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四章 まるで幻想物語
183 ◆□■◇ 幻想物語
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◆□■◇
小さな部屋に、五人の男と女が居る。
部屋には木製の机と椅子、小さな本棚、分厚いカーテンが掛かった小窓があるだけ。
五人の男女は向き合い、円を描いて床に座り、彼等の中央には照明を反射し、微かに煌めく茶色の本が一冊、置かれている。
瞳の色を除いて、あとは全く同じ姿をした男が二人…その片方が口を開いた。
「私が全てを話そう…」
*
この数日間の内に、二人の棕矢が話したことは、
彼等にとって、長い長い〝幻想物語〟のように感じたのだろうか。
それとも、嘘だと思いながらも、少しは「これは現実」なのだと信じているのだろうか…。
*
「…これが全てだ」
同じ姿をした男二人が同時に、同じ声で締め括る。
鮮血のように澄んだ紅色の切れ長の瞳で、一点を見詰めている黒髪の少年。
憂いを帯びた色素の薄い瞳を、同色の柔らかそうな前髪の隙間から覗かせる少年。
ドレスみたいな凝った服を纏った少女は、俯いて両手を膝の上で組んでいる。
「君達は…」
碧い瞳をした男が口を開く。低い声が、小部屋を満たす。
惺…劍…恭……
今の話と〝自分の存在〟を受け入れられるか?
男の真っ直ぐな瞳と、真剣な声から「この問は甘くない」という気持ちが伝わってくる。
「今すぐに全てを受け入れろ、なんて言わないさ。〝それぞれ〟よく考えてから、正直な答えを出してくれ」
表裏のルナの鉱物から創られた二人の…対のアキラと、この世界にカエッテキタ恭。
二人の男…対の棕矢。
五人からは、複雑な表情と感情が滲み出していた。
「答えが出た頃に、また話そう。これが全て、と言っても、まだ伝えないといけない事が残っている」
さあ『未来』を決める瞬間まで、あと少し。
小さな部屋に、五人の男と女が居る。
部屋には木製の机と椅子、小さな本棚、分厚いカーテンが掛かった小窓があるだけ。
五人の男女は向き合い、円を描いて床に座り、彼等の中央には照明を反射し、微かに煌めく茶色の本が一冊、置かれている。
瞳の色を除いて、あとは全く同じ姿をした男が二人…その片方が口を開いた。
「私が全てを話そう…」
*
この数日間の内に、二人の棕矢が話したことは、
彼等にとって、長い長い〝幻想物語〟のように感じたのだろうか。
それとも、嘘だと思いながらも、少しは「これは現実」なのだと信じているのだろうか…。
*
「…これが全てだ」
同じ姿をした男二人が同時に、同じ声で締め括る。
鮮血のように澄んだ紅色の切れ長の瞳で、一点を見詰めている黒髪の少年。
憂いを帯びた色素の薄い瞳を、同色の柔らかそうな前髪の隙間から覗かせる少年。
ドレスみたいな凝った服を纏った少女は、俯いて両手を膝の上で組んでいる。
「君達は…」
碧い瞳をした男が口を開く。低い声が、小部屋を満たす。
惺…劍…恭……
今の話と〝自分の存在〟を受け入れられるか?
男の真っ直ぐな瞳と、真剣な声から「この問は甘くない」という気持ちが伝わってくる。
「今すぐに全てを受け入れろ、なんて言わないさ。〝それぞれ〟よく考えてから、正直な答えを出してくれ」
表裏のルナの鉱物から創られた二人の…対のアキラと、この世界にカエッテキタ恭。
二人の男…対の棕矢。
五人からは、複雑な表情と感情が滲み出していた。
「答えが出た頃に、また話そう。これが全て、と言っても、まだ伝えないといけない事が残っている」
さあ『未来』を決める瞬間まで、あと少し。
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