Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 教育】

《第2週 月曜日 夜 リプレイ》③ (*)

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バスルームの隅にステンレスワイヤーの籠が置かれている。
中には、グリセリン50%溶液、温度計、腸内洗浄用のネラトンカテーテル、最大直径5cm程度のプラグ、ローション、キシロカインゼリー、イソプレンラバーのグローブ。
その横の盥では既にローションを充填した50mlディスポ(使い捨て)シリンジと、グリセリン溶液を充填した50mlディスポシリンジ、精製水を充填した100mlシリンジ数本をそれぞれ40度程に加熱してから密閉して同じような温度の湯に浸してある。
扉をノックする音がして、ユカが「失礼します」と鈴のような声で言って、猫のように音もなく入ってくる。
「足りてないものはないですか」
「こんなもんでいいよ、あとおれの鞄から薬とか入れてるポーチ出して洗面台置いといて」
ちょっと笑って、からかうように「相変わらず冷静ですね」と言った。
「ポーチ取ってきますね。お荷物、旦那様のお部屋に運んでおきましたので」
また猫のように足音を立てずに出ていく。
洗面台に何か置く音がして、ややすると完全に人の気配が無くなった。
体を洗ってから、浴槽に10分ほど縁に肘をついて浸かる。
肩からお湯が出る機能はちょっと気になるが、ことが終わって帰る前どうせ入るから試すのはその時でもいい。
浴槽を出て、立て掛けてある半畳ほどの大きさのバスマットを敷いて、椅子に座る。
このテの椅子がAmazonで介護用品で売られてるのを見たときはちょっと面白かったな、でも実際使えるんだよな、などと思い出していた。
グローブを嵌め、掌に100円玉大にローションを出し、キシロカインゼリーを少量混ぜる。
指にとって、背後から手を回し穴に馴染ませる。
昨日一旦拡げられたそこは数度甘揉みしただけで口を開けた。内部からガスが抜けたが行為の際入った空気なのか、単に腹に何も殆どなかったからか、匂いはない。腹圧を下げる為の排尿も必要なさそうだ。
グリセリン溶液が充填されたほうのシリンジをパウチから取り出して腸内洗浄用のネラトンカテーテルを接続する。
丸くなっている先端を直腸まで挿入し、少しずつシリンジを押して注入した。
注入を終えたら、スマートフォンのアラームを1分半後に鳴るよう設定し、再び浴槽に半身浸かる。注入にかけた時間を含め計3分。それ以上はプレイに支障が出る。
そもそも昨日昼の分を吐いてからも特に補填はせず、その後も決めた時間に同じようなメニューを摂ったので食事らしい食事はしていない。
出すほどものも入っていないんじゃないかと思うが、昨日ハルくんはゴムつけなかったから、洗っておくに越したことない。
バスルームに反響するアラームを止めて、バスルームから出て、脱衣所を挟んで向かいにあるトイレに入り、腹を押して口から息を吐くようにしてすべて排出する。
これと精製水を入れたシリンジ2回で3セット。
予想通り、申し訳程度の量で、排出する液体が濁る程度だった。
流してバスルームに戻り、新たにカテーテルをおろし今度はローション50mlを充填したシリンジを取り出す。
先程より深めにカテーテルを挿入してシリンジを押す。少しずつ引き出しながら行き渡るように注入していく。カテーテルを抜くのと入れ替わりにプラグを挿入して完了。
湯を捨てた盥に使い終えたものを適当に放り込んでバスルームを出た。
