Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2009/07 It's a lie, but a fact】

《第4週 土曜日》

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「ごめんなさい、事実です」
その日の夜、おれはリビングで両親の前で言った。
今日は前期の修了式で学校自体は午前のみだった。
午後、前日学校から連絡を受けた両親は、わざわざ仕事を休んで、県をまたいで、全寮制のうちの学校まで面談に来た。
そして卒業までの謹慎を言い渡され、そのままおれは通常夏休み参加する部活の練習や強化合宿には参加せず、実家に戻った。
卒業については卒業試験以外の条件はほぼ満たせているので、卒業試験も別室で受けることになる。卒業式には出られない。
選ばれた代表は辞退し、推薦枠でほぼ合格確定で受験予定だった大学への受験も取りやめることになった。予定はすべて白紙に鳴なった。

「ヒース、説明して。あなたずっとママのこと裏切ってたの?」
怒りに満ちた顔で、目にいっぱい涙を浮かべて、押し殺した低い声でママが言った。
違うよ、裏切ったとかじゃない。最初からそうだったけどママには言えなかった。
ママの育った教会は他の宗派と違って、特殊なことが多くて、あれもダメ、これもダメ、あれしなさいこれしなさいの連続だった。もちろん同性愛や婚前交渉なんてもってのほかだ。
あの宗派は出なければいけない行事も多くて、屈辱的な儀式を受けたりもしなきゃいけなくて、身につけるものまで強制されて大変で、そもそもおれはそれが嫌で部活やユースの活動に逃げていた。

「なあ、それよりいつからそいつにカネを強請られていたんだ?いくら払ってしまったんだ。お前が活動に必要だっていうから信じて必死に働いて仕送りしてたんだ、それがおれはつらいよ。警察官なのに息子がこういうとき頼ってくれなかったことも正直つらい。」
普段は神経を尖らせた表情をしていることが多い父が、心配そうな顔で体を前に屈めておれを見ている。
ママに責められているとき、父はいつも味方してくれていたのに、逃げる手段としてスポーツに打ち込んでたという嘘があると思うと、おれは言えなかった。
ごく一般的な公務員の家庭に育った父は冷静で、ママはママだから、お前が必ずしも信仰に付き合う必要はないと言って好きなことをさせてくれて、応援してくれたけど、あれがなかったらきっとおれはそれこそ非行に走るなどして大変なことになってしまってたと思う。
でも結局、おれは別な意味で大変なことをしてしまった。

「ねえヒース、やっぱり神殿で祝福を受けましょう?あなたは賢い子だもの、学び直せば理解できるはずよ」
「今はそういう事を言っている場合じゃないだろう!いいかげんにしろ!」
父が声を荒げて、目の前で言い争いが始まる。おれが家にいるといつもこうだ。
だから嫌だったんだ、早くおとなになりたかった。ひとりで生きていける手段が欲しかった。
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