり話がしたいです」
「うーん、どうしてもって言うなら止めないけど、おれはよしたほうがいいと思うなあ」
小曽川さんは学校の敷地を出てJRの駅に向かう途中、グズグズしているおれを宥め、励ますように言った。
「あの状態じゃ、先生もクールダウンしたいんじゃないですかねえ、明日になったらちょっとは落ち着いて話聞いてくれるんじゃないんですか?前向きに捉えましょうよ」
秋葉原までで出て、都営新宿線で京王線に直通する便に乗る。乗り換えもないのでおれは再び考えを止めるため寝かせてもらった。最寄り駅から狛江行きのバスの路線に沿って歩くと多摩キャンパスだ。
「結局おれたちお昼食べてないですね、長谷くん大丈夫です?」
「はい、まあ、多分」
今は食事する気力なんかないし、勿論実習に集中できる気もしない。寝逃げするか、早退して帰るか、先生にどうにか会いに行くかしたい。でもここで何か先生のことを知れるかも、と思って耐えるしかない。
小曽川さんに連れられて教務に今日の解剖室の予約状況や使用者情報を見てもらうと、お師匠さんはいらっしゃった。小曽川さんが言っていた先生と同期の教員の方もいる。
「よかったですね、終わったらお話聞かせてもらえるかもですよ?直帰って言われてるからおれらはあとの時間なんか自由ですし」
ほんの少しだけ気持ちを持ち直して、小曽川さんと準備室に向かった。
しかし、そこはこないだとは様相が一変していた。只でさえ感染症のリスクを負う業務で入室の準備が手間取るのに、が新型感染症の対応で更に厳重さを増していた。
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