龍馬が【異世界を】ゆく

第1章 龍馬と異世界

第3話 子供達の明日をせんたくいたし申候

龍馬は、ある商品の前で、足を止めた。

そこには、腰ひもにつながれた子供達がいた。

「あれも商品かえ？」
エマに尋ねる。
「ええ、あの子達は、奴隷として売られているわ。」
「そうか、奴隷かえ？」

龍馬は、店主らしい男の前に立つ。

「なんぼや？」
店主は質問の意味が、わからない。

「なんぼや？」
龍馬の言葉には、明らかに怒気が含まれている。それも尋常じゃあない程、強く激しい。

エマが、龍馬の意を察し店主に尋ねる。
「おいくらでしょう？」

「へい、どの子でしょうか？　値段は、まちまちでして。」

「全員や。」
龍馬の怒気がどんどん増していく。

店主は、得体の知れない男に怯えながら答える。

「へい、全部で金貨3枚になります。」

龍馬は、財布を出そうと、懐に手を突っ込むが、金を持っていない事を思い出した。

「しもうた、金が無い。ちっくと、待っちょり。」

龍馬は、慌てて、もと来た道を戻っていった。

エマと店主は、唖然として龍馬の帰りを待った。

しばらくして、龍馬が戻ってきた。
そして、店主に金貨3枚を握らせた。

店主は、売買契約書らしい紙を10枚、龍馬に渡した。

すると龍馬は、受け取った紙をビリビリと小さく破ると、思いっきり空に放り投げた。

天高く放り投げられた、太陽の光の中、キラキラと輝き、まるで花びらの様に風に舞いながら、温かさと共に、市場中に散らばっていく。

その幻想的な様子に、市場中の人々が注目している。

それはまるで、女神が祝福を与えているようであった。

そして、子供達の前にしゃがみ込むと、優しく語りかける。

「もう大丈夫ちや、お家にいのうか。」

そうゆうと、子供達の頭をなで、滞在先に歩き始めた。

眼の前光景に心を奪われていたエマも、我に返り、子供達の後を歩き始めた。

「龍馬さん。あのお金どうしたんですか？」

すると龍馬は、ポンポンと脇腹を叩きながら、大笑いをした。

エマがよく見ると、腰に差してあった剣が無くなっていた。

エマは、立ち止まり、大笑いする龍馬を見つめる。
そして、エマの顔には笑みがこぼれていた。

龍馬と子供達は、夕日の中に溶け込んでいく。

子供達の明日は、明るいものとなった。

そして、これが、龍馬のせんたくの始まりだったことに、この世界の誰も気がついていない。