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四章 まるで幻想物語
187 ◆□■◇ これからの事
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◆□■◇
数日後。五人の様子も落ち着いてきて、日々ぎこちなさは薄れ、いくらか会話も交わすようになっていた。そんな某日の夜…彼等は、再び仕事部屋に集まっていた。
今宵も件の本を中心に、輪になって座っている。
「アキラ君たち、二人には。まだ話していない事がある」
「何ですか?」
「先日、説明した通り…アキラ君たちは〝表裏の世界を維持する〟〝中和〟の為に生み出された存在だ」
「はい」
「…うん」
「全員、目を閉じてください」
碧い瞳の男が、きょとんとする四人の顔を順に見回して言う。
意味ありげな、男の真剣な表情と声色に圧され、少年達はすぐに目を閉じる。
男は、それを確認すると、彼等と同じように目を閉じた。
*
『あちら側の夫婦が、動き出した
夫婦と〝彼等が創造したモノ〟を、大木まで連れて来い』
*
「こんばんは」
「こんばんは、棕矢君。今日は、どうされたんですか?」
「今日は…貴方に頼みがあって来ました。
貴方達が〝創造したモノ〟と一緒に、明日の夜…ルナの大木まで来てください」
*
サクッ
「どうも、こんばんは」
「こんばんは。棕矢君」
……さあ。役者は揃った。
『始めよう』
「教えてくれ。君はなぜ、私達と…この子達を、ここに呼んだんだ?」
『で? 貴方としては、何で皆を集めたんだ?』
『…アレが可か不可か、判断を下す為だ』
『やっぱりそうなのか』
「貴方達を呼んだ理由は…その子達に、中和の役目が果たせるかどうか。念の為、確認させて貰いたくて、お呼びしました」
「か、確認って…。分かった。頼む」
『…だってさ』
「大丈夫だ。これで良い」
*
……彼等が暗転の先に見たのは、まるで古い映画のようなセピア色の世界。
それは〝碧い瞳の棕矢〟の記憶であり、お狐さまと祖父の記憶でもあった。
「お…お祖父様と、お祖母様が抱いていたのが、アキラ君達?」
目を開け、ぼんやりとした表情で少女が問うと、「ああ」と碧い瞳の男が首肯する。
「…中和」
二人のアキラは、ちらりと互いの顔を見遣る。碧い瞳の男が、少年達に強い視線を向け、言った。
「君達に〝頼み〟があるんだ」
「頼み…ですか?」
「……何?」
「今後、私の補助をお願いしたいと思っているんだ」
碧い瞳の男の事を真っ直ぐに見詰め返す少年達は、黙し…男の次の言葉に耳を傾ける。
「具体的に補助というのは…
お狐さまが対応しきれない分の、正門以外で表裏の世界を繋ぐ、小規模な門…『通り道』と、その通り道を闇雲に往来し得る『アラユルモノ』と『少女の魂』の管理です。
アラユルモノの場合、反対側の世界に現れてしまったり、少女のように〝違うところ〟から入り込んでしまったりしたら、『それ』を保護、または討伐しなければならない事もあるだろう。各世界に存在するモノの数等に偏りが出ない様…世界の理に歪みが出ないようにする為だ。
『お狐さまが見初めた少女』の場合は、大抵は〝無意識的にそれぞれの世界に戻って来てしまう〟から極力、その都度〝『彼女達』を速やかに連れ戻してあげなければならない〟んだ。
でないと、通り道を介して〝地上にカエッテキタ少女の数だけ、矛盾が生まれ『禁忌の代償』が増え続けてしまうから〟だ。
今まで、これ等の管理は、お狐さまが情報をくれる事もあって、私ひとりでやっていたのだが、ここ数ヶ月の内に、段々手が回らなくなってきたんだ…。まだ、ちゃんとした統計が取れていないから、なぜかは分かっていない。
数日後。五人の様子も落ち着いてきて、日々ぎこちなさは薄れ、いくらか会話も交わすようになっていた。そんな某日の夜…彼等は、再び仕事部屋に集まっていた。
今宵も件の本を中心に、輪になって座っている。
「アキラ君たち、二人には。まだ話していない事がある」
「何ですか?」
「先日、説明した通り…アキラ君たちは〝表裏の世界を維持する〟〝中和〟の為に生み出された存在だ」
「はい」
「…うん」
「全員、目を閉じてください」
碧い瞳の男が、きょとんとする四人の顔を順に見回して言う。
意味ありげな、男の真剣な表情と声色に圧され、少年達はすぐに目を閉じる。
男は、それを確認すると、彼等と同じように目を閉じた。
*
『あちら側の夫婦が、動き出した
夫婦と〝彼等が創造したモノ〟を、大木まで連れて来い』
*
「こんばんは」
「こんばんは、棕矢君。今日は、どうされたんですか?」
「今日は…貴方に頼みがあって来ました。
貴方達が〝創造したモノ〟と一緒に、明日の夜…ルナの大木まで来てください」
*
サクッ
「どうも、こんばんは」
「こんばんは。棕矢君」
……さあ。役者は揃った。
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『で? 貴方としては、何で皆を集めたんだ?』
『…アレが可か不可か、判断を下す為だ』
『やっぱりそうなのか』
「貴方達を呼んだ理由は…その子達に、中和の役目が果たせるかどうか。念の為、確認させて貰いたくて、お呼びしました」
「か、確認って…。分かった。頼む」
『…だってさ』
「大丈夫だ。これで良い」
*
……彼等が暗転の先に見たのは、まるで古い映画のようなセピア色の世界。
それは〝碧い瞳の棕矢〟の記憶であり、お狐さまと祖父の記憶でもあった。
「お…お祖父様と、お祖母様が抱いていたのが、アキラ君達?」
目を開け、ぼんやりとした表情で少女が問うと、「ああ」と碧い瞳の男が首肯する。
「…中和」
二人のアキラは、ちらりと互いの顔を見遣る。碧い瞳の男が、少年達に強い視線を向け、言った。
「君達に〝頼み〟があるんだ」
「頼み…ですか?」
「……何?」
「今後、私の補助をお願いしたいと思っているんだ」
碧い瞳の男の事を真っ直ぐに見詰め返す少年達は、黙し…男の次の言葉に耳を傾ける。
「具体的に補助というのは…
お狐さまが対応しきれない分の、正門以外で表裏の世界を繋ぐ、小規模な門…『通り道』と、その通り道を闇雲に往来し得る『アラユルモノ』と『少女の魂』の管理です。
アラユルモノの場合、反対側の世界に現れてしまったり、少女のように〝違うところ〟から入り込んでしまったりしたら、『それ』を保護、または討伐しなければならない事もあるだろう。各世界に存在するモノの数等に偏りが出ない様…世界の理に歪みが出ないようにする為だ。
『お狐さまが見初めた少女』の場合は、大抵は〝無意識的にそれぞれの世界に戻って来てしまう〟から極力、その都度〝『彼女達』を速やかに連れ戻してあげなければならない〟んだ。
でないと、通り道を介して〝地上にカエッテキタ少女の数だけ、矛盾が生まれ『禁忌の代償』が増え続けてしまうから〟だ。
今まで、これ等の管理は、お狐さまが情報をくれる事もあって、私ひとりでやっていたのだが、ここ数ヶ月の内に、段々手が回らなくなってきたんだ…。まだ、ちゃんとした統計が取れていないから、なぜかは分かっていない。
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