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【Ἔρως(Erōs)】
《第二週 土曜日 夜》③ (*)
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背中を離れ、ゆっくりとした足取りでおれの前に回り込む。しゃがんでやや下から小首を傾げておれの顔を見る。
「おれもね、終わるまではダメだ、あくまで仕事として全うしようって思ってたよ。でも気が変わった。なんでだと思う?」
なんでって言われても。
「おれが先生のこと割とあからさまにそういう目で見てたから、以外に何かあるんですか?」
「あるよ」
囁くように言って引き抜いた小指を舐める舌に、いつの間にか路上で捕まえたときにはついていなかったはずのピアスが見えた。
腕を伸ばしておれの首に手をかけると、そのまま傾れ込んで体を預け、おれを押し倒した。小さな整った顔が直ぐ目の前に迫り、やや切れ長の大きな目があやうさを孕んで潤んで光っている。
「先生って、ほんときれいなかわいい顔してますね」
「きれいなのは当たり前だよ、作り物だからね。但、」
整形なのか。でも元がそれなりに良いか、どこかきれいなパーツが他にないと全体的に不自然さのないきれいな収まりにはならないんじゃないだろうか。
「但、なんですか?」
「通常はきれいに整えることでコンプレックスを取り除くためが多いと思う、おれはそのための技術を別の目的のために頼っただけで、きれいにするつもりでやってないから褒められると居心地が悪いんだ」
そう言うと、先生はおれの胸に耳を当てるようにして、おれの顔から顔を逸した。
「なんでですか、おれは今の先生の顔好きですよ。作り物で、何がいけないんですか」
カールした柔らかい髪に左の手を載せてそっと頭を撫でる。きゅっと目をきつく閉じて、先生が小さく声を漏らした。なんだ、先生も撫でられるの弱いんじゃないか。
右手で横を向いた先生の顔、頬に触れてそっと持ち上げてこちらを向かせた。
「先生、先生は今日のことは今日のことで済まそうとしているでしょ?でも、おれ、重い男なんですよ。多分しちゃったら先生のこと諦められなくなりますし、周りに隠し通すとかできないですよ、普通に見学終わっても彼氏面で先生の研究室やこの部屋に来ますよ、一緒に暮らしたいとか言い出しますよ、いいんですか」
「いいよ、でも多分、長谷はおれのこと知れば知っただけ幻滅すると思うけどね」
白いラグに手をついておれの腹の上に跨ったまま身体を起こすと、先生は改めて上からおれを見下ろして言った。そしてゆっくりと袖から腕を抜き、服を脱いだ。少年のような薄い胸に、乳頭に前回見たものとは違う飾りのついたカフスバーベルが煌めいている。
上半身をゆっくり倒し、おれの顔に再び近づく。互いの目と目しか見えないほど近づいたとき、ぱちんと音がして先生の前髪が崩れ、顔にかかった。
「長谷はおれの身体を見てるとき、何考えてた?どう思ってた?」
先生の華奢な手が後ろ手におれのものを撫で擦る。不随意に腿は痙攣し、情けないほど正直に反応する。
「そりゃあ、誰にどんな顔でそんなことさせてるのかと思ったら、触りたかったですよ」
正直に告げると、先生が微笑んだ。
「触っていいよ、どんなふうにでも」
おれは先生の肩を抱いて、抱えるようにして体勢を返し、そっと寝かせた。
一旦押し倒したのをひっくり返された。逆光に曝されておれを見下ろす長谷の目は、もう校内でおれを見ていたときのような戸惑いを含んでいなくて、情欲で満ちて恍惚とした、畏怖を感じさせる獣のオスの目だった。
その顔が性急に首筋に近づき、まだ他の男がつけた痕が残っている肩口の柔い部分に歯を立てて甘咬みする。呼吸は獲物を屠る猛獣のように息荒く、その吐息と唇がひどく熱い。食われているみたいだ、と思った。
