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真実の愛がもたらしたもの【そもそもの始まり】
17.法律の制定とその後の明暗
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議会に提出された法案は、2年の時を経て成立された。
その間、当事者とされた二組の婚約者たちは、婚約の状態のまま留め置かれた。
リオノーラは、国をまたぐ婚姻であったため、準備期間を要することもありさほど問題にはならなかったが、デビッドたちは違っていた。
教育の最中に、エイミーの腹に子が宿った。シェリンガム侯爵は、子ができた以上婚姻を先にと議会に申し出たが、この案件の当事者である以上、そして、この件はどちらも裁判沙汰にはせず、司法での決着がなかった以上、議会の議論終了までは許可できないと通達があった。
アストリッド公爵側が、提案した議論に答えが出てから、司法に掛けると宣言していたことも、許可が出ない一因だった。
議論の結果次第では、どちらかに何某かの対処が必要になる可能性があるからだ。
結局未婚のまま、デビッドたち二人の間には女の子が生まれた。
髪の色はデビッドと同じ色だったが、瞳の色は濃い緑の瞳だった。若草色のエイミーの瞳が濃くなったのだと言われれば、そう言えなくもないが、シェリンガム家ではその色に疑問を抱いた。
ただ、本当に二人の子なのか、判別することはこの国の技術では難しい。紫のデビッドの瞳と若草色が混じっているのだとエイミーが主張するため、そのままシェリンガム家の別邸でエイミーのそばで育てられることとなった。
その子が1歳を迎える頃、議会の結論が出て法が公布された。
それをもって、アストリッド公爵から、デビッドとエイミーに裁判が起こされた。
提訴内容は、二人に対しての貴族籍の剥奪。そしてリオノーラの冤罪の証明と、名誉回復であった。
裁判は、すぐに決着した。デビッドが主張していたエイミーに対する虐めの証拠は何処にもなかった。
リオノーラは、国選の交換留学生であったため、お互いの国の機密情報を保護するためにも、出される手紙や書簡はすべて調査・検閲されていたし、リオノーラもすべて提出していた。また監視もついていたため、秘密裏に人を使って国まで指示を出すことなどできる状態ではなかったことが証明された。これは王家が主導の証言のため、証拠としての信憑性は高く、重要視された。
逆にデビッドたちの主張は、物証が乏しく、思い込みの噂話が中心だったため、リオノーラを断罪するに足る証拠は提示できなかった。
その結果、新たに制定された法律が適用されることとなった。
法律の内容は、主に、【理不尽及び一方的に婚約及び婚姻を解消する理由が、不貞の場合、その原因となる不貞を犯した側(不貞相手も含む)は貴族としての身分を手放すこと】。
この国において、大多数を占める国民は平民だ。平民は、自由恋愛であり、そして婚姻も比較的自由にできる。助け合い、愛し合い、生活を営むことを良しとしているからだ。そうして国で生活することはひいては国が栄えることにもなる。
貴族には、自領の領民を守り、反映させていく義務がある。そのために利益を優先した婚姻が推奨される傾向にあり、そうして結ばれた利益在りきの間柄であっても、互いに支え合うことが良しとされている。
【恋愛】を理由に、不貞を犯し、話し合いもせず、一方的に婚約もしくは婚姻を破棄した場合は、平民と同じく【愛をもって助け合う家庭を希望している】と見做され、平民とすることが妥当、ということになったのだ。
【真実の愛】を貫くためには、一般の市民として愛を証明せねばならない、ということだ。
そのことから、デビッドとエイミーには、生まれた子供も含め、貴族籍の剥奪が通達された。そのうえで、二人には【真実の愛】を貫くことを認め、婚姻することが認められた。ただし、ここまでの騒動が起きた以上、離婚することは認められないとされた。
同時にリオノーラには、相手方の主張がすべて冤罪であったことが証明され、シェリンガム侯爵家とペイン男爵側から慰謝料の支払いを受けることが決まった。
しかし、リオノーラは、名誉の回復のみを希望し、冤罪が証明されただけで良しとし、双方からの慰謝料については受け取らないとした。
シェリンガム侯爵家からは再度の審判の申し立てがあったが、却下された。それにより、シェリンガム家は後継を失うことになった。
その後、侯爵の縁者から養子を取り、後継として養育することが決まった。
これをもって、施行された法律は、実際の事案に用いられることが提示された形となり、貴族における【自由恋愛】ブームに一石を投じることとなった。
法律は、全ての恋愛を否定するわけではない。もちろん貴族であっても恋愛での結婚は存在していい。が、それであっても家を守ることは優先され、それを阻害しないことが重要であるとされた。
また、婚約や婚姻の解消についても、【一方的で理不尽】でなければ認められる。双方話し合いを以って合意されたものに関しては、この法律は適用されない。
要は、根底に、【誠実な対応】があるかどうか、お互いに円満に遺恨を残さないことが重要であるのだ。
不仲であることで、家が傾くようなことは国としても望んではいない。しかし、片方だけに不利益があるような解消や諍いが起こることで国として不利益と見做されるものは、認められないこととなった。
