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【2020/05 教育】
《第2週 月曜日 夜 リプレイ》①
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長谷くんを帰したあと、別途剖検があり再び着替えて解剖室に入った。
それが終わって夜半すぎに監察医務院を出て、小曽川に「直帰するので調べてもらってた内容の中間報告をストレージにアップロードしておくように」とLINEで依頼して、仕事用の携帯の電源を切った。
私用のスマートフォンに持ち替えて、アプリでタクシーを呼ぶ。
行先はタワーマンションが乱立するベイエリア。
着信履歴を開き、ある人物の名前をタップする。
履歴の半分以上がこの名前で埋まっていた。
そのまま発信すると、ややしばらくして応答があった。
「玲か、今何処だ、どうしてる」
「すみません、今から行きます」
一言だけ伝えてすぐに切った。
折り返し着信があったが切った。数秒してまた着信があったがそれも切った。
通知に何度も【征谷直人】と表示される。
サイレントモードにしてポケットに仕舞いこんで無視した。
昨年度末に研修の話が出てからずっとよく眠れていない。僅かでも睡眠を取りたくて目を閉じると、微睡みの中、泣き出しそうな顔で自分を犯すハルくんを思い出す。
(ハルくん、昔から直ぐに泣くんだよな)
初めて出会ったときも、再会したときも、救命センターに運び込まれたときも、手の手術をしたときも、ピアッシングしたときも。
顔を変える度に、ピアスが増える度に、セックスする度に。
ハルくんが泣くのが悪いんじゃない、変な性癖がないハルくんにそういうことを要求し続けるおれが悪い。
きっとハルくんは、おれの事は好きだけど、同じくらい憎んでいると思う。
ハルくんにめちゃくちゃに憎まれて殺されたい。
そんなことハルくんは絶対できないだろうけど。
やがて、タクシーは物流会社の大型車両が行き来する他あまり車通りがない、人の気配が薄い場所のバス停で停まった。
領収書を受け取って降りて、直ぐ目の前のタワーマンションのエントランスに入り、
コンシェルジュに部屋番号を伝えて呼び出しを頼んだ。
待合のソファで微睡んでいると、肩を叩かれた。
「随分お疲れだな」
顎髭まで白い、背が高くガッシリとした、穏やかな紳士がそのまま背後から手を伸ばして頬を撫でる。
「忙しいならそう言えばいいのに」
口元に指を当てられて薄く開けると、その指が割って入り上顎の凹凸や舌下を擽る。ザワザワと背中を擽られるような感触が這う。
引き抜かれた指をゆっくりと舐って、征谷の顔を見上げた。
「心配してた、皆待ってたよ」
手を引いてエレベーターホールまで連れられ、腰に手を添えてエスコートされて乗り込む。エレベーターの籠の中では息ができないほどきつく抱き締められた。
「玲、やっぱりダメなんだ。お前がいなければ」
エレベーターが指定フロアに到着し、扉が開く。
征谷の部屋の前に女性が立っている。
「玲さん、お久しぶり」
征谷の妻、由美子。夫の性癖を承知の上結婚し、おれを征谷に充てがった張本人だ。
「大変なのよ、あなたがいないといろいろ」
それが終わって夜半すぎに監察医務院を出て、小曽川に「直帰するので調べてもらってた内容の中間報告をストレージにアップロードしておくように」とLINEで依頼して、仕事用の携帯の電源を切った。
私用のスマートフォンに持ち替えて、アプリでタクシーを呼ぶ。
行先はタワーマンションが乱立するベイエリア。
着信履歴を開き、ある人物の名前をタップする。
履歴の半分以上がこの名前で埋まっていた。
そのまま発信すると、ややしばらくして応答があった。
「玲か、今何処だ、どうしてる」
「すみません、今から行きます」
一言だけ伝えてすぐに切った。
折り返し着信があったが切った。数秒してまた着信があったがそれも切った。
通知に何度も【征谷直人】と表示される。
サイレントモードにしてポケットに仕舞いこんで無視した。
昨年度末に研修の話が出てからずっとよく眠れていない。僅かでも睡眠を取りたくて目を閉じると、微睡みの中、泣き出しそうな顔で自分を犯すハルくんを思い出す。
(ハルくん、昔から直ぐに泣くんだよな)
初めて出会ったときも、再会したときも、救命センターに運び込まれたときも、手の手術をしたときも、ピアッシングしたときも。
顔を変える度に、ピアスが増える度に、セックスする度に。
ハルくんが泣くのが悪いんじゃない、変な性癖がないハルくんにそういうことを要求し続けるおれが悪い。
きっとハルくんは、おれの事は好きだけど、同じくらい憎んでいると思う。
ハルくんにめちゃくちゃに憎まれて殺されたい。
そんなことハルくんは絶対できないだろうけど。
やがて、タクシーは物流会社の大型車両が行き来する他あまり車通りがない、人の気配が薄い場所のバス停で停まった。
領収書を受け取って降りて、直ぐ目の前のタワーマンションのエントランスに入り、
コンシェルジュに部屋番号を伝えて呼び出しを頼んだ。
待合のソファで微睡んでいると、肩を叩かれた。
「随分お疲れだな」
顎髭まで白い、背が高くガッシリとした、穏やかな紳士がそのまま背後から手を伸ばして頬を撫でる。
「忙しいならそう言えばいいのに」
口元に指を当てられて薄く開けると、その指が割って入り上顎の凹凸や舌下を擽る。ザワザワと背中を擽られるような感触が這う。
引き抜かれた指をゆっくりと舐って、征谷の顔を見上げた。
「心配してた、皆待ってたよ」
手を引いてエレベーターホールまで連れられ、腰に手を添えてエスコートされて乗り込む。エレベーターの籠の中では息ができないほどきつく抱き締められた。
「玲、やっぱりダメなんだ。お前がいなければ」
エレベーターが指定フロアに到着し、扉が開く。
征谷の部屋の前に女性が立っている。
「玲さん、お久しぶり」
征谷の妻、由美子。夫の性癖を承知の上結婚し、おれを征谷に充てがった張本人だ。
「大変なのよ、あなたがいないといろいろ」
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