厚みのある健康的な朱い舌が首筋をずるりと撫で上げてから、耳介内側の溝に這う。大きな手はその指先を立てて脇腹から腹斜筋周りをそろそろと擽り、返しては胸元の突起近くまで寄せる。繰り返される度おれは焦れてみっともなくお預けを食らった子犬のように声を漏らした。
満足そうに妖しく微笑んで、おれの頬を舐めあげてその鼻先でおれの前髪を掻き分け傷痕に口づけると、頬に、唇に啄むように何度もキスを繰り返した。舌を伸ばすとそれを咎めるように唇が押し返す。
おれの左の手首を掴んで、そっと上に持ち上げて動かない指先を口に含んで、手のひらに口づけてから、そのまま傷痕だらけでガタついたおれの腕のその傷跡を確かめるように舌でなぞり、そのまま二の腕に舌を這わせていき、そこで歯を立てて、強く咬みながらきつく吸った。
「い…いたい…はせ、痛い」
中々やめてくれないどころか、少し位置をずらして再び咬み付いた。
「先生、前から思ってたけどいい匂いがする、この匂い体臭?」
脇に顔を寄せて嗅ぐと、たまらないといった感じで舐めては匂いを嗅いでくる。
「やめなって、はずかしいってば」
「はずかしいの?他の人にはもっといやらしいこといっぱいさせてるんでしょ?ずるいそんなの」
再び唇を唇で塞ぐと、今度は厚みのある柔らかい長い舌を容赦なく口腔内に滑り込ませ、存分にその中を探る。舌下から上顎、歯茎の奥まで少しザラッとした感触の温かい肉の塊が這い回り、その隙間からとろりとしたものが流れ込んできて溺れそうになる。うまく息ができない。
流れ込んでくる生ぬるいそれをこくりと飲み込むと、愛おしげにおれの頬を親指の腹で撫でた。
空いた手でおれのボトムのスピンに手をかけて引いて解くと、アンダーと一緒に引き下ろす。少し腰を上げると一気に膝のやや下まで脱がされた。あとは足を引っ掛けてフットカバーともども自分で脱いだ。
長谷も一旦体を起こし、上半身裸になって、立ち膝でボトムとアンダーを下にずらすと、500mlのペットボトルに相当する長さと、自分の手首の側面、4~5cmほども太さのある凶器にも近いものが弾き出された。飴色で青筋立った、程よく反って王冠も目立つ、いやらしい形状。
こんなものを可愛い顔とスーツの下に隠して暮らしているなんて、不謹慎だなあ。いくらおれが慣れているといったって、相当慣らさないと裂けちゃうかも。勢いよく突かれたら吐きそう。根本まで入れたら結腸いっちゃうよなあ。全部飲み込んだらどうなるんだろ。
「先生、ほんとにいいの?これぶちこんだら先生壊れちゃうかもしれないですよ?」
「何言ってんの。それ、おれを想定して風俗の子にぶちこんだんでしょ?その子にはそうは思わなかったの?ひどいやつだな」
長谷はすべて脱いでから、上半身起こして笑っていたおれを再び押し倒し、脚を開かせてその間にある、まだ発達の途上のようなおれのささやかすぎるものに右の手を添えた。半勃ちのそれを包皮の上からやわやわと扱くと、その中にある異物感に気づき包皮を手繰り上げた。
まっすぐ横に貫くバーベルと、尿道を通って下に突き抜けたサーキュラーを見て、長谷の目の色が変わる。悪い意味ではなく、いい意味で。ありありと強く欲情している。それを目にした瞬間から幾度となく振れてる逸物からもその度合は明らかだ。
「なんでこんなかわいい身体に、こんなことしちゃうんですか」
「なんでだと思う?」
おれのものに添えられた長谷の手の上からおれも両の手を添えて上下に動かす。
「先生、今、おれ、すごく悪いことをしている気持ちです」
「なんで?」
答えは返ってこなかった。その代わり、空いている左の手が胸の上に置かれ、ピアスが貫通できるほどぷっくりと膨らんでいる右の乳頭の先を、中指の腹を触れるか触れないかのギリギリで転がすように撫で擦った。おれも左手を左の胸まで戻し、自分で左側の乳頭の先を同じように刺激する。
15も歳下の若い男にどうしようもなく欲情されて、はしたない姿を見られている事自体に、おれはひどく興奮した。早く長谷も理性なんか捨ててくれればいいんだ。めちゃくちゃにしていい。壊れる?上等だよ。とっくにおれは壊れているんだよ長谷。わかるだろう?
