海と聖女とサムライと

第3章 賢者

閑話 勇者と卵

ガイコツ島の討伐から戻った私達は、再び、普通の生活に戻っていた。

ただし、サキだけは違う。

サキは、ガイコツ島から持ち帰った卵を温め続けている。

ただ、じっとしているのは、苦手なようで、何処に行くにも卵を抱えて持ち歩く。

落として割れでもしたら大変だと、言っても聞いてくれない。

仕方が無いので、肩掛けの卵入れを作って持たせてやった。

今日も朝起きると、卵を持ってムサシの所に出かけていった。

最近は、冒険者ギルドの仕事にも飽きて、ギルドの訓練場でマリーナやムサシと模擬戦をやったり、船で、釣りに言ってるらしい。

そりゃ、毎日毎日、ギルドで高ランクの依頼をこなしていれば、低ランクの依頼しか残らないでしょうよ。

今日は釣りに行ってきたらしく、夕飯に魚が出てきた。

卵を持って釣りに行くなよ。

そんなある日、サキが卵から音がすると言ってきた。

卵に耳を付けてみると、確かにコツコツと音がする。

次第に音が早くなり、卵にヒビが入った。

パカッと卵の一部が欠けると、その隙間から黒いくちばしが見える。

くちばしは、隙間をつつき卵を内側から崩していく。

やがて、卵が割れ中から真っ黒な鳥が姿を現した。

その姿は、まさにムサシが倒した八咫烏だった。

八咫烏は、辺りを見廻すと卵を抱えているサキの肩に飛び乗り゙、カァーと鳴いた。

それから、八咫烏は、私達と一緒に生活する事になった。

サキが名前を付けたいと、言うので皆で名前を考えた結果、ムサシが八咫烏だから、ヤタでいいんじゃないかと言ったらその名前になってしまった。

私もマリーナも、鳥に名前とか付けた事はなく、何も思い浮かばなかった。

ヤタは、サキによく懐いていて、いつもサキの肩に乗っている。

ある日、サキがいつものようにムサシの肩に乗っている時にも、サキの肩に乗っていて、思わず笑ってしまった。

ムサシには、そこでフンをするなよと言われていた。