杏色の空に誘われて

杏栞しえる

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杏色の空に誘われて

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 「杏色の空が好き」
君の言葉をずっと覚えている。
「空なんて何色でもいいじゃないか」
と、素っ気なく言ってしまったことも。あんなこと言わなきゃ良かったんだ。あんなこと言ったから君はセピア色の空へ連れ去られてしまった。頬は杏色で、髪は透き通った栗色だった。僕達はいつも一緒だったし、これからもそのはずだった。でも、君には夕焼けが似合いすぎたから。誰かに呼ばれてしまったんだろうな。
 二人でよく夕日を眺めた丘に、一つ苗を植えた。あれから三年......。その実は杏色に染まり、甘い香りで満ちていた。一つもぎ取って齧ると、甘酸っぱい味がした。そういえば、君の使っていたリップもこの色だった気がする。実った杏色を見ていると、なんだか君が笑いかけるような気がして、中々食べ終わらなかった。食べ終わる頃にはもう、空はセピア色だった。星もからからと笑っているように散りばめられている。杏色に輝く星を見つけたとき、思わずつぶやいた。
「僕も杏色の君が好きだったよ」
空の星がしっとりと輝いて見えた。
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