龍馬が【異世界を】ゆく

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第2章 龍馬と海

第10話 女神の御使い

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龍馬は、膝に乗せた子供と他愛もない話を始める。

何と云う名前だとか、何処の出身だとか、そして、エマのお菓子を女の子のポケットに入れた。

少女は、近くの孤児院にいて、毎日雑用を手伝い、わずかな賃金を得ているらしい。

「エマさんよ。孤児院いうがは、何や?」

「孤児院というのは、身寄りの無い子供を預かり、育てるところよ。」

「それには、金がおるろう。その金は誰が出いちゅーがじゃい?」

「色々よ。大体は信者からの寄付だと思う。」

「その信者いうがは、誰の信者や?」

「もちろん、女神様よ。」

「そうか、女神さんか。よっぽど子供好きなんやねや?」

「え?どうしてそう思うの?」

「あの子らぁを村に送っちょった時に、夢に出てきた女神さんは、ニコニコしちょったな。」

「龍馬さんは、」
エマは、女神様の使いなのか?と言葉にしようとするのを、思いとどまった。

龍馬は、
「ちっくと、この子と出かけてくる。」
と言って、子供を連れ出かけてしまった。

龍馬は、少女に手を引かれて孤児院に向っていた。どんなところなのか?一度この目で確かめる為だ。

孤児院は、決して立派とは言えない神殿の脇に併設されていた。

少女は、龍馬の手を離すと、神殿脇の建物に走り込んでいった。

少女は、龍馬と同じくらいの女性の手を引いて出てきた。

女性は、龍馬の姿を確認すると、この世界では、珍しい格好の龍馬をまじまじと見た後、神殿の方に走っていってしまった。

しばらくすると、今度は、おばあさんが出てきた。

おばあさんは、いきなり龍馬の手を両手で握ると、「ようこそ、いらっしゃいました御使さま」と頭を下げる。

龍馬は、訳が分からずにボーっとしている。

龍馬は、神殿の中の女神像の前に案内された。

「これは、御使いさま、私は、当神殿の神官を務めさせて頂いておりますトーマスと申します。」

「その、御使いさまというがは、なんや?」

神官は、龍馬が冗談を言っている思い話に、付き合う事にした。

いつの間にか、龍馬の周りには、神殿の関係者が集って、神官と龍馬の会話に耳を傾けている。

「御使いさまと言うのは、女神様がこの世界に遣わされたお方で、女神様より使命を与えられております。」

「そうか、女神さんより使命を与えられた者か? ほんなら、確かにわしゃ、御使いじゃ。」

周りからおお~と歓声が上がる。

龍馬は、それから皆に握手を求められ、あれこれ質問された。

龍馬は、女神から、好きな様にして来いと言われた事や、女神に会った事などを話した。

周りの喧騒がやっと落ち着いた頃、ここには、孤児院の様子を見に来た事を話した。

神官に案内され孤児院に向かう途中、孤児院が信者の寄付で、成り立っていて財政難である事、最近、市場での女神の祝福騒ぎの影響で寄付する者が増えた事などを聞いた。

孤児院の建物は、ボロボロだ、これでは、雨漏りも酷かろうと、龍馬は、思った。

そんな中、子供達は、昼寝の最中で、騒がしくして起こさないようにと、早々に神殿に戻った。

龍馬は、この世界ではどこも似た様な状況である事、そして、その最大の原因が領主間の争いである事を知った。

龍馬が帰ろうと女神像の前を通った時、神官にこの像は、誰かと尋ねた。

「は?これは、女神様の像ですが。」

「これが女神さんだって?ちっとも似ちょらん。女神さんはもっと美人ちや。」

と言い残していて神殿を後にした。

遠くで雷鳴が2度響いていた。
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