洗面所でグローブを外し、手を消毒成分入りのハンドソープで洗い、アルコールジェルで消毒して、ローブを着る。
歯を磨いて、リステリンで口内を濯いでからポーチの中の小さい風邪薬の空き瓶を出し、昨日授業前に外し忘れ、取り急ぎ仕舞っておいた舌ピアスをピンセットで取り出す。バーベルのボールを1つ外し、小さい鏡で位置を確認して軸を押し込む。ネジ状になった先端がホールの粘膜を擦って僅かに傷つけたのか、血の味がした。
小脇にスマートフォンを仕舞ったポーチを挟んでボールを付け直しながら絨毯敷の廊下を歩いて征谷の寝室に向かう。
今月はあと来れるかわからないから、この一回で25万円分。
怖くないわけではないし、冷静なわけがない。

部屋のドアを2回ノックすると、髪の毛を真っ白く脱色し後ろに撫で付けた黒に臙脂とグレーのレジメンタルストライプのジャケットに黒いシャツ、白いネクタイをゆるく結い、黒のスキニーにラバーソールのパンクスっぽい男が出迎えた。黒縁メガネからこちらを覗く目は鋭い。
「急にオヤジの機嫌が良くなったと思ったらやっぱりか…あんたいつまでオヤジのオンナやってんだよ…もう来ねえかと思ったわ」
「はは、残念でした」
この男、見た目がアレだがバンドマンではない。徳永はおれの5つ下で、征谷の組のフロント企業の建前上の社長、指定暴力団の二次団体の幹部だ。ここに来た当初は部屋住みで躾の真っ最中のクソガキだった。
「おれが来ない間、たっぷり可愛がってもらえただろ?よかったな」
肩に載せた手を振り払って顔を寄せてくる。
「あんたみたいなことはされてない、変な言い方すんな」
隙を突いてうなじの特徴的な大きめの黒子にキスしたら普通に後頭部を引っ叩かれた。
「あ~!もう!おれをおちょくってないでさっさとオヤジんとこ早く行きなさいよ!」
「てかなんでわざわざ部屋ン中いるの、とうとうそういう趣味になった?」
ふうっと溜息をついて徳永は小さく声を潜めて言った。
「椅子取りゲームで物騒なんですよ」
手でシッシッと掃くように追っ払われ、奥の天蓋付きのキングサイズのベッドがある部屋に向かう。
ベッドの横のソファで征谷は本を読んでいた。
征谷は基本的には穏やかで優しい。プレイ中以外では非道なことはされたことがない。
こちらに気づき、
読んでいた本にスピンを挟んで閉じて、手招きする。招かれるままに近づくと、ローブの帯が引いて解かれた。袖を引くとローブは生地の重みで惰性がついて床に落ちた。
「首の痕、まだ新しいな」
「昨日です」
こういうときは下手に言い訳しないのが正しい。
「二週間シカトしといて、忙しいのかと思や他の男咥え込んでるわ、いきなり押しかけてくるわ、相変わらずだな」
脚の間の床を指差して座るよう示した。
床に手をついて正座すると、征谷が組んでいた脚を解いて下ろし前屈みになり、両手で頬を撫でて、じっと見つめてくる。
「顔、変わってないよな」
「最近は何もしてないです」
指を耳元、首筋、鎖骨と滑らせて、乳頭を貫通するカフスバーベルを下から弾く。
「それ、お気に召しました?」
「なんで断りもなく開けるんだ、前回来た時正直引いたぞ」
苦笑いしながら指先で乳頭を貫通したフープを揺らす。
「でも、おれが痛がるのかわいいって言って何回も触ってたでしょ」
「自覚あると思うけどさ、お前、屈辱とか痛み感じてるとき最高にいい顔するんだよ」
そのまま貫通した部分を圧迫するように乳頭を指で押し潰す。薄く皮膚が出来かけているホール内部に金属がめり込みジリジリ痛む。体に脂汗が滲むのがわかる。
同時に脳の奥が痺れるような感覚が生じ、それが腹の奥や性器に直接響き、どうしようもなく昂る。