堪えきれず震えるおれのものと長谷の手の間にとめどなく透明でねっとりした体液があふれ、浸潤していく。同じ液体が長谷の屹立した肉塊の先端からも滴っているのが見える。おれにとってはどんな美食よりも甘美で贅沢で美味そうに見える。早くほしい、味わいたい。
「長谷、シックスナインしよ?ケツこっち向けな」
おれの顔を跨いだ時点で、長谷のものは顔にあたっている状態だった。恐る恐る長谷が振り返っておれに話しかけてくる。
「先生、あの、無理して咥えようとか思わなくていいですよ」
うん、まあ、そりゃあねえ。
顔を横にして、涎を垂らしている先端の窪みに舌を伸ばして擽るようにして舐めると、内腿が震えた。体格差が大きすぎて長谷はおれのものを舐めることができず、引き続き手でピアスが穿たれているおれの先端を弄んで、内腿や膕、膝まわりを甘咬みし、空いた手では踝の内側や土踏まずの辺りを擽ったりしている。
肘を立てて、腹に力を込めて肩から上を持ち上げ、脈打つ肉茎の根本から、細い柔らかい毛の奥に潜んだ暗い紫色の蕾にかけて舌を這わせる。そんなところを責められると思っていなかったのか長谷は「ふぁ…っ」と声を出して身を竦めた。面白くなって態と唾液を貯めて音を立てて塗りつけるように何度も繰り返し舐めた。
長谷は明らかに感じていて、舌を尖らせて蕾の襞に押し当ててぐりぐりと抉じ開けるように執拗に埋めてやると、その舌で揺れている薄い皮膚に包まれた大きめの胡桃のようなものがきゅっと収縮し、筋立った肉茎の先端から更にたっぷりと重みのある透明な体液を押し出す。おれの脚を愛撫する長谷が呻くように切なく喘ぐのが聞こえる。
先端を右手で包み、小刻みに扱きながら何度か尻肉を甘咬みしていると、途中で長谷が身体を起こして体勢を返し、おれの腰を持ち上げて自分の肩口まで引き上げ、開かせた脚の間に顔を寄せて、矢も盾もたまらぬと言わんばかりに音を立てておれのものをしゃぶった。
時に包むように舐り、時に小刻みに吸い上げ、時に歯を滑らすようにして擽る落ち着かない愛撫に焦らされる。手は脇腹を肋骨をなぞるように滑り、やがて再び胸の膨らみをやわやわと摘んでは指の腹で転がした。その手をそっと握って囁く。
「長谷、ねえ、もうここまでしちゃったら、挿入してもしなくても一緒だよ、最後までするでしょ?」
「先生、でも、見学終わっちゃったら、おれのことはもう切っちゃうでしょ?」
おれの分泌した体液と涎で口角から顎先までがぬるりと光っている。
「切らないよ、いくらでもやらせてあげる。けど、本気になっちゃダメだよ」
「だったらおれ、これ以上はできないですよ、だって」
泣き出しそうな表情でおれを見つめているけど、背中に当たる長谷のものはさっきからずっとおれを欲しがって幾度となく痙攣している。
「ふーん、風俗の子にはおれ投影して本番しちゃったのにおれにはしないんだ、今しなかったらほんともう絶対にさせないけどいいんだ?」
そう言ったところで、長谷はおれをひっくり返して俯せにした。左の手で頭を押さえ込まれ、ラグに押し付けられる。その直後、突然、腿と尻の間に肌を弾く強い痛みが走った。
「先生、膝立ててお尻上げてよ、するから」
それまでとは違うやや低い声色で言われ、ざわっと腰から下腹部が疼く。言われたとおり膝を立てて、尻を上げて、両手で肉たぶを開いた。曝された後孔にねっとりしたものが滴り、指先がそこに押し当てられる。抉じ開けるようにくるくると揉み解されると、使い慣らされたそこは容易に口を開いて、はしたなくひくつきながら指を飲み込んだ。
何も言わず、そのままもう一本、もう一本と、解れるにつれて指を増やされ、どうしようもない羞恥と期待で欲情が深まっていく。指は快楽を齎す方法を探って蠢き、中で拡げたり、軽く内壁に押しつけながら指の腹で撫でながら、長谷は熱帯びた目でおれの反応を見ている。
「先生、入口やらかいけど中狭いね、でも先生がどうなってもやめないよ」
