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第1章 勇者を探して
第4話 実力の片鱗
しおりを挟むいつの間に寝てしまったのだろう。
あたりはすっかり明るくなり、小鳥のさえずりが聴こえてくる。
小鳥のさえずりに混じって、時折、イビキが聴こえてくる。
既に火が消えてしまった、焚き火の向こう側には、男が大の字になって、気持ち良さそうに寝ていた。
私はスッと起き上がると、杖で男の腹に突きを入れた。
男は、咳き込みながら、身体を起こした。
【おお、お嬢さんおはよう】
「おはようじゃありません。夜番は、どうしたんですか?」
「まさか、貴方まで食事の後にすぐ寝てしまったのではないでしょうね。」
私は、杖で地面を叩いた。
【ああ、昨日食べた野草に、睡眠作用が有ったようだ。】
【それに、眠っていても、危険が迫れば、直ぐに気が付くから、大丈夫さ。】
「そんな寝言を言ってないで、出発の準備をお願いします。」
馬車1台が通れるくらいの街道を進む。
すれ違うのは、日に10人くらい。
男は相変わらず、無口なまま、左手に手綱を持ち、右手で木の棒を肩に担ぎながら、黙々と歩く。
そうして、日も落ち始め、川辺で野宿の準備を始めた。
今日は、香草のスープは無い。
ちょっとは凝りたようだ。
夜番は2交代とし、途中で起こすように頼み、先に毛布を被った。
ただし、今回は結界魔法をかけた。もちろん、自分だけだけど。
これで、魔物が襲って来ても、しばらくは耐えられるし、その間に目覚める事が出来る。
ふと目覚めると、すっかり朝になっていた。隣には男が大の字で寝ている。
「またかあ」
前の時と同じ様に、腹に突を入れようと杖を手に立ち上がると、異様な光景がめにはいってきた。
何と、私達の周りに10匹程のオオカミが倒れている。
血が流れて居ないところから、未だ生きている。
直に男を起こして、事情を聞いたが、よく覚えて居ないという。
ただ、これまでも、同じ様な事が、何度か有ったと言う。
【無意識に反応したんだろう。だから、大丈夫って言ったんだ。】
もう、この男について、細かい事を考えるのは、止めよう。
全然、細かい事じゃないけど。
きっと、常識では計れない奴なんだと思うと、なんか納得できた。
「そんなに強いのに、何故、木の棒なんです?」
【何か言ったか?】
「何故、剣を持たないのか聞いたんです。」
男は木の棒を上に掲げると、木の棒を見つめながら、言った。
すると、男はニヤっとすると、両手で棒を摑むと腕を開いた。
すると、棒は2つに別れ、そこには方刃の剣が現れた。
【これは、刀という剣だ。兵士達が使っていたのは、幅が広く、その両方に刃がある。】
【だがこれは、幅が狹く片側しか刃がない。これは、斬馬刀と言う刀さ。】
そう言うと、刀を鞘に戻す。
丁度、その時、草むらから、2メートル程の毒ヘビが男に襲い掛かった。
シュンと言う音がしたかと思うと
毒ヘビは真っ二つになった。
刀は、鞘に収まったままだ。
【これは、居合い抜きと言う技だ。刀を抜いたのが見えたかい?】
【おっと、話し過ぎた。とっとと出発しようぜ】
呆然とする私を於いて、男は、進む。
左手に手綱を引き、右手で刀を担いで。
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