「なあ、まだ二週間シカトしたこと、いきなり押しかけてきたこと、どっちもちゃんとお詫びできてないよな、玲」
強弱をつけて捏ね回すようにされて、痛みと快感が繰り返し押し寄せる。
自分で、自身の呼吸が荒くなり呼気が熱くなっていくのを感じる。
吐息に声が紛れそうになる。
「カネ積んで契約してるってのにシカトするわ、厭なことあると八つ当たりに他の男とセックスするわ、自分がセックスしたいときは一方的に来るんだもんなあ、なんで何度躾けても直らねえんだよクズ」
叱りつけながら股の間のものを足の先で扱くように弄ばれて、完全にスイッチが入る。
「ほらまたそうやって…嬲ろうが虐げようが叱ろうが罵ろうがお前からしたらご褒美でしかない」
再び背凭れに体を預けて脚を組み、爪先をおれの目の前に差し出す。
「反省してんならご奉仕くらい自発的にやれよ、やる気がないなら帰れ」
足の指を口に含み、それぞれの間に舌を挿し入れて舐ぶる。足の甲を伝いくるぶしの内側の皮膚の薄いところを舌先を這わせる。
目線を遮る前髪を掻き分けて覗き込んでくる。
「そんな涎垂らしてしゃぶる程好きか、うっとりしやがって」
そう言いながら、髪の毛の奥にある傷痕を親指で慰めるかのように優しく繰り返し撫でる。
舐めるのをやめて顔を離し、横に振った。
こういうとき、変に優しくされると萎える。
「いいから、手を出しなさい」
椅子の横の籠からナスカンの付いた革のリストバンドを足元の籐籠から出し、おれの手首に巻く。
左の腕を埋め尽くす傷痕を悲しそうに見て、感覚がない部分にそっと口付けた。
「脚にも巻くから立ちなさい」
促されるまま立つと、ベッド脇に連れて行かれ、腿と足首にも同じようなものを装着される。
そして首輪も。
リードを付ける為の輪の部分に指をかけて引く。
「上がって、いつもの姿勢で待ってろ」
ベッドの上で転がり、頭を下げて布団の上に顔を押し付けたまま、膝を立てて脚を拡げて尻を突き出す。
何やら徳永と話すのが聞こえる。
「なんでおれがやるんですか」
「それはお前が一番わかってんだろ」
このあとの展開は見えてきた。
おれたちは契約して25年。征谷はもう今年で還暦を迎える。勃たないわけではないが挿入するには十分な硬さにならない時もある。そういうときはだいたい徳永が巻き込まれる。
徳永がおれを憎からず思っていることも、徳永がけしかけられたら余裕なくがっつくことも、おれが乱暴に犯されるのが好きなのも踏まえてだ。
戻ってきた征谷が腿のナスカンに手首のナスカンを繋いで固定し、耳元で囁いた。
「ふみにヤラれてんの撮ってやるよ、撮ったのふみに売りつけてその分も小遣いにやるよ」
連れられてきた徳永が、さっきまで征谷が座っていた椅子に乱雑に服を脱ぎ捨てながらおれを濡れた目で見ている。
「あぁ、ほら見ろ。わかるか?お前らおんなじ目ぇしてるぞ」
目線を送り、顎をしゃくる。
カネで買われて傅いてる立場のくせに、主が指図する前に、微かに顔を上げて番犬を顎で呼ぶ情婦なんざ、最高に腹が立つに決まってる。
予想通り、容赦なく脇腹を蹴飛ばされ、頭を掴んでベッドに押し付け沈められた。
「調子に乗ってんじゃねえぞ、このクソアマ」
息は荒くなっていくのに、柔らかな繊維の中に埋もれてうまく呼吸できなくなって、意識が飛びそうになる。
そうだよ。もっとキレて本気で罵れ。
脚を抱えるように持ち上げておれの尻の肉を強引に開く。怒りに任せてプラグを乱暴に引き抜いて、一気に根本まで体重をかけて突き入れられ、衝撃でえずくような声が漏れた。
興奮で張り詰めた前立腺から結腸手前の神経の束が走る辺りまでを執拗になぞられ、行き来するほどに括約筋から腹の奥の筋肉、腿や膝までが痙攣して応える。