指を引き抜いて、自分のものを手にとって、それでおれの尻をひたひたと叩く。熱く、当たっただけで存分な重みを感じるそれが、おれは早く欲しくて仕方がなかった。
「いいから、どうにでもにして」
懇願すると先端を押しつけ、ぐりぐりと少しずつねじ込んできた。これまで受け容れたことがない大きさの先端で拡げられ、辺縁部がジリジリと痛む。口で大きく息をしてできるだけ力を逃すけど、限界がある。やがて、水面に何か落ちるようにジュプ、と音がして先端が中に飲み込まれた。
「ごめんね、痛いよね、ローションあればよかったんだけど」
いや、あるんだよ。あるけどなくていいんだよ。
腹の奥に少しずつ、重みのある異物が侵入してくる。ストロークが長くて中をずるずると侵攻してくる感触、過敏な箇所を連続して擦られる感触が長く続いて気持ちがいい。こんなのやばい、知ったら戻れなくなるやつだ。中で自分の内壁が意思とは無関係に刺激に反応して疼き、収縮を繰り返す。突き当りに届いた先端がその度ぴくんと震える。
長谷はその長く太いものを、ギリギリまで引き抜いては、再びゆっくりと中に繰り返した。繰り返すほどに分泌された長谷の体液で、中は滑らかになり、抜き差しするごとに濡れたいやらしい音を立てた。入口は痛むものの、中で起こる快感が強烈で、無意識により深い幸悦を求めて腰が動いてしまう。それがお気に召さなかったのか、再び強く尻を打たれた。
「だめだよ、そんなこと、はしたないよ」
小さな子に言い聞かせるように言って、頭をくしゃくしゃと撫でると、体重を上からぐっとかけ、おれを押しつぶした。昂って太さと剛性を増したものが一気に奥に突き当り、押し出されるように声が出た。さっきおれを撫でたその手が鼻と口を塞ぐ。
「ね、先生、ゴムつけなかったけどいいよね?」
長谷が腰をグラインドさせ、奥に擦り付けるように動かす度に、結腸との境目にある襞沢が吸い付いて味わっているのがわかる。そして再び抜き差しされると重みのあるものが行き来する度、その手前の襞も引き続き反射的に繰り返しひくひくと締め付け、しゃぶりつく。自分の体とラグ敷きの床に挟まれた花芯が動く度に強く扱かれ、内部から与えられる快楽とリエゾンする。
言葉らしい言葉なんて出せないくらい体が快感に支配されて、下腹部の奥から迫り上がってくる恍惚感にみっともなく涎を垂らし喘ぐ。それが横溢して放たれ、全身が脱力して不随意に震えても、長谷はやめず、おれの髪の毛に鼻先を埋めたまま低く呻き、腰を打ち付けるように夢中で繰り返し更にその奥を求めて抉ってくる。寄せては返す重く鈍い痛みと衝撃に、思わず長谷の指を噛んだ。
長谷の手がおれの肩を掴んで引き寄せて、全身を激しく痙攣させて、おれの体内に精液を吐き出す。そのものの感触は内部ではわからないが、重い銃身が撃ち出す度に反動で伸縮するのが感じ取れた。一度ではおさまらないのか射出後も硬さは維持されたままのそれが、内部からゆっくりと引き抜かれ、密閉されていた部分が開放された。中で塗りつけられたり注ぎ込まれたぬるりとした体液が溢れ出て会陰を濡らす。
おれまでに受け容れたことのない大きさで抉じ開けられたそこは容易には閉じず、余韻と痛みでまだひくひくと疼いていて、指で中を確かめるように拡げられると更に羞恥に震えた。力なく俯せに寝転んだままのおれの頭を撫でて、耳元で「先生、もうだめ?もっとする?どっち?」と囁く。肯首すると抱え起こし今度は仰向けに寝せて、後ろに手を回し先程まで座っていたクッションを引っ張ってきて持ち上げたおれの腰の下に重ね、折って挟んだ。
脚を抱えて開き、再び、上から再び体重をかけて押さえ込まされ、体液でぬめる入口に突き刺すように先端が入り込む。息も絶え絶えにおれが「待って、運動不足で体硬いから」と止めようとすると、長谷は吹き出して声を出して笑った。「だめ、待たない」と言っておれの脚を閉じさせて体を曲げたまま左側に横臥させた。なんだ、融通してくれるんだ。奥までじっくり感触を味わいながら滑り込ませてから、脚を再び開かせておれを仰向けに戻し、先端を少し引いた。
