Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 邂逅】

《第2週 月曜日 午後》①

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学食は安くて栄養価が高いセットメニューもあり、充実していた。但、味が濃いものに慣れていると物足りないかもしれないが、健康に配慮し計算されたものなのだろう。
混雑する前に学食で食事を済ませ、書庫に戻った。
与えられた資料の山と演習という言葉に、自衛隊の合同演習的な実際に銃火器をドンドコ撃ち放つ光景を思い浮かべたり、ドラマで観た法医学教室や科捜研を思い出しだりして「初日から、やるのか」と思って変に緊張していたら読まれたのか、小曽川さんは「ふふ、」と笑った。
「ごめんね、でもあくまでも演習だから大丈夫なんで。演習はですね、理論や定理を学んだ後問題に取り組むことでして、行政解剖ないし司法解剖をやるにあたって必要なことを座学でやるやつなんで~、実習ないですよ」
のんびり語りながら小曽川さんは、丸まったレシートや伝票を開いてはテンキーを叩いていた。
「小曽川さん、なんで助教さんなのに帳簿つけてるんですか」
「いやあ、先生方だいたい事務処理とかまるでダメだからしょうがなく…うち人手少ないしね~」
入力を邪魔するのも気が引けるので大人しく資料を黙読した。
部屋にはキーボードの乾いた音が淡々と響き、藤川先生の部屋からは生活音すら聞こえない。
注意が逸れてきたので用便に立つことを伝えて一旦部屋を出る。
トイレに近づくに連れ、誰かが声を潜めて話すのが漏れ聞こえてきた。何を話しているのかまではわからないが、藤川先生の声だった。
少し苛立った感じが伝わってきたので直ぐ近くの階段室に隠れた。
「じゃあ切るから、着いたら連絡して」と先生が言って、通話は終わった。
階段室に隠れて先生が部屋に戻るのを見送る。
詮索するのはよくない、見なかったことにしようと思いそっと階段室を出たところで、先生が振り返った。
気づいてたのか。
「今の、聞こえてた?」
苛立った様子は、今はない。
「や、なんにも、内容わかんなかったです」
「だったらいいや、気を遣わせてごめんね。

先生が部屋に戻ったのを確認して、トイレに入った。
ポケットからスマートフォンを出して、飯野さんにメールを打つ。
「お疲れ様です。無事藤川先生にお会い出来ました。フレンドリーとは言い難いですが、変な人でもなさそうです。午前中は資料を読みました。午後は授業に出ます、座学です。」
速やかに短く「了解」とだけ返信があった。
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