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第1章 龍馬と異世界
第4話 エマの使命
しおりを挟む真夜中、エマは中々寝付くことができなかった。
目を閉じると今日見た、奇跡の様な風景を思い出す。
エマは、あの時、確かに女神の祝福を感じた。
エマは、幼い頃、大きな病気に掛かったことあった。
毎日高熱が続き、医者にも見放された。両親は、せめて最後は、女神様の近くでと、深夜にエマを抱えて神殿に連れて行った。
朝まではもたないと思われたが、朝には熱が下がり、一命をとりとめることができた。
あの時、神殿の女神像の前で、エマは、意識が朦朧としている中、暖かい光に包まれている感覚を感じていた。
明け方、熱が下がり眠りに落ちようとした時、澄んだ女性の声が聞こえた。
「エマ、あなたには、いずれ大切な使命を果たして貰います。だから、未だ死なせません。」
あれから、使命について考え続けて来た。だが、その兆候は一向に現れない。
やはりあれは、夢だったのだろうか?
そんなふうに思い始めていた。
だが、今日の出来事で夢じゃなかったと確信した。
「きっと、龍馬さんに関係があるんだわ。」
そして、長年、考え続けてきた使命の謎が解けるかもしれないと思うと、ますます寝付けなくなっていた。
翌日、龍馬は、子供達と朝ごはんを食べていた。
メニューは、パンとスープである。
パンに馴染みが無い龍馬は、
「げにこりゃ不思議な食べ物やねや」
と言ってむしゃと食べている。
エマの父親は、そんな様子をニコニコと見守っていた。
市場での奇跡は、既に町中の噂になっていて、彼の耳にも届いていた。
しかも、エマがあれは女神の祝福だったなんて言ったせいで、彼は、龍馬が女神様の使いだと信じ始めていた。
龍馬が、大勢の子供達を連れて帰って来た時は驚き戸惑ったが、エマに事情を説明されてからは、歓迎ムードになった。
そんな中、龍馬が突然こんなことを言い出した。
「わしゃ、この子らぁを元いた村に送ってくるぜよ。」
何でも、皆同じ村の子供らしいが、そうなって経緯がよくわからないらしい。
子供達の村までは、大人でも2日はかかる。まして、子供の足では、何日かかるかわからない。
「龍馬さん私も一緒に、行きます。」
エマは、思わず叫んでいた。
その日から旅の準備を始めた。
「エマさんよ、わしゃ大勢での旅は、わからんき、頼んだぜよ。」
龍馬は、大勢での旅は経験が無いと言って、準備をエマに丸投げした。
しかし、エマは張り切って準備を始めた。
子供の足では無理があるという事で、馬車を準備する事になった。
しかし、この店も馬車は持っていない。
龍馬は、剣を売った金の余りだと言って、金貨を2枚渡してきた。
その金で馬車と馬を準備する事が出来た。
工程は子供達の負担を考えて、2泊3日という事になった。
いよいよ、明日は、出発という日の夜、寝ているエマの身体が突然、光に包まれた。
エマは、夢うつつの中で、再び、女神の祝福を与えられている事を感じていた。
しかし、これがただの祝福では無い事に気がつくことはなかった。
後に、エマは、これがとんでもない祝福だった事を思い知ることになるのだった。
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