Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 友よⅡ】

《第3週 火曜日 夜半》③

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22時を回った。いつもならそろそろうちに来るはずなのに、一向に連絡もなければ、こちらからの連絡にも返信がなく、既読もつかない。
「飲みの約束あるから」って言ってたけど、こういうときはやっぱ女かなあ。たまにあるんだよな。別におれがどうこう言える立場じゃないけど、正直面白くない。
仕事をそこそこで切り上げて持ち帰って、あれこれ身支度してから改めて仕事で暇を潰して待っているのに、そんな理由だったらもうタクシーでさっさと帰ってもらおう。
集中力が切れ始めたので、一旦離席してソファに寝転がり、スマートフォンで長谷にLINEでメッセージしてみる。
「長谷、もう家ついた?」
間もなく返信が来る。
「ご飯食べてます、今雑炊啜ってました」
健康的で何よりだ。おれは今日も大学の部屋で甘みのないプロテインをミルクティで溶いてズルズル啜って、サプリメント路飲んで、服薬しておしまいだ。それなりに腹持ちするから苦ではないけど。
「いいね、雑炊は何の雑炊なの」
「鶏ですよ、溶き卵混ぜてます」
あぁ、そうだ。しばらく直人さんとこ行けないから、ユカちゃん特製の中華粥もしばらく食べられないんだよな。温かい汁物食える機会なくなっちゃいそうだ。
「今度うちに来たら、具はカニカマとネギとかでいいからおれにもご馳走してよ」
「いいですよ!てか先生、おれがあの日買っておいてった食材って食べ切れました?」
ああ、そういえば。ユカちゃんが冷蔵庫にあった納豆はお昼にいただきましたって言ってたな。あとは戸棚に片付けてあった。
「パンは冷凍して、保存が効くものは保存してあるよ。納豆だけは日持ちしないから食べた」
「よかった、置いてきちゃって迷惑じゃないか気になってました」
よく憶えてるな、おれは自分の部屋のこと憶えてないや。最近でこそしばらくはちゃんと家に帰ってきて寝ているけど、居ないときは全然居ないし。とりあえずゆったり風呂に入って静かに寝れたらいい、程度。
家事はもう丸投げだったから、今後しばらくユカちゃんが来ないことでどれだけ荒れるのかと思うと正直気が重い。おれは直ぐ散らかすしこぼすし何処に何置いたか忘れてしまう。
それどころか、おれは自分が着るものですら自分で管理していない。服は全部こだわりが強いハルくんが定期的に状態を確認しては買いに連れてってくれて揃えている。
買ったものは写真を撮ってリスト化してあるらしく、朝起きると「きょうはこれとこれとこれ」みたいにメールなどで指示してくれるのでそのとおりにしている。
鞄は忘れ物がないように全部バッグインバッグごと入れ替えるようにして、鞄についているポケットには何も入れないというルールだ。
仕事以外の大抵のことはダメダメなことはそれなりに自覚がある。長谷みたいな機転も効かない。なんか、立派に一人暮らししてるの眩しいな。家を出て30年とか経つのにおれは碌に出来ることがない。
「長谷、その雑炊食べたら今日はもう寝る?」
「あ~、どうかなあ…気になることがあって、ちょっと今日は寝付きが悪いかもしれません」
なんだろう、なんかわからないことでもあったかな。
「おれで力になれることなら聞くよ?」
「いえ、大丈夫です、ちょっとプライベートなことなので」
おれは一応そういう話を聞くプロでもあるんだが…資格もとってるし。
「眠れないとか漠然と不安があるとかだったらよくないよ、何かあったら必ず言って」
「ありがとうございます、とりあえずこの辺で失礼します。おやすみなさい。また明日もよろしくお願いします」
あーあ、長谷にまでふられた。つまんないの。
ハルくんが来たら、理由にも凭るけどめちゃくちゃいじってやろ。
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