その上からおれを見下ろしたまま言う。
「先生、この奥って今まで誰かに開発されたこととかある?」
「ないよ」
まあ、昔のことはもう知らんけど相手選ぶようになってからはないって。言わんけど。
「そっかあ、じゃあ」
耳元に顔を近づけて囁く。
「この奥の処女、おれがもらうね」
「おれもね、終わるまではダメだ、あくまで仕事として全うしようって思ってたよ。でも気が変わった。なんでだと思う?」
なんでって言われても。
「おれが先生のこと割とあからさまにそういう目で見てたから、以外に何かあるんですか?」
「あるよ」
囁くように言って引き抜いた小指を舐める舌に、いつの間にか路上で捕まえたときにはついていなかったはずのピアスが見えた。
腕を伸ばしておれの首に手をかけると、そのまま傾れ込んで体を預け、おれを押し倒した。小さな整った顔が直ぐ目の前に迫り、やや切れ長の大きな目があやうさを孕んで潤んで光っている。
「先生って、ほんときれいなかわいい顔してますね」
「きれいなのは当たり前だよ、作り物だからね。但、」
整形なのか。でも元がそれなりに良いか、どこかきれいなパーツが他にないと全体的に不自然さのないきれいな収まりにはならないんじゃないだろうか。
「但、なんですか?」
「通常はきれいに整えることでコンプレックスを取り除くためが多いと思う、おれはそのための技術を別の目的のために頼っただけで、きれいにするつもりでやってないから褒められると居心地が悪いんだ」
そう言うと、先生はおれの胸に耳を当てるようにして、おれの顔から顔を逸した。
「なんでですか、おれは今の先生の顔好きですよ。作り物で、何がいけないんですか」
カールした柔らかい髪に左の手を載せてそっと頭を撫でる。きゅっと目をきつく閉じて、先生が小さく声を漏らした。なんだ、先生も撫でられるの弱いんじゃないか。
右手で横を向いた先生の顔、頬に触れてそっと持ち上げてこちらを向かせた。
「先生、先生は今日のことは今日のことで済まそうとしているでしょ?でも、おれ、重い男なんですよ。多分しちゃったら先生のこと諦められなくなりますし、周りに隠し通すとかできないですよ、普通に見学終わっても彼氏面で先生の研究室やこの部屋に来ますよ、一緒に暮らしたいとか言い出しますよ、いいんですか」
「いいよ、でも多分、長谷はおれのこと知れば知っただけ幻滅すると思うけどね」
白いラグに手をついておれの腹の上に跨ったまま身体を起こすと、先生は改めて上からおれを見下ろして言った。そしてゆっくりと袖から腕を抜き、服を脱いだ。少年のような薄い胸に、乳頭に前回見たものとは違う飾りのついたカフスバーベルが煌めいている。
上半身をゆっくり倒し、おれの顔に再び近づく。互いの目と目しか見えないほど近づいたとき、ぱちんと音がして先生の前髪が崩れ、顔にかかった。
「長谷はおれの身体を見てるとき、何考えてた?どう思ってた?」
先生の華奢な手が後ろ手におれのものを撫で擦る。不随意に腿は痙攣し、情けないほど正直に反応する。
「そりゃあ、誰にどんな顔でそんなことさせてるのかと思ったら、触りたかったですよ」
正直に告げると、先生が微笑んだ。
「触っていいよ、どんなふうにでも」
おれは先生の肩を抱いて、抱えるようにして体勢を返し、そっと寝かせた。
一旦押し倒したのをひっくり返された。逆光に曝されておれを見下ろす長谷の目は、もう校内でおれを見ていたときのような戸惑いを含んでいなくて、情欲で満ちて恍惚とした、畏怖を感じさせる獣のオスの目だった。
その顔が性急に首筋に近づき、まだ他の男がつけた痕が残っている肩口の柔い部分に歯を立てて甘咬みする。呼吸は獲物を屠る猛獣のように息荒く、その吐息と唇がひどく熱い。食われているみたいだ、と思った。
厚みのある健康的な朱い舌が首筋をずるりと撫で上げてから、耳介内側の溝に這う。大きな手はその指先を立てて脇腹から腹斜筋周りをそろそろと擽り、返しては胸元の突起近くまで寄せる。繰り返される度おれは焦れてみっともなくお預けを食らった子犬のように声を漏らした。
