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二章 ハンタイガワ
135 惺 ◇ AKIRA お伺いしましょうか
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僕が屋根裏…要に〝例の仕事部屋〟を見せて貰ってから数日後の事。
カウンターで恭さんと棕矢が食器を片付けていた。
「お兄様?」
「うん?」
「ちょっと、思い出しただけなんだけれど…」
*
……ん? 二人の会話が遠くから聞こえてくる。
ちなみに僕は部屋の奥、庭に面した窓際の長椅子で、棕矢が貸してくれた推理小説を読んでいた。ここ、日向で暖かいんだ。
本を読みながら、ぼんやりと兄妹の会話を盗み聞きする。
*
「お兄様が、昔よく見せてくれた図鑑あったじゃない?」
「え? …ああ。それで? あの図鑑が何だって?」
「ううん…ほんとに、ふと思い出しただけなの!」
ちょっと、恭さんの語尾に違和感があったものの、何か誤魔化しているわけでもなさそうですね。
***
夕方、昼間の会話が気になって、開店準備をしていた棕矢に声を掛ける。
「なあ。昼間、恭さんが言ってた図鑑って…」
「ん? ああ。聞いてたのか。多分、今、お前が想像してるもので合ってるよ」
……また、よく心を読む奴。
「うん。じゃあ、やっぱり…この間、屋根裏で見たやつ?」
「多分な。でもまあ、恭には毎日のように色んな本を見せてやってたから、どれの事を指していたか定かじゃないがな」
多分〝それ〟の事だよ、と彼は改めて少し強調するように言った。
奥の机まで拭き終えると戻ってくる。そして綺麗な口元を歪ませ、にやにやしながら肘で小突いてきた。
「何だよ。気になるか?」
…ったく。
「ご明察。ぜひ、お伺いしましょうか」
僕も笑いながら、大袈裟に恰好を付けて返した。
カウンターで恭さんと棕矢が食器を片付けていた。
「お兄様?」
「うん?」
「ちょっと、思い出しただけなんだけれど…」
*
……ん? 二人の会話が遠くから聞こえてくる。
ちなみに僕は部屋の奥、庭に面した窓際の長椅子で、棕矢が貸してくれた推理小説を読んでいた。ここ、日向で暖かいんだ。
本を読みながら、ぼんやりと兄妹の会話を盗み聞きする。
*
「お兄様が、昔よく見せてくれた図鑑あったじゃない?」
「え? …ああ。それで? あの図鑑が何だって?」
「ううん…ほんとに、ふと思い出しただけなの!」
ちょっと、恭さんの語尾に違和感があったものの、何か誤魔化しているわけでもなさそうですね。
***
夕方、昼間の会話が気になって、開店準備をしていた棕矢に声を掛ける。
「なあ。昼間、恭さんが言ってた図鑑って…」
「ん? ああ。聞いてたのか。多分、今、お前が想像してるもので合ってるよ」
……また、よく心を読む奴。
「うん。じゃあ、やっぱり…この間、屋根裏で見たやつ?」
「多分な。でもまあ、恭には毎日のように色んな本を見せてやってたから、どれの事を指していたか定かじゃないがな」
多分〝それ〟の事だよ、と彼は改めて少し強調するように言った。
奥の机まで拭き終えると戻ってくる。そして綺麗な口元を歪ませ、にやにやしながら肘で小突いてきた。
「何だよ。気になるか?」
…ったく。
「ご明察。ぜひ、お伺いしましょうか」
僕も笑いながら、大袈裟に恰好を付けて返した。
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