ほのぼのの魔法

杏栞しえる

文字の大きさ
上 下
2 / 10

雪あそび

しおりを挟む
「白い息がでるよ!」
「ほんとだ」
 弟は雪に向かって走り出した。コロも一緒だ。
「ほら、コロも困ってるだろ」
 黒いラブラドール・レトリーバーのコロはもう人間でいうとおじいちゃんなんだ。お父さんもそう言ってた。
「はーい」
 と弟は肩をすくめてコロのリードをぼくに渡した。
「コロはこっちから通ろう?」
 ぼくとコロは踏みかためられて道になったところを歩く。弟はふかふかの誰も歩いてないところをジャンプしながら進んでいた。この前遊んでいるときに弟は手袋をなくしてお母さんに怒られた。もう忘れてしまったのだろうか。紺色の手袋を雪の上にぽーんっと投げて、素手で雪をすくっている。雪の粉がコロの背中にもかかった。コロはぶるぶるっと大きく体を揺らして、ふかふか雪に飛び込んだ。弟めがけてまっしぐら。たまらずぼくも入って、雪合戦がはじまった――。
「もう! この前新しいの買ってあげたばかりじゃない」
 弟とぼくは二人そろって体を縮めていた。こういう時は下手に言い訳をしない方がいいんだ。だまっていると、お母さんは急にまゆげを下げた。
「そういえば、コロちゃんは?」
「コロなら、玄関に……」
 と、振り向いて驚いた。コロがいなくなっていたのだ。お母さんは慌ててスリッパのままドアを開けた。コロがおすわりしている。
「あ!」
弟が一番に気づいた。
「コロが手袋もってるよ」
コロはしっぽをぶんぶん振って、お母さんに渡した。ゆるしてあげてって、言ってるみたいだ。つぶらな瞳にお母さんのツノもすっかり引っ込んでいて、コロの頭をわしゃわしゃなでた。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

処理中です...