満足そうに妖しく微笑んで、おれの頬を舐めあげてその鼻先でおれの前髪を掻き分け傷痕に口づけると、頬に、唇に啄むように何度もキスを繰り返した。舌を伸ばすとそれを咎めるように唇が押し返す。
おれの左の手首を掴んで、そっと上に持ち上げて動かない指先を口に含んで、手のひらに口づけてから、そのまま傷痕だらけでガタついたおれの腕のその傷跡を確かめるように舌でなぞり、そのまま二の腕に舌を這わせていき、そこで歯を立てて、強く咬みながらきつく吸った。
「い…いたい…はせ、痛い」
中々やめてくれないどころか、少し位置をずらして再び咬み付いた。
「先生、前から思ってたけどいい匂いがする、この匂い体臭?」
脇に顔を寄せて嗅ぐと、たまらないといった感じで舐めては匂いを嗅いでくる。
「やめなって、はずかしいってば」
「はずかしいの?他の人にはもっといやらしいこといっぱいさせてるんでしょ?ずるいそんなの」
再び唇を唇で塞ぐと、今度は厚みのある柔らかい長い舌を容赦なく口腔内に滑り込ませ、存分にその中を探る。舌下から上顎、歯茎の奥まで少しザラッとした感触の温かい肉の塊が這い回り、その隙間からとろりとしたものが流れ込んできて溺れそうになる。うまく息ができない。
流れ込んでくる生ぬるいそれをこくりと飲み込むと、愛おしげにおれの頬を親指の腹で撫でた。
空いた手でおれのボトムのスピンに手をかけて引いて解くと、アンダーと一緒に引き下ろす。少し腰を上げると一気に膝のやや下まで脱がされた。あとは足を引っ掛けてフットカバーともども自分で脱いだ。
長谷も一旦体を起こし、上半身裸になって、立ち膝でボトムとアンダーを下にずらすと、500mlのペットボトルに相当する長さと、自分の手首の側面、4~5cmほども太さのある凶器にも近いものが弾き出された。飴色で青筋立った、程よく反って王冠も目立つ、いやらしい形状。
こんなものを可愛い顔とスーツの下に隠して暮らしているなんて、不謹慎だなあ。いくらおれが慣れているといったって、相当慣らさないと裂けちゃうかも。勢いよく突かれたら吐きそう。根本まで入れたら結腸いっちゃうよなあ。全部飲み込んだらどうなるんだろ。
「先生、ほんとにいいの?これぶちこんだら先生壊れちゃうかもしれないですよ?」
「何言ってんの。それ、おれを想定して風俗の子にぶちこんだんでしょ?その子にはそうは思わなかったの?ひどいやつだな」
長谷はすべて脱いでから、上半身起こして笑っていたおれを再び押し倒し、脚を開かせてその間にある、まだ発達の途上のようなおれのささやかすぎるものに右の手を添えた。半勃ちのそれを包皮の上からやわやわと扱くと、その中にある異物感に気づき包皮を手繰り上げた。
まっすぐ横に貫くバーベルと、尿道を通って下に突き抜けたサーキュラーを見て、長谷の目の色が変わる。悪い意味ではなく、いい意味で。ありありと強く欲情している。それを目にした瞬間から幾度となく振れてる逸物からもその度合は明らかだ。
「なんでこんなかわいい身体に、こんなことしちゃうんですか」
「なんでだと思う?」
おれのものに添えられた長谷の手の上からおれも両の手を添えて上下に動かす。
「先生、今、おれ、すごく悪いことをしている気持ちです」
「なんで?」
答えは返ってこなかった。その代わり、空いている左の手が胸の上に置かれ、ピアスが貫通できるほどぷっくりと膨らんでいる右の乳頭の先を、中指の腹を触れるか触れないかのギリギリで転がすように撫で擦った。おれも左手を左の胸まで戻し、自分で左側の乳頭の先を同じように刺激する。
15も歳下の若い男にどうしようもなく欲情されて、はしたない姿を見られている事自体に、おれはひどく興奮した。早く長谷も理性なんか捨ててくれればいいんだ。めちゃくちゃにしていい。壊れる?上等だよ。とっくにおれは壊れているんだよ長谷。わかるだろう?
