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一章 Nid=Argent・Renard

46 棕矢 ◆ Sohya 遂に?

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ふと目を開けると、器の中にはふたつの鉱物いしが足されていた。
気付かなかった…こんなに、直ぐ近くに器があるのに、水音すら聞こえなかった。
熱い塊が、まだ僕の喉を、胸をじりじりと焼いている。
涙で濡れ、ぼんやりとした瞳は、半ば無意識にお祖父様を探していた。

「棕矢…目を閉じて」

諭す様な声がする。優しい、お祖父様の声にも…懐かしい、お父様の声にも聞こえる。深くて優しい響き…。ひとつ息を吐き、再び目を閉じる。
と、微かに〝技術の動き〟を感じた。

その力が、僕の身体を包み込む…。
すると、ついさっきまで全身を焼いていた塊が小さくなっていた。
小さくなった塊は、ゆっくりと溶けて、今は僕のなかに広がっている感じがする。
……?!

その時、突然〝人影〟が見えたんだ!
目をつむっている筈の僕は、びっくりしたけれど、すぐに集中した。
〝その人物ひと〟を見ようと、心のを凝らす。

相手の輪郭が、段々はっきりと見えてくる…と、
その人は…

「あ…!」

きっと声に出ていただろう。
目に映った、その人……いや〝その子〟は…少女の姿をしていたんだ。


「僕達がよく知っている子」の姿を。

その子は、僕と目を合わせると、とても嬉しそうに笑ってくれた。〝その子〟のお気に入りだった、ふんわりとした輪郭線シルエットの白い薄手のワンピースが微かに揺れている。


「…恭!」

僕も笑う。少女と…妹と。


……本当に! 目の前に、本当に恭が居る!!


しかし。
つかの間、〝鮮やかな夢〟は一瞬にして、白い霧に呑み込まれた。
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