こうして、リオノーラとデビッドの二人の行く末は全く違うものとなった。
その間、当事者とされた二組の婚約者たちは、婚約の状態のまま留め置かれた。
リオノーラは、国をまたぐ婚姻であったため、準備期間を要することもありさほど問題にはならなかったが、デビッドたちは違っていた。
教育の最中に、エイミーの腹に子が宿った。シェリンガム侯爵は、子ができた以上婚姻を先にと議会に申し出たが、この案件の当事者である以上、そして、この件はどちらも裁判沙汰にはせず、司法での決着がなかった以上、議会の議論終了までは許可できないと通達があった。
アストリッド公爵側が、提案した議論に答えが出てから、司法に掛けると宣言していたことも、許可が出ない一因だった。
議論の結果次第では、どちらかに何某かの対処が必要になる可能性があるからだ。
結局未婚のまま、デビッドたち二人の間には女の子が生まれた。
髪の色はデビッドと同じ色だったが、瞳の色は濃い緑の瞳だった。若草色のエイミーの瞳が濃くなったのだと言われれば、そう言えなくもないが、シェリンガム家ではその色に疑問を抱いた。
ただ、本当に二人の子なのか、判別することはこの国の技術では難しい。紫のデビッドの瞳と若草色が混じっているのだとエイミーが主張するため、そのままシェリンガム家の別邸でエイミーのそばで育てられることとなった。
その子が1歳を迎える頃、議会の結論が出て法が公布された。
それをもって、アストリッド公爵から、デビッドとエイミーに裁判が起こされた。
提訴内容は、二人に対しての貴族籍の剥奪。そしてリオノーラの冤罪の証明と、名誉回復であった。
裁判は、すぐに決着した。デビッドが主張していたエイミーに対する虐めの証拠は何処にもなかった。
リオノーラは、国選の交換留学生であったため、お互いの国の機密情報を保護するためにも、出される手紙や書簡はすべて調査・検閲されていたし、リオノーラもすべて提出していた。また監視もついていたため、秘密裏に人を使って国まで指示を出すことなどできる状態ではなかったことが証明された。これは王家が主導の証言のため、証拠としての信憑性は高く、重要視された。
逆にデビッドたちの主張は、物証が乏しく、思い込みの噂話が中心だったため、リオノーラを断罪するに足る証拠は提示できなかった。
その結果、新たに制定された法律が適用されることとなった。
法律の内容は、主に、【理不尽及び一方的に婚約及び婚姻を解消する理由が、不貞の場合、その原因となる不貞を犯した側(不貞相手も含む)は貴族としての身分を手放すこと】。
この国において、大多数を占める国民は平民だ。平民は、自由恋愛であり、そして婚姻も比較的自由にできる。助け合い、愛し合い、生活を営むことを良しとしているからだ。そうして国で生活することはひいては国が栄えることにもなる。
貴族には、自領の領民を守り、反映させていく義務がある。そのために利益を優先した婚姻が推奨される傾向にあり、そうして結ばれた利益在りきの間柄であっても、互いに支え合うことが良しとされている。
【恋愛】を理由に、不貞を犯し、話し合いもせず、一方的に婚約もしくは婚姻を破棄した場合は、平民と同じく【愛をもって助け合う家庭を希望している】と見做され、平民とすることが妥当、ということになったのだ。
【真実の愛】を貫くためには、一般の市民として愛を証明せねばならない、ということだ。
そのことから、デビッドとエイミーには、生まれた子供も含め、貴族籍の剥奪が通達された。そのうえで、二人には【真実の愛】を貫くことを認め、婚姻することが認められた。ただし、ここまでの騒動が起きた以上、離婚することは認められないとされた。
同時にリオノーラには、相手方の主張がすべて冤罪であったことが証明され、シェリンガム侯爵家とペイン男爵側から慰謝料の支払いを受けることが決まった。
しかし、リオノーラは、名誉の回復のみを希望し、冤罪が証明されただけで良しとし、双方からの慰謝料については受け取らないとした。
シェリンガム侯爵家からは再度の審判の申し立てがあったが、却下された。それにより、シェリンガム家は後継を失うことになった。
その後、侯爵の縁者から養子を取り、後継として養育することが決まった。
これをもって、施行された法律は、実際の事案に用いられることが提示された形となり、貴族における【自由恋愛】ブームに一石を投じることとなった。
法律は、全ての恋愛を否定するわけではない。もちろん貴族であっても恋愛での結婚は存在していい。が、それであっても家を守ることは優先され、それを阻害しないことが重要であるとされた。
また、婚約や婚姻の解消についても、【一方的で理不尽】でなければ認められる。双方話し合いを以って合意されたものに関しては、この法律は適用されない。
要は、根底に、【誠実な対応】があるかどうか、お互いに円満に遺恨を残さないことが重要であるのだ。
不仲であることで、家が傾くようなことは国としても望んではいない。しかし、片方だけに不利益があるような解消や諍いが起こることで国として不利益と見做されるものは、認められないこととなった。
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