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一章 Nid=Argent・Renard

41 祖父 □ grandfather 堂々巡り

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一.まずは、精神統一。
      余計な思考、妄想的記憶を極限まで削ぐこと。

二.次に、生み出すモノを、心から〝想う〟こと。
  真の記憶から、手繰り寄せること。

三.そして、その想いを〝カタチに変える〟こと。
      工匠わたしたちの想いと、念と、技術で。


これが〝過去〟に私が、辛うじて見付け出した〝創造の基礎〟だった。

しかし、この三つ目に当たる部分…〝創造の儀式〟自体には、まだまだ届いていなかった。



   ***



棕矢そうや、良いか?」

「…はい」

私達の落ち着いた声が、結界の中で反響する。


ここは、仕事部屋。
照明は消してあるので、ほぼ暗闇の中。
今宵の月光と、蝋燭ろうそくの淡い灯りだけが、ぼんやりと私と棕矢を照らす。
今夜は、ほんの少し丸みを帯びた下弦の月。
妻は〝工匠の血〟を引いていないので、今回はみせの番を任せている。
それから本棚や机も、今は全て部屋の外に出した。

故に。
今、ここに在るのは、月光と、蝋燭のと、術で清めた地下水、多種多様な数多あまたの鉱物達…。
そして、ルナの鉱物いしと〝あの本〟…。

「…良いか?」

少し間があったが、目を閉じた少年は頷く。

「はい」

「心から〝真の記憶〟を思い浮かべて…恭を感じるんだ。素直に想うんだ」






もう、これで何度目、そして何日目の夜だろうか…。
月は新月も過ぎ、三日月になっていた。
毎日、同じ様に「はい」と言葉では肯定を示す棕矢そうやにも、流石に、明らかな疲れと不安が滲んでいる。本当は、この子の苦しそうな声を聞くのは辛かった…。

それでも、子供ながらに「まだ、大丈夫です」と、真っ直ぐに見詰めてくる、純真無垢な瞳を信じていた。……私と似て非なる、独特な色合いの瞳を。
まずは精神統一をして〝基礎の環境〟を造る。

…しかし。何度やっても、そこ止まりのままだった。
いくら基礎を固めても、この計画プロジェクトは〝完成〟しなければ意味が無い。
解っている。そんなに甘い話じゃないんだ…。
私は身をもって、痛いほど知っているから。
何故なら…。
私が息子達と再会したいが故に、意地を張って〝計画それ〟を試みていた時期ときも、結局は同じ事をしていたからだ。

今と違うのは、前は、私ひとりの力だけで成し遂げようとしていた事くらい。
要に、力を持つ者が二人になっただけで、まだ、同じ事を試している…堂々巡りだった。


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