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一章 Nid=Argent・Renard
69 裏の棕矢 ◆ The back side of Shoya 明日の夜
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ある夜、俺は館の門の外に立って居た。勿論、自宅ではない。反対側の館だ。
ここからは遠目に丁度ハーブの庭が見え、辛うじてだが店内の様子も窓から少しは窺える。
ガチャ
「よし。終わった…か」
視線の先には、〝こちら側の祖父〟が居る。彼が玄関から出て来たところだった。
仕事着で、ワイシャツの袖を捲り上げた恰好だ。実に様になっている。
彼は玄関に掛かった店の開店、閉店を報せる看板を裏返す。俺は少し離れたところから館の周りに張ってあった結界を解き、祖父のもとへと向かう。
夜風が、マントを舞い上げた。
「こんばんは」
「こんばんは、棕矢君」
声を掛けると、彼はこちらに背を向けたまま言った。
やはり結界を一瞬でも解いただけで、この人は〝俺〟だと気付いていたらしい。
いや、まあ彼は熟練な上〝工匠の技術〟を操れる人間なんて、数が限られているからな。そう考えたら、別に驚く事でもないのか。
「今日は、どうされたんですか?」と、彼が振り返りながら静かに問う。
「今日は…」
*
『あちら側の夫婦が、動き出した』
それは、昨晩のこと。
俺のところに来たお狐さまが下した、次の使命だった。
『夫婦と〝彼等が創造したモノ〟を、大木まで連れて来い』…と。
*
「貴方達が〝創造したモノ〟と一緒に、明日の夜…ルナの大木まで来てください」
それを受け、祖父の表情が引き締まる。
そして、何故と問う事もなく「解った」と頷いた。
ここからは遠目に丁度ハーブの庭が見え、辛うじてだが店内の様子も窓から少しは窺える。
ガチャ
「よし。終わった…か」
視線の先には、〝こちら側の祖父〟が居る。彼が玄関から出て来たところだった。
仕事着で、ワイシャツの袖を捲り上げた恰好だ。実に様になっている。
彼は玄関に掛かった店の開店、閉店を報せる看板を裏返す。俺は少し離れたところから館の周りに張ってあった結界を解き、祖父のもとへと向かう。
夜風が、マントを舞い上げた。
「こんばんは」
「こんばんは、棕矢君」
声を掛けると、彼はこちらに背を向けたまま言った。
やはり結界を一瞬でも解いただけで、この人は〝俺〟だと気付いていたらしい。
いや、まあ彼は熟練な上〝工匠の技術〟を操れる人間なんて、数が限られているからな。そう考えたら、別に驚く事でもないのか。
「今日は、どうされたんですか?」と、彼が振り返りながら静かに問う。
「今日は…」
*
『あちら側の夫婦が、動き出した』
それは、昨晩のこと。
俺のところに来たお狐さまが下した、次の使命だった。
『夫婦と〝彼等が創造したモノ〟を、大木まで連れて来い』…と。
*
「貴方達が〝創造したモノ〟と一緒に、明日の夜…ルナの大木まで来てください」
それを受け、祖父の表情が引き締まる。
そして、何故と問う事もなく「解った」と頷いた。
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