Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【Ἔρως(Erōs)】

《第二週 土曜日 夜》④ (*)

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そう言うと、更に先端を一旦引いて、それまで挿れられていたところの少し手前を突いた。僅かに引っかかる感触が有り、そこに先端がめり込む。
「…やだ、まって、だめ」
「散々煽って焦らした罰だよ、根本まで浸らせて」
そう云うや、痛みとともにずぶりと先端が抜けて、最奥の更に中まで入り込んだずんと重いものが悦びにのたうった。
「痛い、やだ、ぬいて」
「だめ、しばらくこのままにして、おれの感触とか挿れたときの感覚、ちゃんと先生に憶えさせるよ」
唇を塞がれ、存分に唾液と舌を与えられながら、腹の中からは脈打つ肉茎の感触を味わわされる。その間も手はやさしくおれの頬や頭を何度も撫でた。
次第に、中を解すように少しずつ長谷は腰をゆすりはじめ、その体がおれに覆いかぶさる。動きが少しづつ大きくなり、おれは腹の奥と入口に鈍い痛みを感じながらも、中を拓かれ、探られる快楽も大きくなっていくのを感じていた。長谷の肩に縋るようにしがみついて、声を漏らして自ら腰を振った。
その肩の辺りから首筋、頬や耳まで紅潮させて、長谷が余裕ない表情で、目を潤ませておれを見つめながら何度も啄むようにキスする。かわいいな、おれのことなんか好きになったらだめだよ。おれも長谷の頬や耳元、首筋に何度もキスして、舌を這わせた。
やがて今度は長谷のほうが先に達し、おれに強くキスして、舌を絡ませながら、最初の絶頂より長く、全身をびくびくと何度も繰り返し震わせて、深い恍惚感に浸りながらおれの中に再び精を注いだ。そのまま力尽きておれの上に倒れ込んで思い切り潰されたが、その重みが妙に心地良い。
しばらくして、力を振り絞るようにして腕の力で上半身を起こして、おれの内部からものを引き抜くと、溢れ出た体液を見て長谷がすっと青ざめた。自分の手で拭ってみるとにピンク色のものが混じっていた。
「ご、…ごめんなさい…」
急に畏まって正座して、青白い顔でぷるぷる震えている様子が、ついさっきまでと様子が違いすぎて、そして、やっぱり叱られた大型犬の子犬みたいで、おれは吹き出してから声を上げて笑ってしまった。さっきまでのアレは何だったのか。余韻もムードもあったものではない。
「先生ひどい、そんな笑わなくたっていいじゃないですか…」
凹む長谷の横を膝立ちで這っていき手を伸ばし、ゲーム機の並んだテレビ台の脇から箱ティッシュを出して、数枚引き抜いて後孔を拭ってから、もう数枚丸めて当てた。後ろから抱きついて耳元でからかう。
「血を見る覚悟もなく処女もらうとか言ったの?若いねえ」
再びまた肩口から耳まで真っ赤に紅潮する。赤くなったり青くなったり、忙しいやつだな。
「いいよ、おれ洗ったついでに風呂にお湯張ってくるから休んでな」
立とうとしたら、まだ回復しきれていないのか、少しよろけた。長谷が素早く反応して、おれの体を支える。
「先生もちょっと休んでからのほうがいいですよ」
クッションを並べて、おれを寝かせてからその横に長谷も横たわった。腕枕してもらうと、うっすらクミンのような匂いがする。
「そういえばなにか飲み物ってありますかね…冷たいもの飲みたくなっちゃいました」
「氷だけは買ってストックしてあると思うけど、あと浄水ポットに水はあるんじゃないかな」
横顔を見ると、やっぱ骨格が、目の色が、日本人っぽくない。髪の毛も光に透けると本来もっと明るい色だというのが何となく分かる。
「風呂上がりにアイスでも買いに行こうか」
こちらを向いて長谷がおれの額に、瞼にキスした。
「今食べちゃったら動いた分が台無しになりますよ」

先生が中を洗うついでにお風呂の準備をしに行って、おれは先生が出してくれた本をパラパラと見ていた。気軽にくれたが、どれも値段が4000円くらいからで、教科書なんかは8000円とかとんでもない価格がついていた。
おれは見学の機会がなかったら、大学には行ってないし、大学での履修の仕組みやどのくらい費用がかかるかなんて知ることはなかったかもしれない。寄稿した雑誌なんかも1200円とか1500円とかで、3桁のものはまず無い。
「長谷、もういいよ、入れる」
ドアの向こうから声をかけられて廊下に出る。脱衣所からバスルームを覗くともう先生はひとり悠々と楕円形のバカでかい浴槽に、モコモコの泡風呂を作って、テレビを観ながら浸かっていた。思わずおれは言った。
「これ、完全にラブホじゃないですか…」
「なんだよ、風呂場は広くて暖かくて長く楽しめるに越したことないだろう?」
床は弾力性のある柔らかく暖かい素材で、天井に空調もあって寒くない。洗濯物が干せるようにもしてある。
「いいなあ、うちなんてせっまいユニットバスですよ、おれ図体でかいからやりづらくてしょうがないですもん」
シャワーを出してざっくりと全身を洗う。ボディソープはみずみずしい百合の香りがした。
「もうちょっと郊外の広いところ借りたらいいのに、安定した職なんだしさ」
「いやあ、それがねえ…」
言葉を濁しているとニヤニヤして先生が「もしかして、せっかく賞与がある仕事しているのに風俗でお金使いすぎて引っ越すほど貯金がないとかですか長谷くんは」と意地悪く言った。
「…仰るとおりですよ…」
「え…マジ…?」
全身を流したあと、シャワーの水圧を上げて水流を先生に向ける。先生は咄嗟に両手を出して直撃を避けた。
「なんだよお、事実なんじゃん」
シャワーを止めて浴槽に向かうと、先生がそそっと端に寄っておれが座る場所をあけてくれた。向かい合わせに脚を伸ばして入る。
「正直今日、先生の家に来たらすーごく便利で快適で羨ましくなっちゃいました、次更新しないで此処に引っ越してきたいくらいですもん」
「ふぅん、そんなに?住みたい?」
泡を手にとってモシャモシャ遊びながら、先生がおれの顔を見ている。かわいい。かわいすぎて、改めてめちゃくちゃにしてしまいたくなる。
「住めるものだったら住みたいですね、先生と一緒にいられるし」
あんなことをした後なのでなんとなく罪悪感も有りつつ、気恥ずかしくなって下を向いた。暫く沈黙が続いて、ちゃぷんと水音がした。気づいたらすぐ目の前に、先生の顔があった。
「じゃあ来れば」
「え?」
おれの首に腕を回して絡みついて、股の上に跨り、上半身を預けて凭れかかってくる。
「おれ多分なんだかんだであまり家にはゆっくりいないから、ご期待には添えないかもだけど、もったいないから好きに使っていいよ?」
泡風呂特有の保湿成分のぬめりけを含んだお湯が肌の触れる感触を増幅し、再び修まりかけていた欲求が湧き上がる。先生の腿から尻、腰から背中へと指を這わせ、脇腹を通って胸の先を指先で転がした。
先生はおれの耳介を甘咬みしながら、普段とは違う、臆病な小動物の鳴き声のように小さな嬌声を発し、それが浴室にが反響する。
一度体を引き剥がし、浴槽が設えられたタイル貼りの縁に手をつかせて、後ろから挿入する。体を抱き起こして反らせて、右手で薄く細い体を手で撫で回し、下腹部にある飾りがついた控えめな花芯を苛んだ。
中で快楽を齎す器官が膨らみ、受け容れたものを程よく圧迫する。奥の方は刺激に合わせて反応し、吸い付くように収縮を繰り返す。先程傷つけてしまったことを思い出して、激しく抱いてしまいたい衝動を抑えて、加減して腰を動かす。
先生がおれの左手を両手でとって、握りしめて頬に寄せる。
先生は、おれを切らないんだろうか。
本当にこの家に受け入れてくれるつもりなんだろうか。
可愛らしく小さく喘いでいた先生が、仰け反って体を震わせて、おれの手の中で吐精する。量も少なく薄く粘度の低いそれが滴って、手から零れ落ちて泡の中に消えていった。
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