堪えきれず震えるおれのものと長谷の手の間にとめどなく透明でねっとりした体液があふれ、浸潤していく。同じ液体が長谷の屹立した肉塊の先端からも滴っているのが見える。おれにとってはどんな美食よりも甘美で贅沢で美味そうに見える。早くほしい、味わいたい。
「長谷、シックスナインしよ?ケツこっち向けな」
おれの顔を跨いだ時点で、長谷のものは顔にあたっている状態だった。恐る恐る長谷が振り返っておれに話しかけてくる。
「先生、あの、無理して咥えようとか思わなくていいですよ」
うん、まあ、そりゃあねえ。
顔を横にして、涎を垂らしている先端の窪みに舌を伸ばして擽るようにして舐めると、内腿が震えた。体格差が大きすぎて長谷はおれのものを舐めることができず、引き続き手でピアスが穿たれているおれの先端を弄んで、内腿や膕、膝まわりを甘咬みし、空いた手では踝の内側や土踏まずの辺りを擽ったりしている。
肘を立てて、腹に力を込めて肩から上を持ち上げ、脈打つ肉茎の根本から、細い柔らかい毛の奥に潜んだ暗い紫色の蕾にかけて舌を這わせる。そんなところを責められると思っていなかったのか長谷は「ふぁ…っ」と声を出して身を竦めた。面白くなって態と唾液を貯めて音を立てて塗りつけるように何度も繰り返し舐めた。
長谷は明らかに感じていて、舌を尖らせて蕾の襞に押し当ててぐりぐりと抉じ開けるように執拗に埋めてやると、その舌で揺れている薄い皮膚に包まれた大きめの胡桃のようなものがきゅっと収縮し、筋立った肉茎の先端から更にたっぷりと重みのある透明な体液を押し出す。おれの脚を愛撫する長谷が呻くように切なく喘ぐのが聞こえる。
先端を右手で包み、小刻みに扱きながら何度か尻肉を甘咬みしていると、途中で長谷が身体を起こして体勢を返し、おれの腰を持ち上げて自分の肩口まで引き上げ、開かせた脚の間に顔を寄せて、矢も盾もたまらぬと言わんばかりに音を立てておれのものをしゃぶった。
時に包むように舐り、時に小刻みに吸い上げ、時に歯を滑らすようにして擽る落ち着かない愛撫に焦らされる。手は脇腹を肋骨をなぞるように滑り、やがて再び胸の膨らみをやわやわと摘んでは指の腹で転がした。その手をそっと握って囁く。
「長谷、ねえ、もうここまでしちゃったら、挿入してもしなくても一緒だよ、最後までするでしょ?」
「先生、でも、見学終わっちゃったら、おれのことはもう切っちゃうでしょ?」
おれの分泌した体液と涎で口角から顎先までがぬるりと光っている。
「切らないよ、いくらでもやらせてあげる。けど、本気になっちゃダメだよ」
「だったらおれ、これ以上はできないですよ、だって」
泣き出しそうな表情でおれを見つめているけど、背中に当たる長谷のものはさっきからずっとおれを欲しがって幾度となく痙攣している。
「ふーん、風俗の子にはおれ投影して本番しちゃったのにおれにはしないんだ、今しなかったらほんともう絶対にさせないけどいいんだ?」
そう言ったところで、長谷はおれをひっくり返して俯せにした。左の手で頭を押さえ込まれ、ラグに押し付けられる。その直後、突然、腿と尻の間に肌を弾く強い痛みが走った。
「先生、膝立ててお尻上げてよ、するから」
それまでとは違うやや低い声色で言われ、ざわっと腰から下腹部が疼く。言われたとおり膝を立てて、尻を上げて、両手で肉たぶを開いた。曝された後孔にねっとりしたものが滴り、指先がそこに押し当てられる。抉じ開けるようにくるくると揉み解されると、使い慣らされたそこは容易に口を開いて、はしたなくひくつきながら指を飲み込んだ。
何も言わず、そのままもう一本、もう一本と、解れるにつれて指を増やされ、どうしようもない羞恥と期待で欲情が深まっていく。指は快楽を齎す方法を探って蠢き、中で拡げたり、軽く内壁に押しつけながら指の腹で撫でながら、長谷は熱帯びた目でおれの反応を見ている。
「先生、入口やらかいけど中狭いね、でも先生がどうなってもやめないよ」
指を引き抜いて、自分のものを手にとって、それでおれの尻をひたひたと叩く。熱く、当たっただけで存分な重みを感じるそれが、おれは早く欲しくて仕方がなかった。
「いいから、どうにでもにして」
