162 / 447
【2020/05 友よⅡ】
《第3週 火曜日 夜半》③
しおりを挟む
22時を回った。いつもならそろそろうちに来るはずなのに、一向に連絡もなければ、こちらからの連絡にも返信がなく、既読もつかない。
「飲みの約束あるから」って言ってたけど、こういうときはやっぱ女かなあ。たまにあるんだよな。別におれがどうこう言える立場じゃないけど、正直面白くない。
仕事をそこそこで切り上げて持ち帰って、あれこれ身支度してから改めて仕事で暇を潰して待っているのに、そんな理由だったらもうタクシーでさっさと帰ってもらおう。
集中力が切れ始めたので、一旦離席してソファに寝転がり、スマートフォンで長谷にLINEでメッセージしてみる。
「長谷、もう家ついた?」
間もなく返信が来る。
「ご飯食べてます、今雑炊啜ってました」
健康的で何よりだ。おれは今日も大学の部屋で甘みのないプロテインをミルクティで溶いてズルズル啜って、サプリメント路飲んで、服薬しておしまいだ。それなりに腹持ちするから苦ではないけど。
「いいね、雑炊は何の雑炊なの」
「鶏ですよ、溶き卵混ぜてます」
あぁ、そうだ。しばらく直人さんとこ行けないから、ユカちゃん特製の中華粥もしばらく食べられないんだよな。温かい汁物食える機会なくなっちゃいそうだ。
「今度うちに来たら、具はカニカマとネギとかでいいからおれにもご馳走してよ」
「いいですよ!てか先生、おれがあの日買っておいてった食材って食べ切れました?」
ああ、そういえば。ユカちゃんが冷蔵庫にあった納豆はお昼にいただきましたって言ってたな。あとは戸棚に片付けてあった。
「パンは冷凍して、保存が効くものは保存してあるよ。納豆だけは日持ちしないから食べた」
「よかった、置いてきちゃって迷惑じゃないか気になってました」
よく憶えてるな、おれは自分の部屋のこと憶えてないや。最近でこそしばらくはちゃんと家に帰ってきて寝ているけど、居ないときは全然居ないし。とりあえずゆったり風呂に入って静かに寝れたらいい、程度。
家事はもう丸投げだったから、今後しばらくユカちゃんが来ないことでどれだけ荒れるのかと思うと正直気が重い。おれは直ぐ散らかすしこぼすし何処に何置いたか忘れてしまう。
それどころか、おれは自分が着るものですら自分で管理していない。服は全部こだわりが強いハルくんが定期的に状態を確認しては買いに連れてってくれて揃えている。
買ったものは写真を撮ってリスト化してあるらしく、朝起きると「きょうはこれとこれとこれ」みたいにメールなどで指示してくれるのでそのとおりにしている。
鞄は忘れ物がないように全部バッグインバッグごと入れ替えるようにして、鞄についているポケットには何も入れないというルールだ。
仕事以外の大抵のことはダメダメなことはそれなりに自覚がある。長谷みたいな機転も効かない。なんか、立派に一人暮らししてるの眩しいな。家を出て30年とか経つのにおれは碌に出来ることがない。
「長谷、その雑炊食べたら今日はもう寝る?」
「あ~、どうかなあ…気になることがあって、ちょっと今日は寝付きが悪いかもしれません」
なんだろう、なんかわからないことでもあったかな。
「おれで力になれることなら聞くよ?」
「いえ、大丈夫です、ちょっとプライベートなことなので」
おれは一応そういう話を聞くプロでもあるんだが…資格もとってるし。
「眠れないとか漠然と不安があるとかだったらよくないよ、何かあったら必ず言って」
「ありがとうございます、とりあえずこの辺で失礼します。おやすみなさい。また明日もよろしくお願いします」
あーあ、長谷にまでふられた。つまんないの。
ハルくんが来たら、理由にも凭るけどめちゃくちゃいじってやろ。
「飲みの約束あるから」って言ってたけど、こういうときはやっぱ女かなあ。たまにあるんだよな。別におれがどうこう言える立場じゃないけど、正直面白くない。
仕事をそこそこで切り上げて持ち帰って、あれこれ身支度してから改めて仕事で暇を潰して待っているのに、そんな理由だったらもうタクシーでさっさと帰ってもらおう。
集中力が切れ始めたので、一旦離席してソファに寝転がり、スマートフォンで長谷にLINEでメッセージしてみる。
「長谷、もう家ついた?」
間もなく返信が来る。
「ご飯食べてます、今雑炊啜ってました」
健康的で何よりだ。おれは今日も大学の部屋で甘みのないプロテインをミルクティで溶いてズルズル啜って、サプリメント路飲んで、服薬しておしまいだ。それなりに腹持ちするから苦ではないけど。
「いいね、雑炊は何の雑炊なの」
「鶏ですよ、溶き卵混ぜてます」
あぁ、そうだ。しばらく直人さんとこ行けないから、ユカちゃん特製の中華粥もしばらく食べられないんだよな。温かい汁物食える機会なくなっちゃいそうだ。
「今度うちに来たら、具はカニカマとネギとかでいいからおれにもご馳走してよ」
「いいですよ!てか先生、おれがあの日買っておいてった食材って食べ切れました?」
ああ、そういえば。ユカちゃんが冷蔵庫にあった納豆はお昼にいただきましたって言ってたな。あとは戸棚に片付けてあった。
「パンは冷凍して、保存が効くものは保存してあるよ。納豆だけは日持ちしないから食べた」
「よかった、置いてきちゃって迷惑じゃないか気になってました」
よく憶えてるな、おれは自分の部屋のこと憶えてないや。最近でこそしばらくはちゃんと家に帰ってきて寝ているけど、居ないときは全然居ないし。とりあえずゆったり風呂に入って静かに寝れたらいい、程度。
家事はもう丸投げだったから、今後しばらくユカちゃんが来ないことでどれだけ荒れるのかと思うと正直気が重い。おれは直ぐ散らかすしこぼすし何処に何置いたか忘れてしまう。
それどころか、おれは自分が着るものですら自分で管理していない。服は全部こだわりが強いハルくんが定期的に状態を確認しては買いに連れてってくれて揃えている。
買ったものは写真を撮ってリスト化してあるらしく、朝起きると「きょうはこれとこれとこれ」みたいにメールなどで指示してくれるのでそのとおりにしている。
鞄は忘れ物がないように全部バッグインバッグごと入れ替えるようにして、鞄についているポケットには何も入れないというルールだ。
仕事以外の大抵のことはダメダメなことはそれなりに自覚がある。長谷みたいな機転も効かない。なんか、立派に一人暮らししてるの眩しいな。家を出て30年とか経つのにおれは碌に出来ることがない。
「長谷、その雑炊食べたら今日はもう寝る?」
「あ~、どうかなあ…気になることがあって、ちょっと今日は寝付きが悪いかもしれません」
なんだろう、なんかわからないことでもあったかな。
「おれで力になれることなら聞くよ?」
「いえ、大丈夫です、ちょっとプライベートなことなので」
おれは一応そういう話を聞くプロでもあるんだが…資格もとってるし。
「眠れないとか漠然と不安があるとかだったらよくないよ、何かあったら必ず言って」
「ありがとうございます、とりあえずこの辺で失礼します。おやすみなさい。また明日もよろしくお願いします」
あーあ、長谷にまでふられた。つまんないの。
ハルくんが来たら、理由にも凭るけどめちゃくちゃいじってやろ。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる