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【2020/05 友よ】
《第3週 火曜日 午後》④
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その勢いに負けて床にへたり込みそうになったが、長谷が素早く駆け寄って肩を抱きかかえて支えた。
「すみません、大丈夫ですか」
「これが大丈夫に見えるか?」
おれは斜め後ろに倒れかかったまま長谷の顔を見上げて言った。体を起こして、ふらつく足取りのままソファに向かい、そのままソファに、毛布の上から倒れ込んだ。今ので完全に電池切れになった。だめだもう動けない。
長谷はというと、おれの傍らで立ち膝のままオロオロしている。膝が汚れるからおれのデスクから椅子持ってきなよ、と言いたいけどその気力ももうない。
そうこうしている間に扉をノックする音がした。無言で指差して長谷に出るよう指示する。ハルくんが頼んでくれたマックのデリバリーだ。受け取って、紙袋の中から品物を取り出してテーブルに並べてくれたが起きられない。
「先生、氷溶けちゃうんでアイスティだけでも飲みませんか」
ストローを刺して口元にあててくれたので、有り難くいただく。数口飲んで、紙コップを受け取って自分の腹の上に載せた。
「アップルパイ2個もありますけど、お好きなんですか?こっちのカップはなんだろ、えだまめコーンか。先生、おれたちにいいもの買ってきて自分はコレってよくないですよ?ほとんど栄養ないじゃないですか」
心配そうにこちらを見下ろしている長谷がちょっとかわいい。やっぱりちょっと大型犬の子犬っぽい。
「長谷、おれにえだまめ食べさして」
カップの蓋を外して、プラスプーンに半分位の量を掬い、寝転んだままのおれの口元に持ってくる。
「はい、あーんしてください」
慎重に入れようとしすぎて、却って勢いのなさが原因で何粒か口元を外れてポロポロと転がり落ちた。極端すぎる。さっきの勢いは何処に行ったんだ。吹き出して気管に入ったり鼻に入ったりしそうだけど笑ってしまう。
「ひどい、先生が食べさせろって言ったんじゃないですか」
「ふふ、ごめん。てかなんであんなノックもしないで飛び込んできたの」
長谷の目が一瞬ちょっと泳いだ。そしてその時右側のやや上に目線があった。これから言うことはおそらく嘘だ。
「いや、小曽川さんが、こういうときの先生は危ないって言うから、心配になって」
「ふーん、なるほどね」
腹の上をテーブル代わりにしてえだまめコーンと食べ、時折アイスティで流し込み食事を済ませた。空になったカップやスプーン、残ったアイスティをテーブルに置いて、立ち膝のままおれを見下ろす長谷に近くに来るように言った。
「もっとだよ」
肩に手をかけて、引き寄せて抱きつくと、ハルくんとは違う、クミンのようなあのいい匂いがする。厚みのある背中とか高い体温もハルくんとはまた違う安心感があって心地よかった。
「先生?あの、やっぱ、ここでこういうのは」
戸惑うところも変に慣れてなくて、擦れてなくてかわいい。いや、なかなかえげつないプレイすることも風俗狂いだってのも知ってはいるんだけど、所謂「おつきあい」とか「いちゃつき」に慣れていないこの感じがかわいい。
「あのね、それ、大石ハルくんの差し入れなんだ」
「えっ」
あ、当たった。やっぱハルくんとの関係知って慌てて飛んできたな。南のやつ何処まで喋ったんだろ。
「ふふ、大丈夫、何もしてないよ。心配して様子見に来て、デリバリー頼んでくれただけだから」
長谷の側頭部の弱いところを指先を立てて優しく撫でると、おれの耳元で震えて甘い声を漏らした。
「すみません、大丈夫ですか」
「これが大丈夫に見えるか?」
おれは斜め後ろに倒れかかったまま長谷の顔を見上げて言った。体を起こして、ふらつく足取りのままソファに向かい、そのままソファに、毛布の上から倒れ込んだ。今ので完全に電池切れになった。だめだもう動けない。
長谷はというと、おれの傍らで立ち膝のままオロオロしている。膝が汚れるからおれのデスクから椅子持ってきなよ、と言いたいけどその気力ももうない。
そうこうしている間に扉をノックする音がした。無言で指差して長谷に出るよう指示する。ハルくんが頼んでくれたマックのデリバリーだ。受け取って、紙袋の中から品物を取り出してテーブルに並べてくれたが起きられない。
「先生、氷溶けちゃうんでアイスティだけでも飲みませんか」
ストローを刺して口元にあててくれたので、有り難くいただく。数口飲んで、紙コップを受け取って自分の腹の上に載せた。
「アップルパイ2個もありますけど、お好きなんですか?こっちのカップはなんだろ、えだまめコーンか。先生、おれたちにいいもの買ってきて自分はコレってよくないですよ?ほとんど栄養ないじゃないですか」
心配そうにこちらを見下ろしている長谷がちょっとかわいい。やっぱりちょっと大型犬の子犬っぽい。
「長谷、おれにえだまめ食べさして」
カップの蓋を外して、プラスプーンに半分位の量を掬い、寝転んだままのおれの口元に持ってくる。
「はい、あーんしてください」
慎重に入れようとしすぎて、却って勢いのなさが原因で何粒か口元を外れてポロポロと転がり落ちた。極端すぎる。さっきの勢いは何処に行ったんだ。吹き出して気管に入ったり鼻に入ったりしそうだけど笑ってしまう。
「ひどい、先生が食べさせろって言ったんじゃないですか」
「ふふ、ごめん。てかなんであんなノックもしないで飛び込んできたの」
長谷の目が一瞬ちょっと泳いだ。そしてその時右側のやや上に目線があった。これから言うことはおそらく嘘だ。
「いや、小曽川さんが、こういうときの先生は危ないって言うから、心配になって」
「ふーん、なるほどね」
腹の上をテーブル代わりにしてえだまめコーンと食べ、時折アイスティで流し込み食事を済ませた。空になったカップやスプーン、残ったアイスティをテーブルに置いて、立ち膝のままおれを見下ろす長谷に近くに来るように言った。
「もっとだよ」
肩に手をかけて、引き寄せて抱きつくと、ハルくんとは違う、クミンのようなあのいい匂いがする。厚みのある背中とか高い体温もハルくんとはまた違う安心感があって心地よかった。
「先生?あの、やっぱ、ここでこういうのは」
戸惑うところも変に慣れてなくて、擦れてなくてかわいい。いや、なかなかえげつないプレイすることも風俗狂いだってのも知ってはいるんだけど、所謂「おつきあい」とか「いちゃつき」に慣れていないこの感じがかわいい。
「あのね、それ、大石ハルくんの差し入れなんだ」
「えっ」
あ、当たった。やっぱハルくんとの関係知って慌てて飛んできたな。南のやつ何処まで喋ったんだろ。
「ふふ、大丈夫、何もしてないよ。心配して様子見に来て、デリバリー頼んでくれただけだから」
長谷の側頭部の弱いところを指先を立てて優しく撫でると、おれの耳元で震えて甘い声を漏らした。
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