激しい出し入れで中に仕込んだローションが音を立て、引き抜くたび掻き出されて溢れ出る。
平均より長くカリ高の徳永のモノは既に限界まで硬くなっていて熱く脈打って先走りを中で垂れ流しているのを感じる。
吐息混じりに、きれぎれに小さく喘ぐと髪の毛を掴んで征谷の方に向かせた。
「オヤジが見てんだろ、かわい子ぶってねえで声出せ」
立ったまま上から撮影しながら、征谷が見ている。
「玲、いつも言ってるだろ?ここは存分に声を出していい場所だよ、口を開けなさい」
徳永の指が強引に口を割って舌下を押さえつけて開く。口角から涎が滴り顎先から伝って落ちる。
自分のものとは思えない嬌声が部屋に反響した。
自分で自分の声にひどく興奮を覚える。
身を捩り、繋がったまま体位を変えて仰向けになると徳永がおれの腰を持ち上げて引き、上から抉るように中を掻き回した。
その動きに合わせて無意識に腰を振って自分がほしいところに徳永を誘導する。
覆い被さった徳永はおれの眼前に余裕のない切なげな表情を晒し、何か言いたげに口元を動かすと、何か声に出さず呟いた。
こうなることはわかってた。
愛しさが込み上げて名前で呼んで囁く。
「ふみ、おれも好きだよ」
その瞬間、左の頬を引っ叩かれて、口を掌で塞がれた。
「うるせえよ、お前は黙って種付されてメスやってりゃいいんだよ」
情欲に濡れた目で見下され、期待通り罵られ、言語化できない快感が全身を支配し、腹の奥を動かす。中の粘膜が密着して畝る。
徳永は拘束具の金具を乱暴に外すと、おれの脚を開かせて折り曲げ、更に奥を突いた。
届いてはいけないところにまで入ってしまいそうな感覚と、内臓を掻き出すような腹の中のぬめり気を帯びた音が恐怖心と色欲を掻き立てる。
「やだ、それ以上だめ」
全身を戦慄かせても見透かされている。
「嘘付け、興奮してるくせに」
中の音が外まで聞こえる気がする。実際聞こえているのかもしれない。
激しく腰を打ち付けるようにして何度も抜き差しされて過敏になった内部が徳永に吸い付いて締付ける。
徳永もおれが一番弱いポイントに狙いをつけて、速度を上げて追い込んでくる。
「ふみ、いく、だめ、止めて」
「だめじゃねえ、いけ」
もう自分の意思ではどうにもならない。
絶頂が近づいて他の感覚が遠のき、骨盤内部と性器にしか意識がいかない。
はしたなく腰を振って声を上げるしかできない。
徳永も腰を突き出して、声を上げて、繰り返し全身震わせ、おれの体内に精液を注ぐ。
擦れた粘膜に強い酸性の粘り気を帯びた熱い体液が放たれ、ジンと沁みる。
その痛みがおれに激しい絶頂を齎し、おかわり欲しがらせる。
うわ言のように何度も名前を呼んで、手錠に繋がれたままの両手で自分の性器の亀頭と裏筋の境を扱く。
前立腺で燻っていた熱帯びた半透明の液体が溢れ出る。
「ふみ、抜かないで、もっとして」
「ふざけんなよ淫乱野郎」
ほら、おれの気質知っててそういうこと言う。
「クソが、一晩中ぶち犯してやろうか」
耳元で囁きながら精液でぬめる内部を改めて深く探られ、快感の波が治まりきらないうちに再び高まっていく。
「お前ら、本っ当にかわいいなぁ、何も変わってないよ」
ファインダー越しにこちらのまぐわいを愉しみながら、征谷が笑った。
あぁ、カメラなんかじゃなくて、おれがめちゃくちゃに犯されて快楽で前後不覚になってる間に、直人さんがチャカで頭ふっ飛ばしてくれたらいいのに。
ハルくんに殺してくれって頼んで持たせたって、泣いちゃってきっと一発もまともに撃てないんだもの。
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