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二章 ハンタイガワ

143 恭 ◇ Kyoh お兄様と

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XX27年 7月

今日は、お兄様とお買い物です。
お店で使う食材と香辛料が少なくなっちゃって…珍しく、ルナの外まで行くの。
鈍行列車に乗って、浜辺を通り過ぎ、トンネルを抜け…約一時間。
やっと、目的の街に着きました。
この辺りの地域でも、特に商業が栄えていて、有名な所なの。衣食住に関わる、有りと有らゆるお店がたくさん! それに、知る人ぞ知る大通りから外れた書店や、様々な老舗も探せば、結構あるのよ。
数ヶ月に一度しか来ないし、私はお留守番の事も多いから、お兄様に付き添える日は、いつも、うきうきしちゃいます。「今日は、どんなお店に出会えるかしら」って。
あとは…「お兄様と二人きりになれるから」なんて、ふふっ。

   *

今日の一番の目的は、香辛料の調達。お祖父様がよく通っていた、というお店に向かいます。ちなみに「会社メーカーより質」っていうのがお祖父様の口癖だったそうよ。
お店に入ると、お兄様とおじいさん店主さんが楽しそうに話をしているものだから、私は待つ間、店内探索です。色とりどりの粉末、見た事も無い植物の実や葉が綺麗な木箱や瓶に詰められ整然と並んでいます。その中に、お庭に植えてあるハーブを見付けた時は、ちょっと嬉しくなる。木箱とたくさんの香辛料の香りが何だかくすぐったくて、いつの間にか夢中になっていました…。
だから気付けば、お兄様は既に目当ての物を買い、包んで貰っているところでした。

   *

それから、数件のお店を回り…
「はあ。ちょっと疲れちゃった」
夕方。私が溜息混じりに言うと、お兄様は「ごめんごめん。荷物持たせて」と私の手から紙袋を取りました。
「あ、いえ! それ軽いから、私持つわ」
手を伸ばしたのだけれど、結局あっけなくお兄様に持っていかれちゃいました…。
私が申し訳なさそうにしていたからか、お兄様が言いました。

「夕飯、食べてから帰ろうか」
「…はい!」
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