海と聖女とサムライと

clown

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第4章 王都へ

第56話 ヤタとロウ

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(サキ、オオカミさんは、名前じゃないんだよ。うーんとお姉さんが考えるね。)

(そうだ、ロウとかどう?)

『うん。ロウがいい。』

ロウの尻尾がブンブンと触れている。ロウも気に入ったようだ。

【うふふ、あはは。ヤタにロウか?そりゃ良い名前だ。あはは。】

ムサシは、何かがツボにはまった様で、腹を抱えて笑っている。


いつの間にか、霧も晴れていた。

私達は、改めて大鹿を確認する。

大きさは、馬程もあり、2本の立派な角を持っており、角は鋭利に尖っていた。

角の先にムサシの血がついている。

私が複雑な気持ちで、角に着いた血を見つめていると、ムサシが刀で大鹿の解体を始めた。

「ムサシ、どうするの?」

【決まってるさ。解体して持ち帰る。コイツには、賞金が掛かっているからな!】

【コイツで、サマルカンドの散財を取り戻すぞ!】

私達は、何も言えなかった。

跳ね飛ばされた馬の手当てをして、出発の準備をした。

ムサシは、解体した大鹿をしっかりと血抜きして馬車に積み込んでいる。

【ふふふ、晩飯が楽しみだ。】

「ちょっと、ムサシ、大鹿の頭をこっちに向けないで、と言うか布でも描けて、見えない様にして!」

サキはロウに乗って行くつもりの様だ。

マリーナが、馬の手綱をロウの首輪に付けて、乗りやすくしている。

いざ出発となったが、大鹿のせいで馬車が重すぎたので、ムサシはサキが乗っていた馬での移動となった。

山道も終わり、平坦な道になった所で夕方となり、ここで野宿する事にした。

ムサシが上機嫌で料理をしている。

【鹿肉なんて久しぶりだ。今夜はご馳走だぞ。】

「ムサシ。言っとくけど、怪我が完治してないから晩酌は駄目よ。」

【おほん。分かってるって。サキほら生肉だ。ヤタとロウに食わせてやれ。うふふ。】

その夜は、焼いた鹿肉と鹿肉のスープだった。

鹿肉がこんなに美味しいとは知らなかった。

もちろん、私とマリーナだけは、晩酌を楽しんだ。

【マリア、王都まで後どのくらいだ?】

「そうね。やっと半分くらい来たかな?」

【次のアルトマイって、どんな街何だ?】

「私は行った事が無いからよく知らないわ。」

(私、アルトマイに行った事があります。)

(交易都市 アルトマイ その名の通り交易で栄える商人の街です。)

(そして、見どころは、各地から集まる様々な商品です。後は、大きな港ですね。大小色々な船に埋め尽くされた港は圧巻です。)

【ほう、港か、面白そうだ。うん、美味い。】

「ムサシ、何、お酒飲んでるの?それ私の酒。」

その後、旅は順調に進み、無事にアルトマイに着く事が出来た。

街の入口で、衛兵にロウが魔物じゃないかと揉めたが、ムサシがAランクの冒険者カードを見せながら、これは、犬だと言って押し通した。
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