懇願すると先端を押しつけ、ぐりぐりと少しずつねじ込んできた。これまで受け容れたことがない大きさの先端で拡げられ、辺縁部がジリジリと痛む。口で大きく息をしてできるだけ力を逃すけど、限界がある。やがて、水面に何か落ちるようにジュプ、と音がして先端が中に飲み込まれた。
「ごめんね、痛いよね、ローションあればよかったんだけど」
いや、あるんだよ。あるけどなくていいんだよ。
腹の奥に少しずつ、重みのある異物が侵入してくる。ストロークが長くて中をずるずると侵攻してくる感触、過敏な箇所を連続して擦られる感触が長く続いて気持ちがいい。こんなのやばい、知ったら戻れなくなるやつだ。中で自分の内壁が意思とは無関係に刺激に反応して疼き、収縮を繰り返す。突き当りに届いた先端がその度ぴくんと震える。
長谷はその長く太いものを、ギリギリまで引き抜いては、再びゆっくりと中に繰り返した。繰り返すほどに分泌された長谷の体液で、中は滑らかになり、抜き差しするごとに濡れたいやらしい音を立てた。入口は痛むものの、中で起こる快感が強烈で、無意識により深い幸悦を求めて腰が動いてしまう。それがお気に召さなかったのか、再び強く尻を打たれた。
「だめだよ、そんなこと、はしたないよ」
小さな子に言い聞かせるように言って、頭をくしゃくしゃと撫でると、体重を上からぐっとかけ、おれを押しつぶした。昂って太さと剛性を増したものが一気に奥に突き当り、押し出されるように声が出た。さっきおれを撫でたその手が鼻と口を塞ぐ。
「ね、先生、ゴムつけなかったけどいいよね?」
長谷が腰をグラインドさせ、奥に擦り付けるように動かす度に、結腸との境目にある襞沢が吸い付いて味わっているのがわかる。そして再び抜き差しされると重みのあるものが行き来する度、その手前の襞も引き続き反射的に繰り返しひくひくと締め付け、しゃぶりつく。自分の体とラグ敷きの床に挟まれた花芯が動く度に強く扱かれ、内部から与えられる快楽とリエゾンする。
言葉らしい言葉なんて出せないくらい体が快感に支配されて、下腹部の奥から迫り上がってくる恍惚感にみっともなく涎を垂らし喘ぐ。それが横溢して放たれ、全身が脱力して不随意に震えても、長谷はやめず、おれの髪の毛に鼻先を埋めたまま低く呻き、腰を打ち付けるように夢中で繰り返し更にその奥を求めて抉ってくる。寄せては返す重く鈍い痛みと衝撃に、思わず長谷の指を噛んだ。
長谷の手がおれの肩を掴んで引き寄せて、全身を激しく痙攣させて、おれの体内に精液を吐き出す。そのものの感触は内部ではわからないが、重い銃身が撃ち出す度に反動で伸縮するのが感じ取れた。一度ではおさまらないのか射出後も硬さは維持されたままのそれが、内部からゆっくりと引き抜かれ、密閉されていた部分が開放された。中で塗りつけられたり注ぎ込まれたぬるりとした体液が溢れ出て会陰を濡らす。
おれまでに受け容れたことのない大きさで抉じ開けられたそこは容易には閉じず、余韻と痛みでまだひくひくと疼いていて、指で中を確かめるように拡げられると更に羞恥に震えた。力なく俯せに寝転んだままのおれの頭を撫でて、耳元で「先生、もうだめ?もっとする?どっち?」と囁く。肯首すると抱え起こし今度は仰向けに寝せて、後ろに手を回し先程まで座っていたクッションを引っ張ってきて持ち上げたおれの腰の下に重ね、折って挟んだ。
脚を抱えて開き、再び、上から再び体重をかけて押さえ込まされ、体液でぬめる入口に突き刺すように先端が入り込む。息も絶え絶えにおれが「待って、運動不足で体硬いから」と止めようとすると、長谷は吹き出して声を出して笑った。「だめ、待たない」と言っておれの脚を閉じさせて体を曲げたまま左側に横臥させた。なんだ、融通してくれるんだ。奥までじっくり感触を味わいながら滑り込ませてから、脚を再び開かせておれを仰向けに戻し、先端を少し引いた。
その上からおれを見下ろしたまま言う。
「先生、この奥って今まで誰かに開発されたこととかある?」
「ないよ」
まあ、昔のことはもう知らんけど相手選ぶようになってからはないって。言わんけど。
「そっかあ、じゃあ」
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「この奥の処女、おれがもらうね」
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