25 / 453
【2020/05 教育】
《第2週 月曜日 深夜》
しおりを挟む
「お弁当ありがとう」
兄がダイニングテーブルに空になったお弁当箱を置いた。
あっ、またこんな夜中になってから洗うもの持ってきた。出すの忘れてたの?しょうがないなあ。
「ううん、自分の作るついでだし。明日は今日の晩御飯と同じピーマンの肉詰めでもいい?」
「うん、いや、もう、ほんと作ってもらえるだけありがたいんでおまかせするよ。じゃあおれはこの辺で」
仰々しく合掌してお辞儀して、回れ右。奥の仏間いっぱいの大きなキャンバスに向かう。
兄は本当は絵を描く人なのだけど、いろいろあって医学部で助手と教員の中間みたいな仕事をしている。職場では重宝されているみたいだけど、家ではまるで何もやらなくて、家事能力は限りなくゼロに等しい。
わたしがいなくなったらこの人、生活どうするんだろうといつも思う。
わたしは、来年の結婚を準備しているところだけれど、事情があって進捗は停滞している。
破談してしまうかもしれない。
兄とわたしは、遺伝上の父母が違う。
兄はこの家の夫婦の子だけれど、わたしは途中からこの家に加わった子だ。
両親は誰が遺伝上の父母かは知っているが、絶対に教えてくれず、そのまま一昨年交通事故で他界してしまった。
但、成人したときに、遺伝上の母親はもうこの世にいないこと、遺伝上の父親は成人してからずっと私の為に仕送りを始め、今もその仕送りは続いていることは教えてくれた。
そこまでしてくれている人なのに、何故教えてくれなかったのか、何故会わせてくれなかったのか、まだ納得がいかない。会いたいし、会って直接今までのお礼が言いたい。
何故私を育ててくれなかったのか、何故会ってくれなかったのかとか、どうでもよくはないけど、そんなことはいいから、会ってほしい。幸せに暮らせていたことを伝えたい。
それが叶うまでは次のことなんて考えられない。自分本意なわがままなのは十分わかっている。でも、どうしても。
兄がダイニングテーブルに空になったお弁当箱を置いた。
あっ、またこんな夜中になってから洗うもの持ってきた。出すの忘れてたの?しょうがないなあ。
「ううん、自分の作るついでだし。明日は今日の晩御飯と同じピーマンの肉詰めでもいい?」
「うん、いや、もう、ほんと作ってもらえるだけありがたいんでおまかせするよ。じゃあおれはこの辺で」
仰々しく合掌してお辞儀して、回れ右。奥の仏間いっぱいの大きなキャンバスに向かう。
兄は本当は絵を描く人なのだけど、いろいろあって医学部で助手と教員の中間みたいな仕事をしている。職場では重宝されているみたいだけど、家ではまるで何もやらなくて、家事能力は限りなくゼロに等しい。
わたしがいなくなったらこの人、生活どうするんだろうといつも思う。
わたしは、来年の結婚を準備しているところだけれど、事情があって進捗は停滞している。
破談してしまうかもしれない。
兄とわたしは、遺伝上の父母が違う。
兄はこの家の夫婦の子だけれど、わたしは途中からこの家に加わった子だ。
両親は誰が遺伝上の父母かは知っているが、絶対に教えてくれず、そのまま一昨年交通事故で他界してしまった。
但、成人したときに、遺伝上の母親はもうこの世にいないこと、遺伝上の父親は成人してからずっと私の為に仕送りを始め、今もその仕送りは続いていることは教えてくれた。
そこまでしてくれている人なのに、何故教えてくれなかったのか、何故会わせてくれなかったのか、まだ納得がいかない。会いたいし、会って直接今までのお礼が言いたい。
何故私を育ててくれなかったのか、何故会ってくれなかったのかとか、どうでもよくはないけど、そんなことはいいから、会ってほしい。幸せに暮らせていたことを伝えたい。
それが叶うまでは次のことなんて考えられない。自分本意なわがままなのは十分わかっている。でも、どうしても。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。



怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる