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【2020/05 命令】
《第3週 火曜日 朝》②
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大石先生の授業が終わり、終業後に連絡を取り合って何処かで適当に落ち合おうと約束して教室を出た。その際に「くれぐれもアキくんには内密にね、これは命令だよ」と念を押された。何故だろう。おれと大石先生が仲良くなると何か先生にとっては不都合なんだろうか。
スマートフォンをポケットから取り出してみると着信履歴とメッセージの通知が示されている。先生からだった。「父が一時危険な状態だったので病院に来ています、また追って連絡します」と書かれていた。
こないだ新宿で捕まえたときはお母さんと会ってたと言っていた気がする。そういや、お父さんのことは話していなかった。ご存命なのか。いや、でも病院ってことはどこかお悪いのか。
書庫に戻ると、小曽川さんは引き続き淡々と仕事をしていた。
「戻りました。先生から病院にいるって連絡をもらったんですが」
「おかえり~、おれもそれさっき見た。おじさん、先生が教授なれるまで生きててほしいなあ…」
小曽川さんから、先生のお父さん、養父である藤川英一郎氏は10年前にパーキンソン病を発症、薬が合わなかったこともあり転倒や誤嚥を繰り返しながら状態が年々悪くなり、ここ3年ほど前には経鼻経管栄養で、週に3回午前中にリハビリを受ける以外、ほぼベッドに寝たきりだと聞いた。
「意思はあるのに声出したり表情動かしたりもままならないからね、気の毒だよね」
そういや、小曽川さんが先生のもとで働くことになったとき、連れてきたのが藤川先生のお父さんだったと聞いた気がする。しかもこないだ、監視役を兼ねていると。
「小曽川さんって、藤川先生のお父さんに連れられて先生のとこに来たんですよね?」
「うん、そう」
二限が終わってお昼休みになっていることに気づいたのか、鞄からいそいそとお弁当を出して、暢気に食べ始める。教室から戻るときに何か買ってくればよかった。
小曽川さんのお弁当の中身は、丁寧に炙って小さく切った海苔にだし醤油を染み込ませて載せた海苔ごはん、ピーマンの肉詰め、しいたけの肉詰め、ほうれん草の入った卵焼き、赤パプリカとセロリの漬物、しめじとベビーホタテのバターソテー。別添で練乳がかかったいちごのスライス。小さい無添加野菜ジュースのパック。
もう、見るからに栄養豊富でおいしそうだ。こんなの毎日作ってるのはすごい。フルタイムで、残業もそこそこしてるみたいだしいつやってるんだろう。ある程度作り置きしてるんだろうか。
「小曽川ってこの大学の職員じゃないんですか?」
「や、非正規だけど一応助教だし常勤職員だよ~」
おいしそう、というか実際においしいのだろう。小曽川さんは昨日ホテルで食事したときよりもうれしそうに、楽しんで食べている。
「強引に捩じ込まれたって言うから、小曽川さんの親御さんから藤川先生の親御さんにでも雇ってもらってるのかと思ってました」
「まあ、確かに強引にうちの親が働かせてやってくれって捩じ込んだのは事実だけど、おじさんあんま関係ないよ」
そういや、自炊なんてここ暫くしたことがなかったな。先生の家でパン焼いたくらいだ。自分で作ったカレーとか食べたくなるときもあるけど、働いた後だと片付けが面倒でやる気になれないんだよな。でもいいなあ、ちゃんとしたごはん。
「でもこないだ監視役って」
「うちの親が俺に監視しろって言っただけでそこにはインセンティブが何も発生しないんだよ~、ひどくない?タダ働きなの」
口を尖らせながら言うと野菜ジュースのパックにストローを突き立てて、あっという間に啜って箱を潰した。
スマートフォンをポケットから取り出してみると着信履歴とメッセージの通知が示されている。先生からだった。「父が一時危険な状態だったので病院に来ています、また追って連絡します」と書かれていた。
こないだ新宿で捕まえたときはお母さんと会ってたと言っていた気がする。そういや、お父さんのことは話していなかった。ご存命なのか。いや、でも病院ってことはどこかお悪いのか。
書庫に戻ると、小曽川さんは引き続き淡々と仕事をしていた。
「戻りました。先生から病院にいるって連絡をもらったんですが」
「おかえり~、おれもそれさっき見た。おじさん、先生が教授なれるまで生きててほしいなあ…」
小曽川さんから、先生のお父さん、養父である藤川英一郎氏は10年前にパーキンソン病を発症、薬が合わなかったこともあり転倒や誤嚥を繰り返しながら状態が年々悪くなり、ここ3年ほど前には経鼻経管栄養で、週に3回午前中にリハビリを受ける以外、ほぼベッドに寝たきりだと聞いた。
「意思はあるのに声出したり表情動かしたりもままならないからね、気の毒だよね」
そういや、小曽川さんが先生のもとで働くことになったとき、連れてきたのが藤川先生のお父さんだったと聞いた気がする。しかもこないだ、監視役を兼ねていると。
「小曽川さんって、藤川先生のお父さんに連れられて先生のとこに来たんですよね?」
「うん、そう」
二限が終わってお昼休みになっていることに気づいたのか、鞄からいそいそとお弁当を出して、暢気に食べ始める。教室から戻るときに何か買ってくればよかった。
小曽川さんのお弁当の中身は、丁寧に炙って小さく切った海苔にだし醤油を染み込ませて載せた海苔ごはん、ピーマンの肉詰め、しいたけの肉詰め、ほうれん草の入った卵焼き、赤パプリカとセロリの漬物、しめじとベビーホタテのバターソテー。別添で練乳がかかったいちごのスライス。小さい無添加野菜ジュースのパック。
もう、見るからに栄養豊富でおいしそうだ。こんなの毎日作ってるのはすごい。フルタイムで、残業もそこそこしてるみたいだしいつやってるんだろう。ある程度作り置きしてるんだろうか。
「小曽川ってこの大学の職員じゃないんですか?」
「や、非正規だけど一応助教だし常勤職員だよ~」
おいしそう、というか実際においしいのだろう。小曽川さんは昨日ホテルで食事したときよりもうれしそうに、楽しんで食べている。
「強引に捩じ込まれたって言うから、小曽川さんの親御さんから藤川先生の親御さんにでも雇ってもらってるのかと思ってました」
「まあ、確かに強引にうちの親が働かせてやってくれって捩じ込んだのは事実だけど、おじさんあんま関係ないよ」
そういや、自炊なんてここ暫くしたことがなかったな。先生の家でパン焼いたくらいだ。自分で作ったカレーとか食べたくなるときもあるけど、働いた後だと片付けが面倒でやる気になれないんだよな。でもいいなあ、ちゃんとしたごはん。
「でもこないだ監視役って」
「うちの親が俺に監視しろって言っただけでそこにはインセンティブが何も発生しないんだよ~、ひどくない?タダ働きなの」
口を尖らせながら言うと野菜ジュースのパックにストローを突き立てて、あっという間に啜って箱を潰した。
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