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【2020/05 友よ】
《第3週 火曜日 業後》①
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取り急ぎ学校を出て、大石先生に何処で待てばいいかメッセージを送って尋ねると、直接先に店に向かってほしいとのことだった。店舗のウェブサイトの、アクセス情報のURLが送られてきたので開いてみる。隅田川沿い、聖路加国際病院の近くだ。ここからだと3kmほど。歩いて行けなくはない距離だ。
そう言えば水炊きって言ってたな、と思いそのまま上部のリンクから料理のページを開くと、そこには一子相伝と仰々しく書かれていて、お値段は最安でも居酒屋の水炊きコースの10倍だった。嘘でしょ、こんなん食べたら給料日まであとはモヤシで暮らさないと詰む。
大慌てで大石先生にこんな値段払えないと送ると「ごちそうするから気にしなくていいよ。おれ普段食事にカネとか時間掛けられないから本業休みの日はいいもの食べたいし付き合って。あと此処料亭で個室だし、介添え断ればゆっくり落ち着いて話せるよ」と返ってきた。
料亭なんか初めてなんですが。というか、皆さん、気前が良すぎるのでは?小曽川さんと食べたディナーだって決して安くはない、あれだって5桁のはず。寧ろ凝った家には住んでるけど藤川先生が一番贅沢してないというか、庶民的ですらある気がする。
再びウェブサイトを見ると、上部リンクには「お部屋」という項目がある。個室って言ってたのはコレか、と思いリンクを開く。そこで驚愕の事実を知った。お料理のお代と、お部屋代は別なのだ。2名様13,200円からとある。完全におれの知らない世界だ。
そして、小曽川さんが言っていた「大石先生企んでるかもしれませんね~」「あの人のこと絡むと、いきなり性格悪くなる」という言葉が脳裏に巡る。
どうしよう、おれはハメられているんだろうか。怖くなってきた、帰りたい。足取りが一気に重くなる。しかし今更急にやっぱり今日はやめましょうとも言えない。現地まで歩くのを諦めて、引き返して神谷町駅を目指す。そこから日比谷線で築地まで出ることにした。
地下鉄に乗り、再びスマートフォンでウェブサイトを見る。ブライダルのページなんかもあって、本当にそういう、きちんとした席を設けるときのためのお店なんだなと思うと、余計何か大石先生に挑まれているような気がした。大きなため息が出る。
そこに藤川先生からメッセージが届いた。
「長谷、今日帰り様子おかしかったけど本当になんでもない?また風俗の子呼んでおれの代わりにしたりしてないよね?そういうのおれにもその子にも失礼だからやめなよ?」
あぁ、やっぱ怒ってる。てか先生おれのことそんなふうに思ってるんだな。そりゃ関係持つ前にあんなこと言われたら、そう思うのもしょうがないか。
「そんなことしませんよ、ジム寄って帰ります」
会員証の写真を添付して、通ってるジムのウェブサイトのURLをつけて返信した。すると暫くして返信が届いた。
「長谷、水球やってたから泳げるでしょ。今度教えてったら付き合ってくれる?」
語尾に、困った顔のタヌキの絵文字がついている。あれ?こういうの使わないんじゃなかったでしたっけ。
「先生カナヅチなんですか?」
「うん、自転車も乗れない」
また困った顔のタヌキがついてきた。かわいい。
「いいですよ、おれでよかったら練習付き合いますよ」
タヌキがバンザイして「よろしく!」と言っているスタンプが飛んできて、そこで一旦会話が終わった。
スタンプ使うことないって言ってたのに、気にして態々あのあと購入して、おれに初めて使ってくれたのかと思うと、嬉しくて愛しくて、顔が緩んでしまう。もう一度戻って先生を抱きしめたくなる。
そうこうしている間に、地下鉄は築地に到着した。覚悟を決めて降りなければいけない。
大石先生、いったい何を企んでいるんだろう。
そう言えば水炊きって言ってたな、と思いそのまま上部のリンクから料理のページを開くと、そこには一子相伝と仰々しく書かれていて、お値段は最安でも居酒屋の水炊きコースの10倍だった。嘘でしょ、こんなん食べたら給料日まであとはモヤシで暮らさないと詰む。
大慌てで大石先生にこんな値段払えないと送ると「ごちそうするから気にしなくていいよ。おれ普段食事にカネとか時間掛けられないから本業休みの日はいいもの食べたいし付き合って。あと此処料亭で個室だし、介添え断ればゆっくり落ち着いて話せるよ」と返ってきた。
料亭なんか初めてなんですが。というか、皆さん、気前が良すぎるのでは?小曽川さんと食べたディナーだって決して安くはない、あれだって5桁のはず。寧ろ凝った家には住んでるけど藤川先生が一番贅沢してないというか、庶民的ですらある気がする。
再びウェブサイトを見ると、上部リンクには「お部屋」という項目がある。個室って言ってたのはコレか、と思いリンクを開く。そこで驚愕の事実を知った。お料理のお代と、お部屋代は別なのだ。2名様13,200円からとある。完全におれの知らない世界だ。
そして、小曽川さんが言っていた「大石先生企んでるかもしれませんね~」「あの人のこと絡むと、いきなり性格悪くなる」という言葉が脳裏に巡る。
どうしよう、おれはハメられているんだろうか。怖くなってきた、帰りたい。足取りが一気に重くなる。しかし今更急にやっぱり今日はやめましょうとも言えない。現地まで歩くのを諦めて、引き返して神谷町駅を目指す。そこから日比谷線で築地まで出ることにした。
地下鉄に乗り、再びスマートフォンでウェブサイトを見る。ブライダルのページなんかもあって、本当にそういう、きちんとした席を設けるときのためのお店なんだなと思うと、余計何か大石先生に挑まれているような気がした。大きなため息が出る。
そこに藤川先生からメッセージが届いた。
「長谷、今日帰り様子おかしかったけど本当になんでもない?また風俗の子呼んでおれの代わりにしたりしてないよね?そういうのおれにもその子にも失礼だからやめなよ?」
あぁ、やっぱ怒ってる。てか先生おれのことそんなふうに思ってるんだな。そりゃ関係持つ前にあんなこと言われたら、そう思うのもしょうがないか。
「そんなことしませんよ、ジム寄って帰ります」
会員証の写真を添付して、通ってるジムのウェブサイトのURLをつけて返信した。すると暫くして返信が届いた。
「長谷、水球やってたから泳げるでしょ。今度教えてったら付き合ってくれる?」
語尾に、困った顔のタヌキの絵文字がついている。あれ?こういうの使わないんじゃなかったでしたっけ。
「先生カナヅチなんですか?」
「うん、自転車も乗れない」
また困った顔のタヌキがついてきた。かわいい。
「いいですよ、おれでよかったら練習付き合いますよ」
タヌキがバンザイして「よろしく!」と言っているスタンプが飛んできて、そこで一旦会話が終わった。
スタンプ使うことないって言ってたのに、気にして態々あのあと購入して、おれに初めて使ってくれたのかと思うと、嬉しくて愛しくて、顔が緩んでしまう。もう一度戻って先生を抱きしめたくなる。
そうこうしている間に、地下鉄は築地に到着した。覚悟を決めて降りなければいけない。
大石先生、いったい何を企んでいるんだろう。
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