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一章 Nid=Argent・Renard
49 棕矢 ◆ Sohya 碧と金の瞳
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〝鮮やかな夢〟は一瞬にして、白い霧に呑み込まれた。
……霧?
「棕矢!」
あれ?
お祖父様が呼んでいる気がする…。
どうしたんだろう?
「棕矢…棕矢! おい! しっかりしなさい!!」
うん?
僕は大丈夫だよ…?
どうして、そんな辛そうな顔してるの?
ねえ! それより、お祖父様!
あのね、恭が! 本当に、僕、恭に会えたんだよ!
……この時、僕が自分に何が起こっていたのか、知る由もなかった。
***
気付くと…僕は、お祖父様とお祖母様の寝室で、寝かされていた。
窓のカーテンは閉め切られていて、朦朧とした頭では、時刻が判らない。
仰向けのまま視線だけで部屋をざっと見渡したけれど、お祖父様達は、部屋には居ないみたいだった。
「ん…?」
ふと手に重みがあって、見ると〝妹〟が手を握っていた。小さな両手は〝前〟と変わらずに僕の左手を、ぎゅっと握っている。そして、僕と同じベッドの上で眠っていた。服は、最初に見た、ワンピースではなく、小花柄の寝間着になっていた。
それから見た事のない小さい髪飾りを付けていた。小さな鉱物が付いた髪飾り。ああ、鉱物が付いているってことは、お祖父様が作ったのかな。何となくそう思った。
……計画は成功したって事なのかな。
今、恭が目の前にちゃんと居て、僕に触れている事が、まだ夢みたいで…少し不安になる。けれど。
「…あ、手。ちゃんと、あったかい」
とても心地の好い、安心感。また少し眠くなる。
「んん」
恭がもぞもぞと動く。そして、ゆっくりと瞳が開いた。
……え?
僕を捉えた真ん丸の二つの瞳は〝違った〟んだ。
違和感しかなかった。
だって「瞳…」
正直、不気味にも思ってしまう光景に悲鳴すら上がらなかった。
だって元々…恭の瞳の色は、僕と同じ色で。お祖母様の青緑に近いけれど、違う色で。そうかと言って、お父様と、お祖父様みたいな綺麗な碧色ともちょっと違う〝独特な碧色〟だったから。
よく周りの人達に「兄妹で、目の色がそっくりね」って言われていた。
でも、目の前でこちらを見詰めている色は、違う。
〝この子〟の左目は、変わらず〝僕達の碧色〟だった。
でも、右目…右目だけは違う…〝金色〟みたいな濃い黄色だったんだ。
……霧?
「棕矢!」
あれ?
お祖父様が呼んでいる気がする…。
どうしたんだろう?
「棕矢…棕矢! おい! しっかりしなさい!!」
うん?
僕は大丈夫だよ…?
どうして、そんな辛そうな顔してるの?
ねえ! それより、お祖父様!
あのね、恭が! 本当に、僕、恭に会えたんだよ!
……この時、僕が自分に何が起こっていたのか、知る由もなかった。
***
気付くと…僕は、お祖父様とお祖母様の寝室で、寝かされていた。
窓のカーテンは閉め切られていて、朦朧とした頭では、時刻が判らない。
仰向けのまま視線だけで部屋をざっと見渡したけれど、お祖父様達は、部屋には居ないみたいだった。
「ん…?」
ふと手に重みがあって、見ると〝妹〟が手を握っていた。小さな両手は〝前〟と変わらずに僕の左手を、ぎゅっと握っている。そして、僕と同じベッドの上で眠っていた。服は、最初に見た、ワンピースではなく、小花柄の寝間着になっていた。
それから見た事のない小さい髪飾りを付けていた。小さな鉱物が付いた髪飾り。ああ、鉱物が付いているってことは、お祖父様が作ったのかな。何となくそう思った。
……計画は成功したって事なのかな。
今、恭が目の前にちゃんと居て、僕に触れている事が、まだ夢みたいで…少し不安になる。けれど。
「…あ、手。ちゃんと、あったかい」
とても心地の好い、安心感。また少し眠くなる。
「んん」
恭がもぞもぞと動く。そして、ゆっくりと瞳が開いた。
……え?
僕を捉えた真ん丸の二つの瞳は〝違った〟んだ。
違和感しかなかった。
だって「瞳…」
正直、不気味にも思ってしまう光景に悲鳴すら上がらなかった。
だって元々…恭の瞳の色は、僕と同じ色で。お祖母様の青緑に近いけれど、違う色で。そうかと言って、お父様と、お祖父様みたいな綺麗な碧色ともちょっと違う〝独特な碧色〟だったから。
よく周りの人達に「兄妹で、目の色がそっくりね」って言われていた。
でも、目の前でこちらを見詰めている色は、違う。
〝この子〟の左目は、変わらず〝僕達の碧色〟だった。
でも、右目…右目だけは違う…〝金色〟みたいな濃い黄色だったんだ。
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