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一章 Nid=Argent・Renard
27 棕矢 ◆ Sohya 僕ひとりで
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XX11年 6月
僕は、お祖父様達との約束を守れなかった。
大切な家族のひとりを失ってしまった。
僕をあんなに好いてくれていた、恭の事を…守れなかった。
それに、お祖母様だって心身を病まれてしまった。
「僕のせいだ…」
僕は無力だったんだ!
何日も頭の中で、ぐるぐると後悔の念が渦巻いている。
「恭……」
ぽつりと口から出た声は、とても弱々しかった。
けれど、その自分の声で、また泣きそうになる。
お祖父様達は
「お前は、やれる事は、ちゃんとやってくれたんだよ」と。
「大丈夫よ。お兄ちゃんのせいじゃないわ」と、言ってくれる。
そして、優しく抱き締めてくれる。
そんな〝おじいちゃん〟と〝おばあちゃん〟が居てくれたから…。
だから…恭が居なくなってから、一ヶ月くらい経った頃。
「僕に、もっと出来そうな事をしてみよう」と決心した。
それは、少し強い雨降りの日だった。
六月六日の早朝。
お祖父様達が起きる前に、僕は起きた。
静かな朝。
ベッドに寝たまま耳を澄ますと、雨音が聞こえてくる。
この日も、あの決心した日と同じで雨が降っているみたいだ。
今日は…
〝失った後悔の念〟と〝お祖父様とお祖母様への償い〟を込めて、恭を捜す事にしたんだ。
……僕ひとりで。
*
簡単な身支度を済ませ、物音を立てない様にしながら一階に下りていく。
忍び足で、何とか玄関まで辿り着く事は出来た。
僕はひとつ深呼吸をする。そして以前、お祖父様から教えて貰った〝鍵の解除術〟を遣って封印を解除し、その扉を開けた。
……よし。何とか成功。鍵は、ちゃんと開いた!
外に出ると初夏だからか、この時間で雨が降っていても、空は少し明るかった。
持って来た傘を、音が立たない様に気を付けながら広げる。
そして館で、ただ一つの出入り口である門まで、ゆっくりと進む。
注意しながら慎重に歩かないと、この館の〝機巧〟に捕まりそうで怖かったから。
そっと、警戒しながら歩を進めてゆく。
今、僕の心臓は、物凄くドキドキしていて…気を緩めたら、すぐにでも館の中に駆け戻ってしまいそうだ。
「でも…今日こそは、諦められないんだ! もう決めたんだ!」
そう自分を鼓舞する。僕は、門に張られた結界を解除すると外に出た。
お祖父様とお祖母様は、ルナの中で有名らしい。
街の皆、全員が二人を知っていると言っても過言ではないのかも知れない。
きっと、理由は…二人の仕事にあるのだろう。
二人は様々な鉱物を使って、色んなものを作ったり、直したりしている。それに僕が物心ついた時には、もう既に、この仕事をしていたから相当、長いこと続けているのだと思う…。そして、いつか二人に『これは大切な仕事で、守っていかなければならない仕事でもあるんだよ』と、聞かされた事があった。
そう。このまま往けば、きっと僕が跡を継ぐ事になる。
だから今から、お祖父様達から多少の〝技術〟は教わっているんだ。
*
「おじいちゃん達には、どうやったって敵わないけれど…」
僕だって…。
僕が出来る事をやるんだ!
「恭…」
絞り出した声は震えていた。
そして気が付くと、涙が止まらなくなっていた。
「恭…恭!」
大木の下、冷たい雨の中で叫ぶ僕の涙も降り続いた。
僕は、お祖父様達との約束を守れなかった。
大切な家族のひとりを失ってしまった。
僕をあんなに好いてくれていた、恭の事を…守れなかった。
それに、お祖母様だって心身を病まれてしまった。
「僕のせいだ…」
僕は無力だったんだ!
何日も頭の中で、ぐるぐると後悔の念が渦巻いている。
「恭……」
ぽつりと口から出た声は、とても弱々しかった。
けれど、その自分の声で、また泣きそうになる。
お祖父様達は
「お前は、やれる事は、ちゃんとやってくれたんだよ」と。
「大丈夫よ。お兄ちゃんのせいじゃないわ」と、言ってくれる。
そして、優しく抱き締めてくれる。
そんな〝おじいちゃん〟と〝おばあちゃん〟が居てくれたから…。
だから…恭が居なくなってから、一ヶ月くらい経った頃。
「僕に、もっと出来そうな事をしてみよう」と決心した。
それは、少し強い雨降りの日だった。
六月六日の早朝。
お祖父様達が起きる前に、僕は起きた。
静かな朝。
ベッドに寝たまま耳を澄ますと、雨音が聞こえてくる。
この日も、あの決心した日と同じで雨が降っているみたいだ。
今日は…
〝失った後悔の念〟と〝お祖父様とお祖母様への償い〟を込めて、恭を捜す事にしたんだ。
……僕ひとりで。
*
簡単な身支度を済ませ、物音を立てない様にしながら一階に下りていく。
忍び足で、何とか玄関まで辿り着く事は出来た。
僕はひとつ深呼吸をする。そして以前、お祖父様から教えて貰った〝鍵の解除術〟を遣って封印を解除し、その扉を開けた。
……よし。何とか成功。鍵は、ちゃんと開いた!
外に出ると初夏だからか、この時間で雨が降っていても、空は少し明るかった。
持って来た傘を、音が立たない様に気を付けながら広げる。
そして館で、ただ一つの出入り口である門まで、ゆっくりと進む。
注意しながら慎重に歩かないと、この館の〝機巧〟に捕まりそうで怖かったから。
そっと、警戒しながら歩を進めてゆく。
今、僕の心臓は、物凄くドキドキしていて…気を緩めたら、すぐにでも館の中に駆け戻ってしまいそうだ。
「でも…今日こそは、諦められないんだ! もう決めたんだ!」
そう自分を鼓舞する。僕は、門に張られた結界を解除すると外に出た。
お祖父様とお祖母様は、ルナの中で有名らしい。
街の皆、全員が二人を知っていると言っても過言ではないのかも知れない。
きっと、理由は…二人の仕事にあるのだろう。
二人は様々な鉱物を使って、色んなものを作ったり、直したりしている。それに僕が物心ついた時には、もう既に、この仕事をしていたから相当、長いこと続けているのだと思う…。そして、いつか二人に『これは大切な仕事で、守っていかなければならない仕事でもあるんだよ』と、聞かされた事があった。
そう。このまま往けば、きっと僕が跡を継ぐ事になる。
だから今から、お祖父様達から多少の〝技術〟は教わっているんだ。
*
「おじいちゃん達には、どうやったって敵わないけれど…」
僕だって…。
僕が出来る事をやるんだ!
「恭…」
絞り出した声は震えていた。
そして気が付くと、涙が止まらなくなっていた。
「恭…恭!」
大木の下、冷たい雨の中で叫ぶ僕の涙も降り続いた。
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