海と聖女とサムライと

第4章 王都へ

第45話 墓参り

ムサシと出逢う少し前にも、流星群を見た。

流星群と、ムサシの出現、いや転移が関係している。

【実はなあ、俺がこの世界に来る前に、流星群を見たんだ。】

そしてムサシは、膝の上でウトウトしているサキの頭を撫でながら言った。

【それに、こいつの船が現れる前にも、流星群が見られたらしい。】

【流星群の目撃は、他にもあるんだ。】

ムサシの話しでは、ガイコツ島のスケルトン騒ぎの前にも目撃されていたと言う。

【うーん、流星群が現れる時、異世界、俺の居た世界から何かが、やってくるのか？】

【ただ、厄介なのが、やってくるのが、俺の世界では、神話で登場する奴等って事だ。】

【八咫烏、わに、みんな俺の世界の神話の化け物だ。】

【確か。マリアの両親は、酒樽を運んで居たんだったな。そして、酒樽の中身は、消えていた。】

【大酒飲みの神話の化け物か？】

ムサシは、それっきり黙り込んでしまった。

翌日、出発の準備をしていると、ムサシが両親が襲われた場所を見たいと言い出した。

「いいわ、ちょうど、シュセンに行く途中だから、私も寄ろうと思ってたの。」

【それにしても、随分昔の事なのに、良く場所を覚えているな。】

「両親のお墓を作ったの、あの場所に。」

【そうか。】

その日、私達はシュセンへの途中で立ち止まる。

私は、街道脇の木の根元に、小石が積まれた場所の前で跪き祈った。

「ここよ。」

ムサシ達も同じ様に祈った。

ここは、街道の直ぐ隣が海に面している。

【ここは、海が近いな。】

「そうね。酒樽は浜辺に散乱してたそうよ。」

ムサシは、浜辺に立ち海を見つめている。

【ちょっと、早いが今日はここで野宿としよう。マリア、良いか？】

「いいけど、何かあるの？」

ムサシは、何も、答えてくれなかった。

その日、ムサシは珍しく魚捕りには行かなかった。

私の生い立ちを思ってか？皆寡黙だった。

いつもの様に、焚き火を囲み夕食を取った後で、それまで黙り込んで居たムサシが口を開いた。

【マリアの両親を、襲った化け物だが、思い当たる。】

【おそらくヤマタノオロチだ。】

【そいつは、頭が八つ、尾が八つあると言われている巨大なヘビの化け物だ。】

【大昔、すさのおのみことと言う神様が、ヤマタノオロチを酒に酔わせて退治したと、伝えられている。】

【おそらく、そいつがこの海から現れて、マリアの両親を襲ったんだろう。】

【ヤマタノオロチは、今でもこの海の何処かにいる。】