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四章 まるで幻想物語

200 惺 ◇ AKIRA 裏の恭の短銃

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◇裏の恭の短銃
「なあ」と、あきらがおずおずと切り出す。
「ん?」
反対側そっちの恭が持ってた、あの短銃〟棕矢おまえが作ったのか?」
「いや、あれは〝本物〟です」
「本物…」
「コルト・パイソン」
棕矢そうやさんの発した単語には聞き覚えがあった。僕は孤児院で見た図鑑や映画の場面シーンを思い出して言う。
「ああ。うろ覚えですけど『リボルバーのロールス・ロイス』って言われている、要にそこそこ名の知れた銃ですかね」
「本物の銃?」「コルト・パイソン…?」
兄妹が神妙な顔付きになり、空気が少し重くなる。
……はあ。これじゃ、また重苦しい雰囲気になっちゃいますねえ。
「じゃあ。僕、本当に危機一髪でしたね」
突然、軽い調子で言う僕に「そうですね」と、くすくす笑って答える反対側の棕矢さん。
そして、少し懐かしそうに、反対側の棕矢かれは語り出した。
「恭は…なぜか判らないが…ある日、急に〝パイソン〟を持って帰ってきたんだ。
何事かと思ったよ。
どこからこんな物、持ってきたんだ? とか色々と訊いたのだけれど、全く教えてくれなくてね。
しかも『これを使いこなせるようになるのよ』とか言い出して…いくら止めても聞かなくて…」
彼は困ったように〝兄〟の顔で、優しく微笑む。
「そ、そちら側の私は…結構、大胆みたいね」
「うん。恭姉と真逆の人だった…」
恭さんが苦笑いするとあきらが即答した。
「そう…。うふふっ、ちょっと憧れちゃうわ」
「え…駄目」
意外な恭さんの反応に、劍が急に不安そうにおろおろとする。ちょっと面白い。
「〝恭〟は一度決めたら意地でも、とことんやろうとするから。結局、私が折れて、庭に結界を張って練習させたんです」
反対側の棕矢さんが、そんな二人を一瞥いちべつしてから、また話し出す。
「ああ…だから、あんなに、しっかり撃てたんですね」
「あはは。そうかもしれないな」
「そうでしょう? 普通、あんなに華奢な身体だと、撃った反動で吹き飛んじゃいますから」
「そうだな」
すると、からかう口調で、こちら側の棕矢が言う。
「でも、君の事だから、恭さんの射撃の補助に、魔性具でも持たせているのだろう?」
「御明察」
……まあ、流石に自覚してますよね。向こう側の恭さんに〝お兄様あなたは甘い〟って。
案の定、問われた棕矢さんは苦笑いしている。
小さな声で「お兄様は、お兄様ね」と、恭さんが嬉しそうに呟いた。
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