海と聖女とサムライと

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第3章 賢者

第38話 八咫烏(やたがらす)

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ムサシは、扉の水晶に手を当て光魔法を放つ。

水晶が割れ扉が開いた。

「あ~あ。やっぱり本物だわ。」

私は、ムサシが扉を開いた事実を目にして思わず呟いていた。

扉の先は、上から光が降り注ぎ明るく、真上を見上げると、遠くに青空が見えた。

部屋の壁には、上へと続く螺旋階段がある。

階段の幅は狭く、大人がやっと通れるくらいの幅で手すりは無く、ずっと上の方まで続いていた。

ムサシの指示で、サキ、ムサシ、私、マリーナの順で階段を登る事になった。

もちろん、サキの腰には突撃防止の紐がついている。

私達は、ゆっくりと階段を登る。

高い所が苦手な私は、ムサシの背中だけを見るようにして登った。

どれくらい登っただろう?

ムサシが立ち止まる。

【何かいる。気を付けろ!】

ムサシは、そう言うと、サキを後ろに下がらせて、戦闘態勢をとる。

辺りに神経を集中させると、バッサバッサと音がする。

突然、ムサシが階段を一気に登り始める。

私は、サキが後に続いて行こうとするのを止める。

上の方では、ムサシが戦っているのか?カキンと音がする。

やがて、音が止み、ムサシの声が聞こえてきた。

【終わったよ。もう大丈夫だ。】

ゆっくりと階段を登り切ると、そこは、ただの広場となっている。

広場には、一羽の巨大な黒い鳥が倒れている。

黒い鳥に近づいて良く見てみると、何と足が3本もあった。

【こりゃ、八咫烏だな。しかし、何でこの世界にいるんだ?】

「八咫烏?」

【ああ、八咫烏ってのは、俺の世界の神話に出てくる神鳥さ。】

すると突然、八咫烏が眩しく輝きだした。

余りの眩しさに、思わず目を背けていると、徐々に光が収まってきた。

そして、八咫烏が倒れていた後には、人の顔くらいの真っ黒な卵が残されている。

皆、呆然としていると、サキが卵に駆け寄って抱きかかえていた。

【こらサキ、どうする気だ?】

『もちろん育てる。』

サキは、ニンマリしながら、卵を撫でている。

こうなると、もう誰もサキを止める事はできなかった。

広場の周りは、断崖となっていてここからは、下に降りれそうにない。

私達は、螺旋階段を降りた。

一番下にまで、降りたは良いが、ここからあの崖を降りるのかと思うと、憂鬱だった。

ムサシは、扉の前に立つと目を閉じて何かをしている。

【風が通っている】

やがて、スケルトン達が居た広場に行き、壁に手を当てた。

すると、ムサシの手は、壁を通り抜けるた。

ムサシは、そのまま壁の中に姿を消した。

私が、ムサシと叫ぼうとすると、卵を抱えたサキがその壁に飛び込んでいった。

私は、慌てて壁に近寄ると、ムサシの顔がニョキっと現れた。

【心配ない。ここから出れるぞ!】

ムサシの後を追って、恐る恐る壁に手を当てると、何の抵抗もなく壁に埋もれてしまった。

そのまま、壁に飛び込むと、そこは、岩山の外側に出ていた。

しかも、最初に岩山を登った場所のすぐ横だった。

私は、腕を組み無意識にムサシを睨みつけていた。
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