Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【Ἔρως(Erōs)】

《第二週 日曜日 朝》③ (*)

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「で、どっちが良かった?」
「先生本人に決まってるじゃないですか」
大きな手でおれの頭を包んで胸元に押し付けるように抱きしめられ、息が詰まる。微妙に息苦しいが、その圧迫感や重みが妙に心地よい。その気持ちよさに浸っていたら長谷が昼過ぎには帰ると言うので、おれはゴネた。
膝立ちになり強引に長谷の顔を両手で押さえつけて唇を重ね、舌を差し入れて上顎を探った。ピアスのボールが歯の裏側に当たり、乾いた音を立てる。長谷の手がおれのベルトにかかり、金具を外す。
「先生、ピアスつけた舌でなめられるの気持ちいいけど、ピアスしたとこって痛くないんですか?」 
「別に、ホール出来上がってかなり経つし痛くないよ」
シャツのボタンを外しながら答えて、胸元を開くと長谷の顔が近づいた。舌先がカフスバーベルの飾りごと表面を掠め、そのまま唇に含む。強弱をつけて吸われ、ボトムを下着ごとずらして骨盤周りを擽られて、体が反応する。
長谷の頭を指を立てて、指先で撫でる。首筋や耳元まで探ると、体を震わせて息を吐いて、おれの体を抱きかかえてひっくり返し、ソファに沈めた。
「ごめんなさい、昨日あれだったし、もうやめとこうと思ってたんですけど、無理」
上半身裸になっておれに覆いかぶさり、肩口を甘咬みして強く吸い付く。
「朝は拒否ったくせに」
態と意地悪く言うと「そうやって困らせないで」と懇願して額や頬に何度もキスしたついで、顎先から唇、小鼻の横から頬を通って額までベロンと舐め上げた。びっくりしすぎて目を剥いて固まっていると、それを見た長谷が声を上げて笑った。
「お前ぇ、犬じゃないんだからやめなそういうの~」
「はは、おかえしですよ、反省してください」
おれの服を脱がせながら体中に舌を這わせ、口づける。それこそ普段人前に晒さない場所から、手指の先、爪先まで。手をとって手の甲に恭しく口付けられるなんてこと、今まで数多の男に抱かれる中であっただろうか。ハルくんでさえそんなことしてないんじゃないか。異文化だ。
一頻り口づけ終えて、体を起こして長谷がソファから一旦降りて穿いていたものを脱いだ。おれも一旦ソファの上で体を起こす。長谷の手を引いて自分の前に立たせ、既に存分に昂りこちらを向いている先端を口に含んだ。サイズ的に喉奥まではとてもじゃないが入らない。
それでも手で他の部位を扱き、擽りしながら舐っていると脈打ってその硬度は高まっていく。長谷の手が包むようにおれの頬を撫で、頭を撫でる。更に顔を傾けて往復させて舐めると、おれの肩を掴んで引き剥がした。
「先生、挿れていい?」
「いいよ、おいで」
おれはソファの肘掛けの部分に頭を載せ、俯せのまま膝をついて腰を高く上げた。肉壁を指で押し拡げて隠れていた暗部を開き、襞に濡れた舌を這わせ、その奥に差し入れて解すように内側から探る。柔くなったそこに指で少し開かせながら先端を押し込む。
ゆっくりと息を吐くと、一度受け容れてその感覚を覚えている体は難なくエラの張った先端を飲み込み、その後の奥まで滑り込む間の長いストロークを愉しんで味わっていく。突き当りまでみっちりと満たされたところで長谷が上から覆いかぶさり、おれと体を密着させる。
背中越しに拍動が伝わり、息荒く耳元で低く呻くのが聞こえる。奥深くにグリグリと押しつけながら擦り付け、何度も体を震わせている。中でいっそう膨張は増し、脈打って中で先走りを零しているであろうとことが十分感じ取れた。それでもなかなか動こうとしない。
