銀狐と宝石の街 〜禁忌のプロジェクトと神と術師の契約〜

百田 万夜子

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四章 まるで幻想物語

205 棕矢 ◆ Sohya 二年半後

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XX27年に、私達がお狐さまと〝契約〟を交わし…あれから二年半。
一昨年と昨年の祈りの日は天気が良かったのだが、今年 XX30年 五月五日は、天気雨になった。A氏達工匠を含め、街の者たちは不安そうな顔をして、大木の周りにも人が数えるほどしか居ない。今までで一番、集まりが悪いかもしれない。
まあ…何も知らないのだから仕方がない。
「もう、終わったんだ」

   *

「今年…雨だな」
あきらが言うと、あきらが遠くを眺めながら言う。
「うーん。つい先程さっき、降ってきたばっかりなのに、もう向こうの空は明るいし、雲の流れも速いみたいだから…これじゃあ、少しだけ天気雨になりそうですね」
「ま、まだ判らないだろう? お前は気象予報士か?」
「あはは。いいえ、違います」
「きっと大丈夫よ」
アキラ達のやり取りを聞いていた恭が言うと、劍が少し不安そうな表情かおをしながらも頷いた。
「…うん」
「さあ。私は、そろそろ支度をして行くよ」
私が立ち上がると、皆もそれぞれ動き出す。
口ではあんな風に言いながらも、もう私達は〝起こらない〟という確信を持っていた。
……お狐さまを、信じているから。

それに今も、時々だが、私はお狐さまと会っているから尚更だ。


けれど…
私達の使命は、まだ始まったばかり。



雨や霧の日は、ルナのお狐さまが街にいらっしゃる時。
此方側の世界に雨が降れば、お狐さまは直ぐ近くで、わたし達を見ていらっしゃる。逆に、晴れている日には、そのとき雨降る地のお傍にいらっしゃる。
わたし達を、見守ってくださるのです。

それから、これは私達だけの大切な〝使命〟

〝お狐さま〟と〝表裏の私達〟は、この街を支えているのです。
表裏の私達だけが、お狐さまの望みを聞き、叶えられるから。
ふたつの世界の私達と、お狐さまは常に内密に協力しなければなりません。
そして、NidArgentアルジャンRenardルナールの〝釣合バランス〟を維持する為、決して〝中和〟と〝祈りの儀式と奉納品〟を絶やさないこと。

全ては〝この本〟にあります。〝この本〟を守り抜き、伝え続けなさい。

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