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第2章 龍馬と海
第15話 アルマの願い
しおりを挟む翌日、龍馬達は、領主の城に向かった。
通常、平民が領主に挨拶に伺う時には、何かしらの献上品を持っていく習わしだが、龍馬は、俺はこの世界の民ではないと言って、何も持って居ない。
城は城壁で囲まれ、さらにその周りには、水を張った堀がある。
「城言うがは、どの世界でも同じ様な形をしちゅー。」
と言って、喜んでいる。
入口で門番に、刀を預けるように言われたが、
「この刀は、女神さんにもろうたものやき誰にも渡せんぜよ。」
と言って、押し通した。
城の中に入ると、執事らしい男に待合室に通され、しばらく待つ様に言われた。
龍馬は、部屋の装飾品をベタベタと触っては、エマに、これは何か?と尋ねている。
やがて、執事が戻り一緒に来る様にと部屋の前に案内された。
執事の説明によると、この部屋は、領主の執務室で、領主が龍馬に大変興味を持っていて、ゆっくりと話がしたいので、謁見の間ではなく、ここに、案内されたとの事だった。
執事は、ドアをノックし、ドアをゆっくりと開ける。
そこには、手前に向かったソファーと机が設置されている。
そして、その先には、書類や本が山積みとなった大きな机があった。
そこには、領主が座っているらしいのだが、本が邪魔で見えない。
龍馬達は、執事に促されソファーに座る。
しばらく、沈黙が流れ、しびれを切らした執事が、来客が来た事を告げると、白い手が伸びてきて、机の上にドサッと本が置かれた。
どうやら、読書に夢中で気が付かなかったようだ。
今まで色々な殿様に合ってきたが変人ばかりだった。
この領主もやはり変人なのか?と龍馬は思っていた。
やがて、机の横に現れたのは、何と女性だった。
「始めまして、御使い様。アルマと申します。」
アルマはそう言って、ソファーの反対側に腰を降ろした。
「驚かせて申し訳ありません。実は、兄のアルベールは、ずっと病で臥せっておりまして、今は、私が領主代行なのです。」
「実は、御使い様をお呼びしたのは、私なのです。」
この時、龍馬は、この領主代行に好感を持っていた。
そして、
「面白い女や。この世界にもこがな女性がおるがか?」
と考えている。
「わしゃ、坂本龍馬や。龍馬と呼んでくれ。それで、領主代行様がわしに何のようだい?」
「ええ、一度、御使い様、いえ、龍馬様にお会いしたかったのです。」
「そうやか、大事な用事が、ある思うたんやけんど。」
龍馬は、それ以上は、何も話さずにじっとアルマを見つめる。
「分かりました、正直にお話します。兄の病を治して頂きたいのです。」
聞けば、兄のアルベールは、1年もの間寝たきりだと言う。
アルマは、何とか兄の病を治せないものかと、高名な医者に診てもらったが一向に回復する兆しが無い。
そんな時、女神様の御使いがカインに現れたという噂を聞き、会ってみて、もし本物だったら兄の治療をお願いしようと考えていたという事だった。
「ばっさりやが、わしには治せん。」
「そうですか、残念です。」
龍馬の言葉に落胆していると、龍馬は話を続ける。
「わしゃ治せんけんど、エマさん、頼んだぜよ。」
龍馬は、そう言って、エマの肩を叩いた。
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