昨日の出血がそんなにショックだったのか。よくあることだろうに。そんなに張り詰めてるのに何を我慢することがあるものか。あとひと押ししてやらないとダメか?左の腕を長谷の頭まで上げて、髪を掴んで引き、骨盤の底の筋肉を意識的に動かして中の物を締め上げた。
「何今更怖気づいてんだよ、やれねえなら降りろよ。言っただろ、捨てろよ、理性とか良心とか」
一瞬内に引き込むのに逆らって引き抜く感触がして、直後、奥まで一気に突き上げられ、その勢いで肩がソファの肘掛けに激しくぶつかった。髪の毛を引いていたおれの手を頭から引き剥がして、後ろに強引に折り曲げて拘束すると、繰り返し激しく腰を打ち付けた。
恥骨の裏側をそのやや上まで重量感と熱を持った塊が蠢き、その奥を何度も抉るように突き上げる。その圧で突かれる度に横隔膜が押し上げられ中の空気がえづくような声とともにみっともなく吐き出させられる。
中から抉じ開けられ、突き上げられて生じる鈍い痛みと、同時に襲いくる切ない甘い疼きで下半身は否応なく本能的快楽に目覚めていく。不随意に内部をひくつかせて、より深く交わるべく腰を上げて振る。自分の意志とは関係なく発情したメスの動きになる。
おれの耳元で長谷がうわ言のようにおれを呼んでいる。髪の毛を伝って落ちた汗が滴り、ソファを濡らし滲んでいくのが見えた。長谷は右の腕をおれの胸の下に潜らせて左の肩を掴んで強く引き、全身を慄かせ、嘶くように声を震わせながら達した。
左腕がようやく解かれるとともに、息つく間もなく内部から引き抜いて仰向けに体を返される。開いた後孔から中で放たれた体液が溢れ、ソファを汚した。高く脚を持って肩近くで折り曲げ、身動きが取れない状態の上から体重をかけて、その重みで再度深くまで押し入る。実際は誤差程度のはずだが、体勢の違いでさっきよりも深く感じる。
抜き差しする度に突き当り手前の襞で先端を捉えて引っかかる箇所があって、内部で音がする。その都度、言語にし難い切なさと度し難い強い快楽で脳が支配され、何も考えられなくなっていく。声を上げて長谷の肩にしがみついて、律動に合わせて腰を振って交わる。
長谷がおれの頭を押さえつけて、やや上を向かせて開いた口に舌を捩じ込んでくる。只でさえ鼻からの呼吸がしにくい体勢のまま、口腔内を厚みのある舌が席巻し、上顎を、舌下を探り、呼吸を妨げる。半窒息状態のせいか意識が薄れ、下半身の感覚だけ取り残されたかのように際立つ。
強引に顔を逸して逃れるが、感覚が戻らない。受け容れている内部が激しく痙攣し、咥えこんだ長谷のものを締め付ける。
「も、長谷のでおなかの奥おかしくなる、いく」
「いいよ、おいで」
頭を押さえつけてた手が、後ろから包むように頭を支えて胸元に寄せる。動物を撫でるように髪の毛をワサワサと掻き乱しながら撫でる。声が周囲に響かないよう、長谷の胸に押し付けて声を上げた。押し寄せた昂りを煽るように動きは早くなる。止むこと無く波のように繰り返し襲い来る快楽で言葉が発せない。鳴き声に近い声しか出ない。
波が引く度に体の力は入らなくなっていき、長谷にしがみついていることもできなくなった。崩れ落ちるように腕がソファに落ちるのを見て、長谷はようやく満足げな顔をしておれから離れた。しかしその後も上からおれを見下ろしたまま、おれの胸の膨らみを指で転がしたり、脇腹や腿を擽ったり、休むことなく煽ってくる。
「ねえ先生、ピアスしてるとこって感度上がるって聞いたことあるけど本当?」
知らないよ、お前どこで聞いてきたんだそんな話。
言い返したいがとてもじゃないが喋れる状態ではない。
「先生が落ち着くまで、帰るのは待ってあげるね」
うっすら汗をかいている額にキスして、改めておれの頭を撫でた。
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