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一章 Nid=Argent・Renard

83 棕矢 ◆ Sohya 力になりたい

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XX14年

七月末に、お祖母様ばあさまが亡くなって…
祖父様じいさまが原因不明で倒れてから、あっと言う間に二ヵ月が過ぎていた。

最近、俺はずっと考えている事がある。
それは「御祈りの儀式」と「店」についてだった。
儀式については、今年の御祈りは急遽、工匠のAさん、Bさん、Cさんが体調の優れないお祖父様の代わりに色々と飛躍してくれたんだ…けれど俺はまだまだ力が及ばず、手伝えないから本当に丸投げ状態だった。

店については、本業では無いといえども、このまま畳む訳にもいかないだろう…。
ただでさえ街で有名だから、皆、お祖父様達が倒れた事は知っているし、周囲の理解はあるかも知れない。けれど…どちらかと言うと、俺が店を辞めたくなかった。常連さんも多かったし、「ここを好いてくれていた人達に、逃げの意味では甘えたくない。安心して、また店に来て欲しい」という思いの方が強かった。


「だから…! どうにかして俺も力になりたい!」

俺は日々、僅かな空き時間を見付けては、ひたすら勉強をした。
〝工匠の技術〟や〝魔性具ましょうぐ〟に関しては、お祖父様から一つでも多く情報を貰い、本や自分なりの方法を見付け掘り下げていった。儀式の進行や、今まで知らなかった術については、Cさん達に半ば無茶を言って、指導して貰っている。彼等は俺の意志を知っているからこそ、快く付き合ってくれた。

店については、ハーブや料理の知識が豊富な、お祖母様に色々聞けたら一番なのだが…今、それは叶わない。「お祖母様が元気な時に、もっともっと聞いておけば良かった」と深く後悔した。だから、とことん本で勉強した。お祖母様が大事にしていたハーブ図鑑や園芸書、料理本も、自分の部屋に持ち込んでは毎晩、読みふけった。

時々、近所で会ったり、お祖父様を心配して様子を見に来てくれたりする常連客も居たので、その時はお気に入りのメニューについてや、ハーブ、お茶、珈琲、お酒…と色んな情報を提供して貰い、その都度どんなに小さな事でも手帳にまとめていった。
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